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誤字脱字、直しつつ始めて行きます。
どうか、お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
蒼龍の守護地 帝国境界付近
策破れたとエリオットは判断した。ドラゴンのリセット中に侵攻する策は、アキラが阻んだ。アキラ一人が一個師団なみの戦力となり得ると判断したのだ。
力押しは可能だ。
だが、精霊の様子が守護地に入ってからはおかしい。呼びかけに応えないのだ。長引く現象ではないとは考えている。ただし、巫女姫たちが、そうではないとすると、魔術なしで、一個師団相当の剣士と、それを助ける魔術師二人と戦う羽目になる。
ここは退き、財団と地道に交渉するしかないと、エリオットは判断した。
「お前って、ほんと、思いつきで動くよな。全然学生の時から変わってないな」
「うるさいな、前から考えてはいたんだ」
エリオットは言葉にしなかったが、キムボールやミュールと出会う以前のことに、思いをはせる。そう、幼きとき、シルと王家との盟約の内容を知ったときから。
僅かの間、エリオットとキムボールは、学生時代に戻ったかのように会話を交わし、己が国へと兵を連れて引き上げていった。カロニア伯爵は王命から逸脱したとして、半ば罪人のような扱いで、周囲に兵で固められて連れて行かれた。
エリオットは何も言葉を残さなかったが、キムボールはアキラに、後日、詫びに訪れると、キャリアーのある鳥居もどきで会おうと告げた。
残されたのはアキラとリーネ、それとツキ。そして三人が見守るブルー。
大きかったブルーの姿は、人と同じ程度まで縮んでいた。
「リセットという現象です」
ツキが今のブルーの状態を語る。そして、そのリセットの期間がどれほど続くのか、分からないと。
「それじゃ、その期間、誰が守護地を守るんだ」
「精霊が受け持つのですが、非常に危ういですね」
ただ、リセットの間、精霊達は守護地の中で魔術を発動させないので、簡単に人は入れないはずだとツキは告げる。
「あっ、変わるね」
ブルーの姿が、画像が乱れたかのように、ノイズが走る。
次の瞬間、ブルーの姿が消え、一頭の犬がいた。
「ラブラドール・レトリバー?」
アキラの言葉に、ツキが首をひねる。なんだそれはと。
しかし、そんなことは気にもせず、リーネが変化した犬の首筋に飛びつき、抱きついた。
「わんわんだー!」
それを見ていたアキラが、犬の顔をのぞき込む。
「賢いはずのレトリバーにしては、馬鹿ぽいな」
「誰が馬鹿だ。噛むぞ」
すでに、自分が犬だと認めているようだ。
「犬が喋った」
驚いたアキラが、一歩後ずさる。それを抱き留めたツキが笑う。
「これが、今回のリセット期間中の姿ですか」
「犬だな、今回は」
どうやら、期間中はドラゴンから他の姿に変化するのだそうだ。ため込んだ不要や無駄なものによって、その姿は決められるのだと。
自分の姿を確かめていたブルー。
「まぁ、期間は分からんが、しばらくはこの姿で頼む」
人に変化するなど、ほとんどの力は失われているが、ドラゴンの特性は受け継いでいるので、不死であり、体が欠損しても元に戻るから心配するなとのことだ。
ふと思い出したように、ツキがアキラにたずねる。
「刀の銘は聞きましたか」
「レインと言っていた」
それを聞いて、ツキが少し考え込む。
しかし、それも僅かの間。
「好きにさせましょう。仲良くしてあげてください」
頷きつつ、アキラは柄に手をかける。レインからの反応はない。ツキにそれを告げると、まだ生まれたばかり、厳密にいうと違うが、意思を持って間もないので、しばらく休ませた方が良いと返してきた。
「さて、そろそろ家に帰るか」
ブルーの言葉に、そうだなとアキラはうなずくが、ここへ来るのは一瞬だったが、ドラゴンの力がない今、どのくらいかかるのかをたずねた。
「10日もあれば大丈夫でしょう」
そのツキの答えに唖然とするアキラ。
そう言えばと、思い出したように拾い上げ、抱いていた水晶を見る。これを抱えて、10日も野宿しながら歩くのかと。
「でも、本当にこれってなんだ?」
ログハウスに戻るまでの10日間。その間に答えがでればいいなと、アキラは空を仰いだ。
第1章は、この投稿をもちまして終わりです。
オープニングであり、世界観を知っていただくための章でした。
とは言いましても、どれだけお伝えできたか。
力量不足を痛感いたします。
次回、第2章を開始いたします。
本日の夕方ないしは夜に投稿いたします。