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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
Fly Me To The Moon
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それから……

Appendixを一編だけ投稿いたします。

では、

よろしくお願いいたします。

 エーテルを斬り裂いて進む頂天号トップ・オブ・ザ・ワールド

 先ほどまでは、ニアの星を回る軌道を飛んでいたのだが、今はそれを脱している。

 操縦室にはいつものメンバー。

 最前列中央には機長であり主操縦士のアキラが座り、左手には砲術士兼魔術師であるリーネ。右手には副操縦士であるレイン。

 アキラの後方には航法と観測を担当するツキがいて、さらにその後方には大きなガラスのシリンダーの脇に座る、猫の姿をしたクオーツが背中から触手を伸ばして座っていた。触手はエーテル炉に繋がっており、クオーツは機関を担当している。

 そして、未だに犬の姿であるブルーがリーネの側の床に寝そべり、アキラの両脇には、ブルーと同程度の大きさになっている精霊馬であるスプライトとスピリットが時折蹄を床に打ち付けて立っていた。

 星の周回軌道を離れたばかりとあって、皆は手を休めており、ツキは茶でも入れるのか、席を立とうとしている。

「こちらPHI(ペノンズ重工業)。通信、聞こえるか?」

 伝声管から声が発せられる。

「聞こえる。感度は良好だ。社長自らとは光栄だな。エーテル波通信はなかなかいい」

 メインもサブも順調だとリーネが付け加えた。

「そうか、そりゃ良かったわい」

 頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドとホームタウンの間では、今は念話は利用されていない。ペノンズとディアナが開発したエーテル波通信が取り付けられたためである。エーテル波を利用しているために、時間の遅れはなく、星間通信の常である間延びした感じがない。

 今回、宇宙空間と地上との間での初めての使用になるが、全く問題なさそうであり、ペノンズは帝国を筆頭に共和国や財団(ファウンデーション)、協同国、王国の各国に設置する事をアキラに提案していた。

「大精霊の念話に頼ることもなくなるから、いいんじゃないか」

 だが続けてアキラは、開発元の社長が判断すれば良いと。

「ばかを言うな。わしゃ雇われておるだけじゃし、お前さんが表に出るのは不味いと言うから名前を貸しているだけじゃ」

 ペノンズが言う通り、PHI(ペノンズ重工業)はホームタウンに建設した研究室が元になっており、正式な組織とする際に、資金を準備したのがブルーであったために、本来はアキラかブルーが社主となるべきであったが、それはあまりよろしくないと判断したアキラとブルーが、ペノンズに押しつけた経緯があった。

 ブルーは犬の態をしていてもドラゴンであり、アキラは何かと各国から監視されている存在であった。

 ちなみにディアナはPHI(ペノンズ重工業)付属研究所の所長を拝命しており、満面を笑みを浮かべて研究開発に励んでいる。

「それはもう良いから。後は頼んだ」

 それで通信を打ち切ったアキラに、ツキがハーブティーを注いだカップを差し出す。こういう場合、重力が制御されている操縦室は楽である。

 レインが操縦をしている為、アキラにはする事はない。

 ぼんやりと前方の映像を見ている。そこに写るのはダークであった。速度を上げているために、勢いよく大きさを増している。

 全ての竜兵(ドラゴンウォーリア)が目覚め、揃ったと連絡があったために向かっているのだ。ちなみに、ダークの次にはシルバーへと向かう予定であり、ツキは隠しているようだが、そわそわした浮ついた気持ちは隠しきれていない。


 ダークに設けられた、本来の港に頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドを入れ、アキラ達は地中の広場へと案内された。先導するのは保守竜(メンテドラゴン)である。

 広場へと通じる扉が開かれる。

 その先には一万体の竜兵(ドラゴンウォーリア)が整列をしていた。

 これほどの数が入る空間が用意されているのかと、アキラは驚いているが、ダークを司る姫として、リーネはどこか自慢げだ。

 一際高い演壇に上げられ、中央に設けられた席にアキラは座らされた。

 一万もの竜兵(ドラゴンウォーリア)に注視されて、どうにも落ち着かないアキラだが、側にいるツキやブルー、そしてレインとクオーツなどは落ち着いたものだ。

 そして、何故かリーネは演壇に上がらず、一万体の竜兵(ドラゴンウォーリア)の前に立ち、アキラを見上げていた。

 竜兵(ドラゴンウォーリア)は全てがドラゴンに種別される存在であり、ドラゴンでも人の形でもとれる。ただ、そのドラゴンの形態の際に大小が存在しているのだ。

 大はブルー達を上回る大きさであり、小は人に近い大きさであった。そして、人型となった際には男女の別があって、それは半々に見て取れる。

 竜兵(ドラゴンウォーリア)は全て同じ服装をしており、腰には刀、手には馬上槍を思わせるほどの巨大な槍を持っている。

 リーネの脇には、真っ先に目を覚ました竜兵(ドラゴンウォーリア)が立っていた。それはまさしくリーネを補佐するかのような位置であった。

「我ら準備が整いました、いつでもご采配願います」

 その言葉とともに、リーネの巨大な、黒い獣の翼が音を立てて広げられる。

 そして、リーネの補佐たる竜兵(ドラゴンウォーリア)が応と声を上げ、手にしていた槍の石突を床に打ち付け、硬質な音を鳴らす。

 それに続く。

「応!」

 一万体もの竜兵(ドラゴンウォーリア)が同時に声を上げて、床を打つ。

 広場ばかりか、ダークそのものを揺るがすかの音響。

 アキラへの忠誠の証であった。

 息を飲むアキラ。

 自分がいかに巨大な戦力を手にしたかを実感している。

 恐らく、一万という兵であっても、ニアの星を全て手に入れることすら出来るかも知れない。

 いや、そこまで行かなくとも、蒼龍の守護地スカイドラゴンフィールド周辺の国をまとめ上げることくらいは出来るであろう。

 だが、アキラは思い出す。

 異世界で商社に務め、紛争を行っていた国、場所あるいはその近くで仕事をしていた時を。

 権力欲をむき出しにした為政者、政治家。甘い汁を吸おうとする官僚達や公務員。

 平和な国から危険地帯にやって来て仕事をするとは、そういう者達の側での事が多いのだ。アキラとて直接の商いをした場合も多かった。

「さて、どうする?」

 ブルーがにやにやと笑ってアキラに問いかける。

 笑ったアキラが答えた。

「姉妹達に相談するさ」

 リーネとツキが先だけどと。

本当に、

これで最後です。

ではまたいつか。

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