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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第11章 We Are The Champions
216/219

11-13

引き続き、

第11章を投稿いたします。

最終章です。

どうか、よろしくお願いいたします。

蒼龍の守護地スカイドラゴンフィールド ホームタウン

 一機の円盤の上に姿を現したリータは、落下して自分の立つその外殻には放出系の魔術は効きにくいと見て取ると、すぐさま全身を強化して、さらには拳の威力を上げるために炎を纏わせる。

『来たぜ!ノーミー!』

『やっちゃえ!リータ!』

 そのノーミーの言葉に、応とばかりに歯を剥き出しにした獰猛な笑みを浮かべて、拳を振り下ろす。

 足底をしっかりと外殻に固定して安定させた下半身に、腰の回転を肩からの振り出しへと正確に乗せて、炎を纏った拳を円盤の外殻へと叩きつけた。

 鈍い音を立てたものの、外殻を拳は貫けない。しかし、叩きつけられた衝撃は逃げ場も無く外殻へと伝えられ、円盤そのものを沈み込ませるには十分であった。

 次とばかりに、リータが跳ぶ。その跳ぶための踏み込みですら、円盤に衝撃を与えて、更に沈み込む中を、リータの身体が宙を舞った。

 拳と踏み込みの衝撃が内部に伝わったのか、高度を落とした円盤は動かない。

 炎の如き翼が、宙に火炎の軌跡を描き、リータは次の円盤の上に降り立つ。その衝撃で円盤は揺らめくが、先に拳を受けて、宙に浮いてはいるものの、動かなくなった円盤を見ているため、乗り移ってきたリータを振り落とそうと、激しく機体を上下に振り始めた。

「ふふん、そんなもんじゃ、振り落とされないぜ!」

 激しく揺動する円盤の上にあって、リータは外殻の上に張り出していた設備を掴み、一瞬だけ宙に炎の足場を作って踏ん張ると、力任せに円盤を放り投げた。

 投げた先には一機の円盤があり、双方が激しくぶつかり合う。

「あちゃー、あれでも壊れねえのか」

 どこか、その頑丈さ加減に呆れたような声をリータは上げた。

 浮遊の魔術でリータは宙にあり、その脇へとノーミーとスノウが乗るF-3改がやってくる。

『どうするあれ?無茶苦茶硬いよ!』

『だよなー、多分衝撃対策もしてるだろうな』

 事実、拳で殴りつけた円盤と投げつけた円盤は、すでに動きを回復している。更には、ノーミー達がたたき落とした三機でさえも、おおよその自己修復を終えたのか再び高度を上げ始めていた。

『あれに傷つけたのか?』

『それくらいは何とかね』

 リータの感心した声に、自慢げにノーミーが応える。

 六機に戻った円盤と、F-3改と生身で宙に浮かぶリータが対峙する。

 一機の円盤が前へと進み出る。

『なんかやばげ』

『魔力の高まりが観測出来ます。でも、あれ魔術でも魔力の放射でもないような……』

 ノーミーが顔をしかめて呟くのに、スノウが冷静に観測結果を伝える。

『それじゃ、何だってんだ?』

F-3改の風防の脇に寄ってきたリータが、中を覗き込んで尋ねる。

 スノウが目を閉じて集中して、進み出た円盤で起こっていることを感じ取ろうとしていた。ノーミーは、今にも攻撃を開始しそうな円盤を警戒している。

 そして、スノウが自分の考え、意見であると前置きして話し始める。

『魔力を、何か別のものに変化させている?』

『いわゆる、加工っていうのか』

『恐らくは』

 スノウの言葉を、すぐさま理解したリータに、スノウは自信がなさげに頷く。

『考えるのもさーいいけど、来るよ』

 そのノーミーの言葉と同時に、前に進み出た円盤から、魔術でもなく、魔力の噴出でもない稲妻が放射された。

 見た目通り、稲妻の性質を持つのか、不規則な軌跡を描いてのたうち回るように、周囲を打ち据える。

 すぐさま別れて回避に移るF-3改とリータだが、その不規則性により、F-3改に張られたノーミーのシールドに触れる事となった。

「前と一緒だ!」

 以前と同じように、ノーミーの張ったシールドが溶ける。前に受けた時には夢中であったが、今度はまだ考える余地があった。

 触れたが最後、再び機体を破壊されるのは目に見えているので、懸命にノーミーは回避を行う。後席のスノウが、回避のために離れたリータに呼びかけた。

『あの稲妻は危険です。絶対に触れては駄目です!』

『みたいだな!』

 そう言ったリータはひらりとばかりにのたうち回る稲妻から逃れた。


円盤内部 司令室

 広い司令室の中央に立つペレグリンが声を発する。

「炉を警戒しろ。振動雷撃線の使用は負荷がかかりすぎる」

「しかし、現在有効な攻撃は振動雷撃線だけだ」

 ペレグリンの言葉に、周囲に巡らせた管制卓についていた者が反論をする。

「……あの流線型がいないのが気になる。炉に負荷をかけて、その時に使えぬとなると、また撤退することになるぞ」

 前の戦いに屈辱を感じていたのか、ペレグリンの言葉にそれを思い出したのか、口をつぐむ管制卓の者。

「カトンボのシールドは消失した。張り直される前に通常の光線で片付けろ。飛び回る大精霊も同じだ。あれほど動き回っていては、シールドの強度も知れている」

 ペレグリンの言葉と同時に、他の五機が光線の発射を始める。

 乱舞する光線を避け続けるF-3改とリータ。

「やつは絶対に来る」

 その呟きが、アレースの精霊達に不幸を呼んだかのよう。

 大気圏上層、夜の側。

 ペレグリン、円盤に乗るアレースの精霊、ニアの星の住人達から破壊者と呼ばれる者達からは見る事も感じることも出来ない、ここから星自体が壁となって見えない空間。

 その空間で、虹の軌跡、精霊達が乱舞していた。

 早く、早くと。早く来てと。

私たちの弟よ、兄よ。

 そして、その空間を一筋の光りが貫き、その瞬間に虹が覆い被さるように纏わり付いて混じり合う。

 光りは、頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドであった。


蒼龍の守護地スカイドラゴンフィールド ホームタウン上空

 稲妻ばかりか、光線まで発射され始めて、F-3改とリータは懸命に回避しており、円盤を攻撃する余地すらなかった。大精霊とて、魔術を発動するのに、一瞬ではあるが集中が必要なのだから。

『あーもう!一気に攻撃してやろうか!』

『駄目です!リータの全力だと、地表まで破壊する恐れが』

 まさかとは思うが、癇癪を起こしたリータが魔術をまき散らした場合、とんでもない被害が地表に及び、なのに円盤は無事だという悪夢しか見えないスノウが、懸命に止める。

 逆に円盤にとっての悪夢は、F-3改の機動とその予測、さらには、リータは人と同じ大きさであり、その機動と予測と相まって、照準に捉える事すらできず、結果として、やみくもに光線を撃ち放つことになっていた。


 森の中に集積されていた木材を利用して、即席の防壁を作り上げ、技術者達をその中に入れ終えたローダンが、木々の隙間から空を見上げる。

 先ほどまでは、地表へと落ちてきた円盤に攻撃を仕掛けていたローダンだが、今はシールドを張ることを専念している。

 守勢になって、回避をしているリータとF-3改。

 逆に、攻勢の円盤達。嵩に懸かって攻撃を行っているようだが、一向に命中を与えていない。

 つまるところ、双方手詰まりなのだ。

 ではと、ローダンは考える。

 自分が参戦すればと。

 しかし、古い大精霊であるリータやノーミーが手こずっている敵である。若輩の自分に何が出来るかと自問する。先の魔術の攻撃でも、円盤に被害を与える事が出来なかったのだ。

 何か、出来る事はと唇を噛むローダンは、円盤が作ったであろう結界の外に煌めきを見た。

 姿を現した瞬間、それはぶれて見えたが、すぐさまはっきりとした姿になる。何者の転移かと、一瞬考えたローダンだが、それは間違いだとすぐに悟った。

 あまりの速度に、その姿が認識出来ず、いきなり視界に入ったために突然姿が現れたかのように見えただけだ。

 それは正しく推力を遣って空を飛んでいた。

「アキラが戻った……」

 その煌めきは、精霊を纏った頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの姿であった。


J○?もどき:「若いよねー。うらやま」

会頭:「(いらっ!)」

見かけだけなら、

獣人国のあの方が一番……。


次回、本日の一時間程度の後に投稿いたします。

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