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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第11章 We Are The Champions
213/219

11-10

引き続き、

第11章を投稿いたします。

最終章です。

どうか、よろしくお願いいたします。

 ホームタウンでは、スノウ達同様に異変に気づいたノーミーが全員を集めようと声を上げていた。

「何かやばげな?」

 そう言いながらも、ミュールに声をかけ、技術者達にすぐに集まるように指示を出す。そんな最中にローダンが転移してきた。

「攻撃の前兆だ」

「ていうかさー、しますっていう合図かもね?」

 ノーミーの言葉に頷くローダン。

 確かに、明らかに今から攻撃を仕掛ける、そのために増援を呼ばせないように、念話や外部への転移を封じる結界が張られてしまった。

 そして、それは瞬く間に姿を現す。

 六機の円盤。

 その外観を見たノーミーが首を捻る。

 魔王や共和国の艦隊を攻撃した時と、外観が変わっているのだ。いや、ノーミーは違うと思う。表面を覆っていた魔術がなくなり、船殻というべきものがむき出しになっているのだ。

 恐らくは、攻撃へと魔力を集中させるためだとノーミーは判断した。

「皆を森へ」

 そのノーミーの言葉に、ローダンは頷き、集まった技術者達をシールドで覆って、森へと誘導を始める。

「ミュール、私はシールドに専念するから、皆の誘導を頼む」

「誰が攻撃を?」

「……恐らく、破壊者だ」

 その言葉に、ミュールは顔を青ざめる。

 それは噂話の類いでしかない。

 リーネと同じく、黒い獣の翼を持つ存在。過去に世界を幾度と蹂躙した。それは星の精霊が遣わす試練ともささやかれていた。

 黒を忌み色にした張本人。

「我々は試されるのですか?」

「ならば、我々が人や獣人を守るための関与はしないよ」

 詳しいことは、いつか説明してあげるから、今は皆を安全に逃がす方が先だとローダンはミュールに話す。

 すでに、ミュールはローダンがただの商人ではなく、経済の大精霊であると知っている。知った時はショックであった。商いで適うはずがないではないかと。

 だがそんなわだかまり、自分に課した仕事として、都市を協力して計画するうちに消えていく。

 ローダンはただ欲のために商いをしているのではないと。

 人や獣人のために、経済を知らしめようとしているのだと。それを感じたのだ。

 ならば、ローダンの言葉は信じられる。

「森に、材木の集積場があります。そこであれば防備柵も作れましょう」

「うん、そこまで皆で逃げよう。戦いはノーミーに任せれば大丈夫だ」

 帝国との戦いで、その脅威をまざまざと見せつけたというノーミー。

 ローダンが言うように、大丈夫だと信じようと、心に決めたミュールは技術者達を叱咤しつつ駆けるのだった。


 空を見上げるノーミーの元に、自らに身体能力向上の魔術をかけたスノウが駆け付けた。

 ノーミーの隣に立ち、同じようにスノウは空を見上げた。

 降下してくるもの、六機。

「お兄ちゃんと約束したんだ」

 ノーミーの視線は空から降りてくるものへと向けられたまま。

「ここを守るって」

 そのノーミーの言葉に、大きく頷くスノウ。

「守りましょう、ホームタウンを」

 そのスノウの言葉に、一体と一人は駆け出す。

 F-3改へと。

 たどり着いた機体の下では、ディアナとペノンズが待ち構えていた。

 まだ避難していなかったのかと、スノウはミュール達と合流するように伝えようとしたが、それをペノンズが手で制する。

「逃げるのは、説明してからじゃ」

 そう言われて、仕方なくスノウは口をつぐむ。

 その様子に、満足げに笑ったペノンズが説明を始めた。

「火器の増設は間に合わんかった」

 頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドに搭載されている副砲を参考とし、魔王艦隊で使用された対航空火器の事を聞き及んだディアナとペノンズはF-3に同様の機銃を搭載しようとしていたのだが、それだけの時間がなかった。

「そうじゃから、攻撃は魔術に頼ってもらわんとな」

 ペノンズは申し訳なさげだ。

「でもね、ノーミーが魔力を機体に供給したという話しを聞いていたから、逆も出来るようにしておいたわ」

 それは、大型のエーテル炉を搭載する空母DH183と同じことが出来るということ。

 攻撃を受けて魔力が剥がれたとしても、F-3から魔力が供給されて元通りになるのだ。もちろん、時間は必要であるが、これで思い切った事が出来るとスノウは喜ぶ。

「ただのう、この機体に搭載されているエーテル炉は小型じゃて。その点は気をつけてほしいのじゃ」

「分かってます。ただ、砂漠での戦いでは往復に魔力が必要でしたが、ここは大丈夫」

 飛び上がれば、すぐに戦いとなる。往復の魔力が必要ない分、戦いに使える魔力は多くなるのだ。

 説明は終わったと、ディアナとペノンズは機体から離れる。

 二人に手を振り、地を軽く蹴って操縦席へと向かう。二対の薄い緑の羽根が揺らめきシートへと身体を納めた。

 もちろん前席はノーミーであり、後席はスノウであった。

 風防を閉めるスノウ。その間に機体、いやエーテル炉を目覚めさせていくノーミー。

 準備が整い、見守るディアナとペノンズを見る。

「無事に合流できるかしら」

「ディアナがいるから大丈夫だよ」

 心配するスノウに、大丈夫だというノーミー。なぜ、ディアナがいれば大丈夫なのか。スノウは疑問に思うが、ノーミーが機体を浮かせ始めていたため、計器のチェックに注意を向けることにする。

 ディアナとペノンズが浮上していく機体に手を振っていた。

 早く逃げるように、また、行ってくるとばかりにスノウとノーミーが手を振り返した。

 機体はすでに充分な高度に上がっており、ディアナとペノンズは背中を向けて森へと駆けている。

 周囲のクリアを確認したスノウが声を上げた。

「周囲クリア、行きましょう!」

「行っくよー」

 ドンという衝撃を残して、F-3改が発進をするのだった。


円盤内部 司令室

 以前、その空間の中心にはパークヒルが立っていたが、今はペレグリンが立っている。その代わりに、パークヒルが以前のペレグリンの席に座っており、立場が交換されている。

「封鎖が完了した。結界は順調で、妨害も攻撃も受けていない」

 パークヒルからの報告を受けて、ペレグリンが頷く。

「結界内へ侵入。眼に入るもの、全て破壊しろ」

 その言葉に従い、六機の円盤が降下を始めた。

「小型の飛行体接近。恐らくは砂漠にいたカトンボだ」

「例の流線型は?」

「確認出来ない」

 パークヒルからの報告に、ペレグリンは顔をしかめる。主目標がいないとは。

 わざわざやって来て、このまま引き返すなど出来ない上、隠蔽の魔術すら施さず、外観をさらして攻撃の準備をしているのだ。一見するだけで、この円盤の技術を盗めるとは考えていないが、この星の大精霊が見れば、この機体が異質なものであると理解し、自分達の技術革新に利用するはずだ。

「やはり、殲滅だ」

 全て破壊し、目につく生命体を殺し、大精霊をエーテルへと還元せよとペレグリンは改めて命じる。

 そして、映像の六機の機体の脇をパスする敵の機体を見送る。

「ふん、カトンボが」

 ペレグリンは呟くのだった。


J○?もどき:「既に人類と獣人類は防衛組織を結成していた。本部はとある場所蒼龍の住む地下深く秘密裏に作られ、沈着冷静な大精霊のもと、日夜謎の円盤に敢然と挑戦していた」

狼妹:「……いや、地下はないから。あと沈着冷静ってあなたか?」

UFO撃退の準備はできた。

かっこいい。


次回、明日中の投稿になります。

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