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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第11章 We Are The Champions
212/219

11-9

引き続き、

第11章を投稿いたします。

最終章です。

どうか、よろしくお願いいたします。

ダーク 指揮管制室

 それはダークの全てを司る部屋。

 一段高い位置に置かれた椅子に、リーネは座っていた。

 この部屋に入る前に、保守竜(メンテドラゴン)が差し出す服、新たな水色のワンピースに着替えているが、その際に自らの人差し指の先を噛み切り、にじみ出た血で自分の脇腹へ一文字を描いた。

 指先の傷を隠すように手袋を付け、椅子へと向かう。

 そして、椅子に座るのだが、さっそく地表に魔力の照射を受けた事を知り、外部から正体不明の機体からである事で、リーネはすかさず反撃を行った。

 それは流線型の機体であった。

 遠ざかったその機体に、さらにどう対応するのか、リーネは考えるが、その時にふと見た手に赤い手袋を履いている事に気づいた。更には、なぜ脇腹に血の一文字。そして、いま座るこの椅子は何故にこれほど居心地が悪い。

 額に手袋を履いた手を当て考えるリーネ。

 だが、答えは出ない。

 それよりも、今はこちらに向かう敵への対処が先だと。

 この地を守らねばと。

 その時が訪れるまで。


頂天号トップ・オブ・ザ・ワールド 操縦室

 幾条も発射される光線を、レインは頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドを宇宙で舞わせるかのごとく、華麗な機動を行い、僅差で避けていく。

 光線が発射されてからでは避ける事が出来ない。ならば、発射のタイミングにその方向を読んでの回避。ツキの観測とクオーツの解析と、それを瞬時に伝える連携により、レインは頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドを操り、攻撃を避けていた。

「なぜリーネは攻撃を続ける」

 距離をとって、攻撃範囲外へ待避する事は簡単だが、アキラとしてはいつかは間違いに気づいてリーネが攻撃を止める事を信じていた。

 だが、考えに沈んでいたブルーが突然口を開いた。

「記憶の上書きだ」

「……どういうことだ」

しかし、そのアキラの質問に答える事はブルーには出来なかった。

ツキがダークからの映像と音声の念話を受像したと報告したからだ。

すぐさま、ツキはアキラの指示に従い、前方へと映し出す。

「敵対の意志を捨て、この星から離れよ。繰り返す、この星から離れよ」

 映像にあるのは、まさしくいつものリーネであった。声も本人のものであった。ただ、その顔には表情がなかった。

 再び繰り返される、同じ映像に音声。

「攻撃は止めてくれ!」

「一方通行の念話です。向こうへは送れない!」

 つまり、問答無用で立ち去れとリーネは言っているのだ。振り返ったアキラに、ツキは泣きそうな表情で顔を左右に振る。

 そして、もう一度繰り返されて途切れる映像と音声。

「恐らくは、今のリーネは昔に戻っているんだ」

 ブルーの言葉は自分へと言い聞かせるよう。

 今のリーネは、ダークへと移された時と同じ状態になっているのだ。つまり、ダークから星の地表へと降ろされて睡眠槽から出てからの、ブルー達と過ごした記憶が上書きされてしまっているのだと。

「どうすれば記憶は取り戻せる?」

 そのアキラの質問に、ブルーは考え込むが、答えが出ないのか沈黙を保つだけ。

 だが、それ故にアキラは決めた。

「ダークへと向かう。リーネの居る場所は判明しているか」

「幸い、先の魔力の照射でダークの表面、内部の浅い部分までは地図が出来た」

「念話を逆探知。その地図へと投影します」

 前方にクオーツが地図を写しだし、そこへ、ツキが光点を描いた。

 その光ある場所がリーネのいるところだと。

「あの位置までの航路策定。途中、妨害や攻撃が予測される」

 クオーツが地図の一部を大きくして、恐らくはダークの表層、地表直下に設けられた施設、そしてそこへと至るトンネル状通路を利用した航路を描き出した。

 地表には入り口らしきゲートが見える。

「……、スプライト、スピリット、用意だ」

 アキラの呼びかけに、いななきとともに二体の精霊馬が姿を現した。大きさは依然としてブルーやクオーツ程度だ。

 主砲のトリガーが、アキラの前へとせり上がる。

「待て、ここは一旦引いて……」

「引いてどうする。それでリーネの記憶が元に戻るのか?」

「…………いや、それは」

「一度会ってみるさ!」

 ブルーがアキラから視線を逸らす。

「会って、後悔はしないのか?」

「もう一度だ、もう一度繰り返せば良いんだ」

 あの楽しかった日々、苦いものも、悲しいことも、全て繰り返せば良いのだと。

 そう決心をするのならばと、ブルーはアキラを見る。

「……妹を頼む」

「もちろんだ!」

 アキラがトリガーを握り込む。クオークが魔術室(チャンバー)への充填完了を告げると、精霊馬達が砲身の形成を始めた。

 頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの機首に魔方陣が幾つも浮かび上がり、前方へとせり出し、その中心に光り輝く砲身を生み出した。

 レインは、砲身をゲートへと向ける。

 幾条かの光線が頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの船殻を撃つが、それは弾かれ、弧を描いて逸らされる。

「トリガーとシアー開放は俺が、砲身安定させろ!」

 精霊馬がいななき、ライフリング形成と撃針を後退させる。

「魔力弾で発射する。形状は徹甲弾。ライフリング解除、初速優先」

 すぐさま、ライフリングが消される。

魔術室(チャンバー)内、徹甲弾成形完了」

 クオーツの言葉でもって、発射の準備が整う。

 アキラが決意を込めて息を吸う。

「発射!」

 その手が、指がトリガーを握り込んだ。正確にトリガーはシアーを作動させて撃針を前進、魔力弾を打ち発射した。

 細い、先のとがった形状をした徹甲弾は、エーテルをものともせずに、結界を蒸発させて目標のゲートへと命中、貫きその衝撃で破壊する。

「破口確認。頂天号トップ・オブ・ザ・ワールド通過可能です」

「レイン、破口へ、ツキはナビゲートを頼む。クオーツは魔力の計測と魔術波動で内部地図の作成続行を」

 操縦室に響く了解の声。そして、アキラ自身は副砲の用意をし、トリガーを更に二つせり上がらせる。

 魔力を吹かした頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドが、正確に破口の中心を通過した。


蒼龍の守護地スカイドラゴンフィールド ホームタウン

 都市計画に基づき、ホームタウンの建設は進められているが、今はその中心部では建物を建設する前のインフラ整備が行われている。そして郊外とされる場所では田畑が作られていた。

 予定ではあるが、将来十万人もの人口を支えなければならないのだ。大半は守護地(フィールド)外から賄うとしても、都市近郊でも生産は必要である。

 農業国の族長の娘としての知識を生かすために、スノウは田畑の担当として、この場にやって来ていた。

 以前、小規模なものは作っていたが、今度はとても大規模なもので、水利などを事前に計画をしておかないと、後々が大変になるため、スノウとしても国元で教えられた知識の全てを動員して取り組むつもりであった。

 そんなスノウの脇には、ローダンが商会本店から転移してやってきていた。すでに、守護地(フィールド)内部で働く者達には、正体を明かしているため、転移を使って頻繁にやってくるのだが、今日は田畑に必要な資材を打ち合わせに転移してきたのだ。

「やはり、水は湖から引くべきですね」

「どこかとつないで運河にしてしまう?」

 水利のための疏水ではなく、物流をも見越した運河の建設をローダンが提案すると、確かにと、土木の得意なノーミーがいる事だしとスノウも頷くのだった。ここで手はあっても予算が少ないと、要検討になってしまうが、予算は湯水の如くあるので決断が早い。

 では、運河を作るにあたっての資材を相談しようとするローダンだが、スノウが厳しい表情で空を見上げている事に気づいた。

 その意味を、すぐに理解するローダン。さらには、大精霊である自身が獣人のスノウに遅れを取った事が苛立たしい。

 だが、その苛立ちはすぐに失せる。

 そうだ、スノウはすでに大精霊であるノーミーと契約を交わしている。ならば、比較的大精霊としては若いローダン程度あれば、能力を凌駕することもあるだろう。

「ホームタウンの結界が浸食されている」

 それはすでに守護地(フィールド)に何者かが侵入しているのか、それとも侵入を阻む精霊の結界を回避した証拠でもあった。

 スノウの言葉に頷き、更にローダンが言葉を受け継ぐ。

「浸食の外側に、新たな結界が張られた」

 スノウが駆け出す瞬間、ローダンは先に行くと告げて転移を使用して姿を消した。


妹狼:「農業系獣人」

J○?もどき:「土木系大精霊」

似合わねー。


次回、明日中の投稿になります。

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