11-6
引き続き、
第11章を投稿いたします。
最終章です。
どうか、よろしくお願いいたします。
翌日の朝早く、昨晩の宴会ではアキラ達は出来るだけアルコールから逃げていたため、問題なかったのだが、見送る側が非道いことになっていた。もちろん大精霊達は全く問題はなかった。
ダークへと向かうのは、アキラとツキ、そしてレイン。もちろんブルーも同行する。ノーミーが一緒にと言い立てたが、それはアキラが却下した。
このホームタウンを頼むと言って。
そう言われては、ノーミーも黙らざるを得ない。お兄ちゃんの街を守ると言っているが、他の大精霊達は、何を言っているのだというような視線を向けている。あなた姉だろうと。
ただ、大精霊達は、自分達の住む国を守る立場にあり、協同国にはサインがいるため、ノーミーだけがこのホームタウンに居続けることができる。だから、アキラは頼むのだった。
「何かあったら、手伝ってやってくれると助かる、姉上」
「国元が無事ならね。出来るだけのことはするわ」
長姉精霊であるシルにアキラは頼み、それに応えるシル。他の大精霊達も頷いていたが、たった一体、リータだけは違った。
そう、リータは財団と何ら約を結んでいない存在。だから、アキラはクギを刺す。
「リータ……」
「分かっているから。心配するな。ただ、何かあった時は頼れ、いいなノーミー」
「うんうん、ちょっぱやで来てね」
そんなノーミーの言葉を理解するリータ。周囲の大精霊が凄いと言うように、感心の表情を浮かべていた。唯一サインは例外なのがおかしい、リータ同様に難なく理解しているのだ。
アキラは苦笑いを浮かべて頂天号へと向かうのだった。
頂天号 操縦室
ダークへと向かうメンバーが、全て揃って頂天号の操縦室の、自分の席に座っていた。ただ一つ、空いている席がある。
最前列中央の機長席にはアキラが座り、その右手には補佐するレイン。そしてアキラの後方には航法と警戒を担当するツキ。そして、最後方には、何も納められていない空の透明な巨大シリンダーの脇に、機関と解析を担当するクオーツが白猫の姿で寝そべっていた。
アキラは、脇に寝そべるブルーとともに、左手の空いている席を見つめていた。そして、視線を合わせてうなずき合う。
「頂天号浮上」
「浮上させます」
アキラの言葉を合図に、魔力がクオーツによって推力として供給され、レインが周囲に見送りに集まった皆を吹き飛ばさぬように、慎重に加減をして、頂天号を水平のままに浮上させていく。
ゆっくりと浮き上がっていく機体を、見上げている大精霊達を始めとする、技術者集団が、映像として前方に映し出されていた。
徐々に小さくなっていく見送りの皆に、行ってくるとアキラは口の中で呟いた。
やがて、地上の大精霊や人々が小さくなり、個々の判別もつかなくなるまで高度を上げた頂天号。
「衝撃波の影響は?」
「地上へは届かない、大丈夫です」
アキラの問いかけに、すかさず周囲を観察していたツキが応えた。
いよいよだと、アキラは操縦桿を握った手に力を込める。
「頂天号、発進!」
アキラの手が、推力を操るスラストレバーを引く。
一瞬にして、全開となった推力が、機体を弾丸へと変えた。
見上げる空には、頂天号の魔力の残滓が瞬いていた。
それは煌めきと彩る虹の光景。
スノウは眺め、綺麗だと思う。
「一緒に行きたかったかな?」
顔を上げて空を見るスノウの肩へと、ノーミーが自分の肩をぶつけてくる。
二つの翼が並ぶ。
「行きたいのは、正直な気持ちですが、ご一緒すべきではないというのも、本当の気持ちです」
「スノウは難しいこと言うなー。でも、分かるし」
そう言って、ノーミーはスノウの脇から抱きつき、スノウの顔にぶつかりそうなほどに顔を近づける。
以前のスノウならば、近づきすぎる距離に、それとなく離れるのだが、今はノーミーのされるがままであった。距離が近いとも思わない。いや、姉のライラに幼い時に頬ずりされた記憶が蘇るほどの心地よさ、安心感を得ていた。
「いつかさ、お兄ちゃんとは別に宇宙へ行こう。転移や飛行は無理っぽいからさ、シオダやテロンに頼んで、F-3でも貰ってさ」
無邪気にノーミーがシオダにおねだりする光景を思い浮かべるスノウだが、その孫娘に甘えられているような、困ったような、あの猛将と呼ばれるシオダの顔と、後ろであわあわと慌てているテロンを思い浮かべて、スノウはくすりと笑う。おねだりの代金は一体いくらになるのだろうか。
「そうですね。きっと提督なら、何とかしていただけるでしょうね」
提督という言葉を聞きつけたのか、側にいたエンが怪訝な表情を浮かべて、スノウとノーミーに視線を向けてくる。
いかに一時とはいえ、指揮下に入ったとはいえ、スノウとシオダは属する国が違う。しかも、シオダは現役であり、スノウとて離れていても、予備役のような存在で、ことは微妙な話題となる。
慌てたスノウは、ノーミーの手を引き、その場から離れてた。
「どうしたのさ~」
「なんでもありません。きっといつか、一緒に宇宙へ上がりましょう」
スノウとノーミーは人々の集まりから抜け出し、駆けだしていった。
???????
ある洞窟の一角、本来岩肌であるはずの壁はしっかりと加工され、抉られたくぼみには光を放つ岩がおかれて照明となっていた。
一際大きな空間に置かれたテーブルには、多くの赤茶けたローブを着た男達が座って、大声で言い争っていた。
「生命体ばかりでなく、小精霊も異常に多い。生命体同士で食い合うなど野蛮な星で、何故あれほどの技術が発達したのだ!技術の教授は確認されていないのだぞ!」
「いきなりどういうことだ!もうすでに三種、確認出来ただけでも三種もの飛行体が、この星で観測されたぞ!」
「最新の報告にも書かれておらぬ。発見できなかったのか、見過ごしたのか」
適当に報告書をでっち上げたのではないか、馬鹿に仕切った言葉に、その報告を上げたらしき男が、いきり立って反論をする。
「俺は、見たままを報告しただけだ!この星の精霊は隠蔽の魔術が……」
「魔術を破れなかった、お前が無能なのであろう!」
「貴様、それは俺への挑戦か?」
「ほう、アレースに誓って、勝負をするか?」
すでに決闘沙汰にすらなっており、そんな喧噪の中で、フードを被ったパークヒルは無言でテーブルを見つめていた。
本来は先の行動の言いだし主として、何らかの釈明、いや逃走に至る言い訳をすべきなのであろうが、あまりに喧噪が激しすぎるのか、ただ黙っているしかなかった。
結論など出ぬかのように思われたが、やがて喧噪の内容は、先の行動を提案したパークヒルの責任に集約し始めていた。
「パークヒル、言い出したのはお前だぞ」
その言葉をきっかけに、パークヒルは手にしていたカップをテーブルに叩きつけた。
陶磁器が割れ、叩きつけられる音に驚いたのか、全員が口を閉ざしてパークヒルを見た。
「まずは、皆には詫びよう」
意外なパークヒルの第一声に、場がざわめく。
「逃走に至る原因としては」言葉を区切って、皆を見回す、「あの流線型の飛行体にある」
そう断言するパークヒルに、頷き返す者がいた。
「確かに、パークヒルの言う通りだ。あれは我々の想像や技術の埒外にある」
「あの船殻はなんだ。全ての攻撃を跳ね返していたぞ。材質や構造を想像することすらできん」
「いや、振動雷撃線は、船殻表面だけであったが、被害を与える事ができていたぞ」
あえて、パークヒルが語らずとも、皆が口々に敗因が頂天号に有り、その恐るべき性能を口にしていた。
「機動、速度に優れ、我々の武器が通用せぬ機体。我々がアレースから授けられた技術では適わぬというのか」
そのパークヒルの挑発じみた言葉に、アーレスを侮辱するかと激昂し、詰め寄る者もいたが、それはペレグリンによって遮られた。
「落ち着け。何もパークヒルは我らの星やアレースを貶めているわけではない。事実を述べているだけだ」
その言葉にも、何か言いたげであったが、ひとまずは引き下がり、パークヒルの言葉の続きを聞くことにしたようだ。
「助かったよ、ペレグリン」
「いや、良いから続けろ」
その言葉に分かったと頷いたパークヒルは、促されて続きを語る。
あの流線型の機体は、明らかにアレースの技術を超えており、アレースの子であり、大精霊であるパークヒル達であっても真似出来ぬ。速度、船殻を見て、恐らくは機関の中枢である炉と船殻の材質が未知のもので出来ていると。
「それで、おめおめと尻尾を丸めて母星へと戻るか?それとも、また身を潜めるか?」
パークヒルはどちらもアレースの願いに反することになると。
たとえ、このまま戻ったとしても、アレースは自分の子達を叱ることはせぬが、とても悲しむだろうと。
そのパークヒルの言葉に、全員が沈痛な表情になった。
そんなことは許されるものではないと。
パークヒルがペレグリンに合図を送る。後は頼むと。
「そこで、提案だ」
ペレグリンの言葉に、全員が顔を上げて聞くことになった。
J○?もどき:「お兄ちゃんは、お兄ちゃんだよ~」
ここでは明かされない、
何かが……。
きちんと理由が存在するのです。
一体の大精霊が
長姉:「ならば、あなたもだろう」
??:「(汗)」
という、突っ込みを入れられています。
社畜男:「だよな、姉様」
次回、明日中の投稿になります。




