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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第11章 We Are The Champions
206/219

11-3

引き続き、

第11章を投稿いたします。

最終章です。

どうか、よろしくお願いいたします。

 ドラゴンの顔をじっと眺めて、真剣な表情を浮かべてニアは問う。人や獣人にそんな感情があることは知っていても、ニアには無縁のものなのだ。もちろんドラゴンとて同じ。一体は大きな頭を、もう一人は可愛く頭を傾げて捻っている。

「理論として知っているが、よく分からん。まぁ、その時が来れば理解出来るのではないか?」

「……分からんけど、分かった」

 とりあえず、生命や精霊を創造するのと大して変わらないだろうと、ニアは簡単に請け負うのだった。

 後の世にて、ニアは思い知らされるのだが。この時、まだ人も獣人も、精霊が惹かれるほど命が磨かれてはいなかったのだ。いや、この時から命の研磨の計画が始まったと言えるのだが、その結果をニアはまだ知らない。そして、その最終形も。

「その融合体に何かあっては大変だから、守護体としてあのドラゴン(偽)三体は君に贈呈する」

「……貰えるものは貰っておきましょう」

「それと、恐らくこの星系を管理している太陽の精霊は、君の星が気に食わないだろうから、一度白紙に整理するはずだ」

「何でよ。私の星よ。父とはいえ、そんな権利はないはず!」

「権利はないけど、やれる実力はあるから。とにかく、君は生命体を増やしすぎた。他の星の精霊にとってはやり方が違うし……」

「違うし?」

「気持ち悪いと思うはず」

 そうドラゴンに指摘され、ニアも思うところがあるのか返答に詰まる。やはり、生命が生命が喰らうというのは、他の星から見れば衝撃を伴う嫌悪感なのだろうかと。

「そうなっては、君と生命体との赤子が生まれ、私が喜び勇んでここに戻っても意味はなくなってしまうし、残念だ」

「父に止めろって命じられないの?」

「無理だな」

 太陽の精霊にはこの星系の管理を任せており、問題がないのに銀河の精霊が介入することは出来ないと、ドラゴンは首を左右に振る。

「そこでだ、君の赤子は融合体で、私の計算では相当の能力を持つはずだ。この星を守れる存在にして欲しいけど、それだけでは不安だから、君の赤子に贈り物を用意しよう」

「贈り物?」

「内容は秘する。他の星の精霊に知られると、あまり良くないからね」

 どうやら、他の星の精霊にとっては公平に欠ける内容だと、ドラゴンは判断をしている。依怙贔屓の贈り物なぞ、だめだよねと。

 そして、しばらく時間が欲しい。その贈り物が出来たら旅立つつもりだとドラゴンが言うと、ニアは首を傾げる。

「そんなに時間がかかるものなの?」

 頷くドラゴン。

 ドラゴンほどの力を有していながら、時間を要するほどの贈り物とは何か、疑問に感じるニアであった。


 完成したと、ドラゴンが宣言したのは、この星が太陽を数十回、回ってからのことであった。

 ニアが、ドラゴンの元へとやって来た。

 立ち上がっているドラゴンの足下には、水色のワンピースを着た少女が立っていた。その少女はドラゴンに促されて、見事なカーテシーをニアに見せた。もちろん返礼をするニア。その時は以前に着ていたブレザーを再び着ており、短いスカートを広げる結果となっていた。

 よほど気に入ったのだろうな、呆れたようにドラゴンは思うのだが、口にすると面倒になりそうなので、止めておく。

「その子が贈り物?夜しか姿を見せない黒い月とは違って?」

「いや、あの黒い月もそうだ」

 当然、ニアは自分の星の回りに、新たな月が作られている事は知っていた。銀の月に続いて二個目の月で、あれは何だと、シルバーからも問い合わせの念話がうるさいほどに繰り返されていた。

「この少女は、あの黒い月を司る。時が来るまで寝かせておくから」

「分かった、その時まで預かるわ」

 その言葉に、少女の姿が消えた。ドラゴンが黒の月へと送ったのだ。

「以上かな。あの黒い月は基本的にニア以外は入れないようにしてある」

「えっ、てことは、何か用事があったら、私が行かなくちゃいけないの」

「そうしてくれ。他の星の精霊には知られたくない」

 そのドラゴンの言葉を聞いて、ニアは頬を膨らませる。何か、面倒ごとを押しつけられた気分になったからだ。

 ようやく全てが終わったと、ドラゴンからは気の抜けたような雰囲気が漂う。

「さて、これで私は去ることにする。融合体が生まれたら、見に来るから。もちろん、それまでにも顔を出すようにするよ、友の様子を見にね」

 ニアがさみしくないようにねと。

「そうね、いつでも遊びに来て。出来ればあなたの作ったドラゴン(偽)の振りでもしてね」

「分かったよ。では、さらばだ」

 そう言い残して、ドラゴンは姿を消すのだった。

 あっけないものだが、時の感覚が麻痺しているドラゴンや大精霊では、別れを惜しむという感覚がない。

 ニアは空を見上げる。すでにドラゴンは星系の外に出ているはずだが、何故かニアには星のすぐ側にいる気がしたのだ。

「変な奴」

 それが、星が公転する何千回も一緒にいたものへの、ニアの感想だった。


 ニアが空を見上げるその時、ドラゴンは黒の月にいた。

「もう、星系は出たと思ってるだろーな」

 そう言ってにやりと笑い、ドラゴンは少女の眠る睡眠槽を覗き込む。

「君はリーネと名乗りなさい」

 そしてドラゴンは呟くのだった。

「眠れ、私の娘、そして息子よ、その時まで」

 睡眠槽から視線を移した、そのドラゴンの手には水晶が握られていた。

 願わくば、私の命令(プログラム)を超えてくれと。


偉い奴:「……」

末端管理職:「どうかしたか?」

偉い奴:「いや、マ○ロスネタが思いつかん」

末端管理職:「引っ張るな!続けんでもいい!」

……あるけど、

ない!


次回、明日中の投稿になります。

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