11-2
引き続き、
第11章を投稿いたします。
最終章です。
どうか、よろしくお願いいたします。
最近では、ドラゴンも思索にふける事が多くなった。
それを見ているニアは、そろそろ諦めるかと思っているが、精霊は時間の経過というものに頓着がない故に、暇を持て余すという概念が存在しないので、諦めるということをあまりしない。使える時間など、無限と言えるほど有るのだから。時間の無駄など知った物ではないのだ。ニアの感覚の方が異常なのだ。
「まあ、何だか訳の分からないものが出来たけどな」
頭をもたげたドラゴンが、自分の上を指差す。
ニアが視線を上げると、青、白、赤のドラゴンらしき三体が宙を舞っていた。
「私の似姿で作ってみたが、生命と精霊の性質をもった別のものが出来た」
「生命体でもないし、精霊でもない。何だろうね、あれ?」
「適当に作った私も私だが、分からん」
ただ、適当に作ったとしても、銀河の精霊、代行者であったとしても、その能力はニアを遙かに超えて、この星系の太陽の精霊すら凌駕する存在だ。
空を飛ぶドラゴンらしきものの、その内包する力を感じて、ニアが身震いをする。
「おっかないもん、この星で作んないでよ」
「あれは、融合ではなくて、良いとこ取りだな。生命体でありながら、魔力を使用出来る。いわばつぎはぎだ」
自分で作っておきながら、非道く酷評するが、消す気配がない様子から、このままでいさせるようだ。
「心配するな、力は制約しておく」
「いざという時以外は、うちの大精霊並にしといて」
その涙目になっているニアの言葉に頷くドラゴン。
「何て呼ぶのが良いだろう?」
「ドラゴン(偽)でどうかしら?」
そのニアの提案にドラゴンは大笑いをする。
「素直にドラゴンと呼んでやってくれ」
「あなたがそう言うなら、そうしてあげる」
ただしは、一緒にいる時はややこしいので偽は付けようと決めたのだ。
自分達の名が、そんないい加減な方法でつけられたとも知らず、三体のドラゴン(偽)は空を舞っていた。
ドラゴン(偽)を創造してからしばらくたったある日、ニアは念話でドラゴンに呼び出されて、いつもの空き地へと赴いた。
転移によって現れたニアの存在に気づいたドラゴンが視線を向けるが、その目をぱちくりとさせる。
「なに?」
視線を向けるばかりで、言葉を放さないドラゴンに対して、ニアは挨拶もそこそこに問うた。
我に返ったようにドラゴンが話す。
「その格好はなんだね?」
「あー、これ?ぶれざーって言うみたい」
なんでも、たまたま時と空間の精霊の練習がてら、他世界を覗かせたところ、見かけたものだそうだ。
「どう?似合ってる?」
くるりと一回転してみせるニア。短いチェックのスカートが翻り、首筋のボウタイが揺れる。
「よく分からん」
正直に答えるドラゴン。数多の星で服飾文化を見ているはずのドラゴンであっても、答えに困るほどであるようだ。
ニアは思っていた感想をもらえず、ともかく相手は形状が違うのだから、感覚も違うかと、自分を慰めてドラゴンの前に立った。一応、残念そうな表情はつくっていたが。
「で、呼び出して、用事でもあるの?」
「すぐにではないが、この星を去ろうと思う」
この地に長く滞在しすぎた、銀河の精霊が少し困っているようだと理由を語るドラゴン。銀河を巡って管理させているはずのドラゴンが、長く一カ所に留まっては問題が生じるであろう事は、ニアにも想像出来た。
「すぐにじゃないのは?」
「……未来の記憶に、君を見た」
「珍しい、未来の記憶なんて鮮明じゃないでしょうに」
ニアの言葉には間違いがある。それはニアとドラゴンの能力が大きく違うからだ。
世界線の上に存在する限り、線は未来にも過去にも延びている。過去はすでに時が過ぎ去り、記憶は固定されるが、未来は様々な可能性により、常に変化し、それに伴って記憶は常に変化しており、ニア程度の精霊であれば、雑音ばかりの記憶でしかない。
銀河の精霊、代行者であるドラゴンとてそれは同じなのだが、その能力が巨大すぎるがゆえに、未来の記憶で、ごく僅かな一瞬、固定化されている部分が見えてしまう。過去の記憶が欠落して雑音となる、その逆の現象と言えよう。もちろん、未来の記憶固定化の方が遙かに稀な出来事なのだが。
ニアとしても、それが起こりえることは知っていても経験がないのだ。
「で、どんな記憶?」
「君が赤子を抱いていた」
「誰の?」
「君の」
言われて、ニアはすぐに理解出来ずに、自分のこめかみを指で押さえ、傾げて見せる。
しばらくの静寂。
そして、ニアの叫び。
「はっー、どういうこと。精霊が子供産むってどんな現象。あんた頭に何か湧いた。ってか、なにその超常現象、あり得ない!銀河の精霊って馬鹿なの?いや、代行者のドラゴンが馬鹿なのか!」
何故か地面に足を叩きつけるニア。更には言葉が続く。
「知ってるよね、精霊って分裂して増えるんだよ、アメーバみたいに!みょーんってね!しかも合体まで出来るんだよ、三種合体も可能だよ!」
「いや、私に言われても、そう未来を記憶しているとしか言いようがない。しかも、その赤子は私の目的をかなえるかもしれないのだ」
ますます、訳が分からず、ニアはぺたりと草地にへたり込む。髪の毛を乱暴にかきむしり、ドラゴンの言葉を理解しようと努める。
しばらく、静寂が周囲を支配する。
そして、ニアが口を開いた。
「……もしかすると、その子は生命体と私で作る赤子?」
「まさしく、恐らくは私が目的としている融合体だ。それでだ、その子を君の計画に組み入れてくれないか」
「話しの展開が早いって。あなたの思考速度が速いからって、私が追いつけないって」
ため息をついて、ニアはドラゴンの言葉を咀嚼する。
「つまり、私が何でか創る、じゃなくて産む子を、この星の進化に組み込めと」
「出来れば、君の計画に役立つように、人あるいは獣人の頂点とま……、いや交配……、じゃなく愛し合ってくれないか」
「愛って何?」
末端管理職:「愛・○えていますか」
とても偉い奴:「♪今、あなたの声が聴こえる~」
どきどきするわけです、テレビ見る前。
いえ、話しの内容にではなく、
作画に……
次回、明日中の投稿になります。




