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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第11章 We Are The Champions
204/219

11-1

新しく第11章を始めさせていただきます。

この章で終章になります。

地上でのお話が終わりです。


どうか、よろしくお願いいたします。

むかし、むかし…… ある場所

 原生林、木々がびっしり生い茂る森の中、まるでぽっかりとえぐり取られたかのように、木は生えておらず、下生えの草が生えているのみ。まばらに花が見えるが、それは少ない。

 楕円の空間、とはいうものの森の規模が大きいために、その空間も森の規模に従い、かなりの大きさであったのだが。

 それを感じさせないものが中心にあった。

 大きいはずの空間が矮小に見えるほどの存在。

 黒、そのものであった。

 それはドラゴン。

 身体全体を覆う鱗は鈍く光っており、見つめていれば引き込まそうなほどに黒い。しかし、その光沢は角度を変えれば虹色に見える。

 翼は獣。皮膜が骨格の間に、黒色を放って張り巡らされている。

 ドラゴンは腹を下生えの草に向けて寝そべっており、頭は草の上にあった。

 眠っているのか、眼は閉じられている。

 陽の光が降り注ぎ、風がそよぎ渡っていく。

 いつの間に現れたのか、それは草を踏んでドラゴンへと近づいて行く。

 側まで寄ると、そっと自分ほどの大きさのドラゴンの顔、頬に手を当てた。

 目蓋がゆっくりと開く。

「おや、もう良いのか?ティターニア?」

 その大きな体格に似合わず、ドラゴンの声は穏やかで、周囲を圧する物ではない。

「もう何万回言ったか、ニアで良いって。長いでしょ」

 ドラゴンの質問には答えず、ニアはドラゴンの目蓋の側に座り、頬に背を預けた。

 座り込んだニアは、両手両足を同時にうーんというかけ声とともに伸ばした。

 それが質問の答えだと理解したドラゴンが、更に言葉を続ける。

「そうか、片付いたんだな」

「いや、私は何もしなかったわよ。見に行っただけ」

 そのニアの言葉に、ドラゴンの口角の片側だけが上がった。どうやら笑った、いや苦笑いを浮かべたようだ。

「そうだったな。手を出さないのが君のやり方だった」

「手を出さない訳じゃないよ。最小限ってやつ」

 更に口角がつり上がり、苦笑いを深める。

「他の星の精霊が見たら驚くよ。何も管理してないじゃないかって」

 そのドラゴンの言葉に、ニアは喉の奥で笑い、ドラゴンは眼を細めて笑う。

「全ての精霊の創造者、銀河の精霊、いやその代行者としては、不満かな?」

「いや、好きにすればいいさ」

 その言葉を機会にしばらく口は閉ざされ、陽の光と風の感触を楽しむように浴びる。

 だが、それはしばらくの時間の経過により、ニアの言葉で破られた。

「それで、出来たの?」

「いや、無理だ」

「そうだろうね。生命体と精霊の融合。決して混じらないものを混ぜ合わせようとしても、無理だよ」

 ドラゴンが頭を僅かに上げる。

「この星に来て、どれほどの時がたっただろうか」

 通常、この惑星程度の規模では、銀河の精霊、それが本体ではなく代行者であっても立ち寄らないものだ。それが、面白いといって降り立ったのは、この星が太陽の周りを幾百回る前であったろうか。

 他の精霊が管理する星に比べて、圧倒的に多い生命体と精霊。あまりにも精霊は数が多いために、ほとんどは不可視の存在で知性も低い。

 そして、目を引くのは、二種類の知性を有する生命体、人と獣人であった。

 この星に降り立ち、出迎えたニアを前にして、人と獣人、他の生命体も含めてだが、進化によって自らを守って自立して存在出来ると信じるのか、それがこの星に降り立ったドラゴンが、最初に口にした言葉だった。

 ニアの答えは、簡潔だった。

 分からない。

 それを聞いたドラゴンは大笑いをして、しばらくこの星に滞在することを決めたのだった。

 実は、ドラゴンはニアのやり方を面白いと感じていたのだ。恐らく、他の精霊は思いついてもやらない、ドラゴンは最初にニアを馬鹿なのかと思ったほどだ。進化を目指させるのに、劣化させるとはと。

 ドラゴンに馬鹿だと思われてしまったニアは、自分が作った人と獣人に工夫を施していた。

 その工夫とは、人と獣人を精霊の失敗作として創造したのだ。失敗というと語弊が有るが、ドラゴンの目的と非常に近い手法を用いている。

 つまり、ニアは人と獣人に魔力を纏わせたのだ。この過酷な世界で、より長く生き延び、進化の手助けとなるように。

 だが、それは簡単なことではなく、ニアは精霊の性質をごく僅かだけ、人と獣人に混ぜる、移植することに成功していた。その結果、本来魔術が使用出来ないはずの人と獣人が、自らを癒やす魔術だけは使用出来る事になるのは、副次的に備わった能力にすぎない。

 いわば、見せかけだけであるが、精霊を大きく劣化させ、生命体にしたのだ。

 故に、外部から見たら失敗作だが、ドラゴンはその手法に自らの目的を達成するのに可能性を感じていた。

 そして、ドラゴンからニアは他の星の状態を聞くことになる。

 大抵の星の精霊は、大精霊並の精霊を作り、星の管理を任せており、あまり生命体は作らないのだと。なぜなら、エーテルと魔力があれば存在できる精霊に比べて、生命体は他からエネルギーを得る必要があって非効率だと見なされていたからだ。

 自分のしている事は変わっているのだろうかと、ニアはドラゴンに問いかけたことがあったが、その答えは数はごく僅かではあるが、有るには有るとのものだった。

 同じ考えを持つ精霊はごく少数ながらもいるのだ。

 そして、結果を得たものも。

 ドラゴンは結果を聞きたいかとニアに尋ねるが、それにニアは首を振って断る。

 それは野暮ってもんだろうと。

 なるほど、そうだなと、ドラゴンは大笑いした。

 この星に滞在を決めたドラゴンには目的があった。さして重要な事ではないが、本体が可能かなと思い、やってみようと始めさせた目的であった。力と時間を無限に有する銀河の精霊は良くこのようなことを始め、代行者に目的として与えるのだ。

 他とは違うこの星、生命が豊富で、他の星の精霊が見れば醜悪と感じる、生命が生命を喰らうこの星であれば、何かのきっかけが有るかもしれないと。

 このドラゴンが与えられた目的とは、生命と精霊の融合であった。

 銀河の精霊の代行者、この銀河を作り上げた存在を代行するもの。確かに本体の数分の一しか能力は授けられていないにしても、この星系を預かる太陽の精霊の力を数倍以上の力を有している。

 だから、最初にそのドラゴンの目的を聞いたニアは、簡単だろうなと、逆に何が難しいのか、首を捻ったほどだ。ただ、ニア自身には無理なことだとは理解していたが。

 最初のそれを見て、ニアは驚く。

 融合した存在は確かに発生したのだが、すぐに精霊へと変化してしまうのだ。

 ドラゴンの言葉によれば、エーテルの力が強すぎて、どうしても介入を招き、精霊へと変化させてしまうのだと。ニアはそれを見て、なるほどと思い感心した。

 エーテルを遮断したとしても、それは同じ。エーテルに触れた瞬間に精霊へと変化してしまう。つまり、エーテルのない世界でないと駄目なのだ。そんな場所はこの銀河には存在しない。全ての恒星、太陽の精霊がエーテルを発生させて、自分の星系とその周辺にばらまいているのだから。それは自分が作り出した精霊が、存在するために必要であるからだ。

 それほどエーテルとは強い力であるのだ。魔力へと転換されて、物理法則を曲げるだけの力を有しているだけのことはあった。

 ドラゴンは試行錯誤を続け、ニアも星の管理は放り投げているために、それを手伝うことになる。

 そして、成功に至ることなく、今の時になるわけだ。

とっても偉いの:「やはり、歌って踊れるのだろうな、私は」

末端管理職:「それ、精霊じゃなく妖精だから」

とっても偉いの:「♪フラ○コーのゆる○カーブ……」

シェ○ル派です。


次回、明日中の投稿になります。

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