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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第10章 I Just Called to Say I Love You
201/219

10-16

引き続き、

第10章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

 地表に着陸するように、ロッサから念話が送られてきたが、肩を落として席に座るアキラは応えることも出来ず、変わってレインが指示し、頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドは砂漠の表面に降り立つ。

 遅れて二体のドラゴンが、地表に砂塵を舞上げて降り立った。

 ハクの首筋から、ブルーが飛び降りる。これで三体のドラゴンが揃ったことになった。

 頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドから操縦室にいた皆が、ハッチから出てくるが、アキラやツキなどは慣れてはいるものの、唯一の獣人(じょうしきじん)は三体のドラゴンを、一頭は犬だが、目の前にして戦き、慌てて膝をつこうとするが、ノーミーが子猫を持ち上げるがごとくに首筋を捕まえてさせなかった。

「ドラゴン三体ですよ!」

 ドラゴンへの信奉厚い獣人としては、跪いての挨拶が当然とばかりにスノウがノーミーを睨むが、呆れたようにノーミーがため息をつく。

「あーしと契約したんだし。スノウは大精霊と同格だし」

「えっ?」

 そんな事は初耳であったスノウは目を丸くするが、それは無理もない。大体、公に大精霊と契約を果たしたのはスノウが初めてなのだから。協同国へ戻った暁には、筆頭族長を始めとして、儀礼上の問題で重鎮達が頭を悩ませる事になるだろうが、水面下で経験をしている大精霊達には、独自のものがすでにあるようだ。

「だから、胸を張って堂々としているの!」

 そう言われて、薄い胸をぺたぺたと自分で触って、困惑顔のスノウだが、ノーミーの言う通りにするしかなかった。

 だが、外交での対応などは過去に幾度として経験しているスノウのことであり、拝跪を止めさせたノーミーの意図が、この場での出来事が、公式のものであることを理解した。

 気落ちして、歩く気力もないのか、アキラはツキに引きずられるようにして、三体のドラゴンの前にやって来た。

 一体、いや一頭は犬の姿であるが。

 ドラゴン達の前に、ツキはアキラを立たせる。

 じろりとロッサが不抜けたアキラの姿を見る。

 ツキが、殺気立ち、当然のように自分である大太刀を手に現すが、それをブルーが目で制した。

 静かな、砂漠を渡る風が吹く中、三体のドラゴンは腰を折り、頭を深く下げて地表へとつけた。

 ドラゴンの平状。

 長子であるブルーが口を開いた。

「黒き月の姫、守姫リーゼの帰還を確認した。これより、我らが創造主との盟約に従い、アキラ様に身命捧げて従うことを誓う」

 それを聞いて、ロッサとハクも大きく頷き、誓うと告げる。

 ここに至り、不抜けてもいられないアキラは三体のドラゴンを見回す。

「意味が分からないんだが?」

「それもそうだろうさ」

 ロッサがぴょこんと頭を上げて、人の形になる。続いてハクもそれに倣うが、ブルーは犬のままだ。人になりたくともなれないので仕方のないことであるが。

 さくさくと砂を踏んで、アキラに近寄ってきたロッサが、その顔を覗きこんだ。

「お前のおっかさんに、俺らの創造主がプレゼントしてたんだよ。俺ら三体を」

 はるかな昔の出来事だと。

「そうしたら、君という存在を守れと命じられた、その時が来たらな」

「そういうことだ。その時が今ということだ」

「その時ってのは、リーネとの別れか?」

 呆れたようにため息をつくブルー。

「リーネは準備に戻っただけだ」

「だけど、どうやって月へ……」

「あれは何だよ?」

 ブルーが前脚で指差す。

 示す先にアキラが視線を向けると、そこには頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドがあった。

 ゆっくりと理解の色がアキラの顔に浮かぶ。

「馬鹿でねーの。ありゃ宇宙も飛べるつーの」

 ロッサの言葉に、ブルーが喉を鳴らして笑う。

「お前も知らなかったくせに」

「なにか言ったか」

 じろりと睨むロッサに、ブルーもにらみ返す。

「ああん?」

「はっ?」

 その間にハクが割って入る。

 二体の火花散らす視線を受け止めつつ、ハクがアキラに声をかけた。

「すぐには無理だろうが」

 迎えに行くだろうと。

「もちろんだ」

 そう応えたアキラ。

 それをドラゴン三体は、いつの間にか優しい眼差しで見ているのだった。

 ちなみに、ツキとレインは頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドが本来は星間飛行を前提とした機体であることは知っていたが、ドラゴンの登場でそれを言いそびれていただけだ。

 教えたかったと、ツキとレインは残念そうに息を吐き、肩を落とすのだった。

「それじゃ、家に帰ろうぜ」

 そのブルーの言葉に、ドラゴンも含めて皆で頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドへと向かうのだった。


仰天号(アメイジング) 機体上面

 離陸していく頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドを、魔王であるオベロンとフレイが砂漠に横たわる仰天号(アメイジング)の機体上部に立って見送っていた。

 そこに、役目を終えたディーチウが姿を現した。エンは共和国艦隊へと戻ったのか、姿を現せない。

 しばらく魔力を噴射して、瞬く間に空の向こうへと消え去った頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドのその行く先を眺めていた。

「オベロン様、いかがいたしましょう?」

 そのディーチウの言葉に、驚き呆れたようにオベロンがディーチウに視線を向ける。

「兵を養い、軍を鍛える」

「続けますか?」

「もちろんだ。この星の生命は未だに弱い。守られるだけでは駄目だ、自らが守らなくてはな」

 そのオベロンの言葉を聞いて、ディーチウとフレイは了承の意として頭を下げた。

 それを見ながら、オベロンは呆れたように言葉を吐く。

「ニアがなんだって、死ににくいようにって魔力なんてものを纏わせたのか。そんな意味も理解出来ないのかね、この星の俺たち生命達は」

 俺も大して変わりがないがと続けて、改めてため息をつくと、ディーチウとフレイへ支配地へ戻ると告げる。

「どうやって?」

 そう問い返すディーチウに、むっと言葉に詰まるオベロン。

 仰天号(アメイジング)は航行能力を失っているのだった。


わんわん:「どう見たって、空間仕様じゃねーか」

社畜男:「ロケットって知ってる?」

わんわん:「水平発着型往還機って知ってる?」

社畜男:「…………って、何でそんなの知ってんだよ!」

わんわん:「ひ・み・つ」

ネタ元は当然あの人ですね。

意外と読書家だったようで。


次回、明日中の投稿になります。

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