表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第10章 I Just Called to Say I Love You
200/219

10-15

引き続き、

第10章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

頂天号トップ・オブ・ザ・ワールド 操縦室

 先ずはその威力に驚き、放った側である頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの操縦室は静まり返り、いや否、リーネだけが不満げな声を上げていた。

「最小の出力だと、あんまり良くないなぁ」

 アキラは釘付けになっていた、前方の円盤の惨状を映した映像から、機械仕掛けのように、かくかくとした動きで首を回してリーネに視線を向けた。

「あれで最小出力だと?」

「アキラが、威力は最小にしてくれって言うから」

 リーネはやはり不満そうだ。

 慌てたアキラが、首を回して後方に座るクオークを見るが、リーネの言うとおりと頷きを返す。

「最大威力で撃っていた時の予測は?」

「多分だけど、円盤全部が蒸発していたと思う」

 円盤後方の陸地とかに影響が出るから、お薦めしないとリーネが告げた。

 アキラは自分が手にしたその装備の威力に、今度は畏れではなく恐怖を感じる。そして、最小威力で放った自分を褒めてやりたいとも思う。

「敵、隠蔽されます。かなり高度な魔術を使用しています」

 アキラとリーネとの会話には加わらず、敵である円盤を観測していたツキが、その変化を報告する。

 前方の映像に、改めて視線をやったアキラは、その中で円盤達の姿が移動しながら薄れ、見えなくなることを確認した。

「ただの隠蔽ではないです。光り、魔術、全てのものから逃れる魔術行使ね」

 ツキが、自分の計器盤を使用し、その結果を伝えてくる。

 消え去る前の円盤達は移動を開始していたが、頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドから遠ざかる方向であったために、ツキは逃走を図る模様と続けた。

「追いますか?」

 当てずっぽうになりますがとレインが問いかけてくる。

「いや、無駄になると思うから、止めておこう」

「魔王艦隊はどうします」

「攻撃も救出もしない」

 救出などは、魔王の自己責任で勝手にしてもらうおうとアキラが告げると、レインがそれでは帰投しますかと尋ねてきたので、頷きを返した。

 そして、アキラは自分の放った主砲について、詳しく話しを聞こうと、リーネに視線を向けた時、それを見た。

 リーネの身体が薄れていく。

「リーネ!」

 その叫びの大きさに、何事かと操縦室にいた者全員ばかりでなく、後方の部屋に下がっていたスノウとノーミーまでが操縦室にやってくる。

「リーネの姿が消えていく!」

 リーネの様子に気づき、驚きのあまりにスノウが口に両手を当てて言葉を放つ。眼は見開き、消えゆくリーネを見ていた。

 スノウの慌て高ぶる感情を抑えるように、眼を濡らしたままのノーミーが、その身体を脇から抱きしめる。

「……お別れなんだ」

 ぽつりとノーミーが呟いた。

 更にノーミーは言葉を続けていたが、それ以上は聞きもせずに、アキラは席を立ち上がり、リーネのもとに駆け寄ろうとするが、それを阻んだのはツキだった。

 背後から羽交い締めにされたアキラは放せと叫ぶ。力任せに逃れる事も出来たが、その時にはツキに怪我を負わせるかもしれない。そう考える余裕はまだアキラにはあった。

「本来の役割を果たすためなのです」

「役割、なんだそれ!」

「ダークに残されたもの。それの先頭に立つのがリーネの役割なのです」

 ダークと呼称される黒い月。

 しかし、アキラはそこに何があるのかは知ることもないが、ただそこへとリーネが行く様を見ているだけでいられるはずもない。

 薄れていくリーネの背に、大きな大きな獣の黒い翼が広がった。

 ばさりと羽根を一振り、そしてリーネは席から立ち上がる。

 足が床から離れた。

 アキラは、羽交い締めるツキの手を取り、そっと引き剥がすと、ゆっくりとリーネに近づく。

 リーネはアキラを見て、赤い手袋に包まれたその手を差し出した。

 (いだ)くように、その手をとるアキラ。

「スプライトとスピリットに砲の制御は教えておいたから」

「今はそんな話しはいい!」

「大事なことだよ。必ず、アキラには必要になるものだから」

 握る手の感覚が薄れていく。リーネが消えていく感覚に恐怖を抱くアキラ。

 いや、何か大事なものが失われていく喪失感。

「まだ、俺は大事なことを伝えていない……」

「いいよ、分かってるから」

 その時、リーネとアキラを見ていたレインが、ふと気づいて外の映像を見た。

「ダークが……」

 それは昼には昇らない月。

 砂漠が作る地平線から、真っ黒な月が姿を現していく。

 それはまるで、リーネを迎えに来たが如きの光景。

 レインの言葉に、映像に目を向けてしまったアキラの顎に手が添えられる。

 暖かな感触。

 再びの口づけ。

 静かに浮き上がるリーネが、アキラとの距離を作る。

 アキラはリーネの身体を抱きしめようと手を伸ばす。

 だが、にこりとリーネが笑う。

 光りが生まれて操縦室を満たすが、それはすぐにリーネの席の上へと集積し、消え去った。

 そして、リーネの姿が消えていた。

「沈んでいく……」

 それはレインの言葉。

 映像には、地平線へと沈む黒い月があった。

 何気なくダークを見ていたレインだが、その姿に気づく。

「ドラゴンです!」

 映像の端を見え隠れしていた姿、それはドラゴンであった。

 ツキは自分の席へと戻り、前方を映す映像を、上方へと切り替えた。

 その映像には、頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドよりも上の高度で、ドラゴン二体が旋回をしていた。


黒い衛星?

衛星を回る衛星?

気にしないでください。

独り言です。


次回、明日中の投稿になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ