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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第10章 I Just Called to Say I Love You
199/219

10-14

引き続き、

第10章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

 魔方陣を描いているのは、この機体そのもので、使用する魔力は頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドから供給されるから、その供給部分に干渉すれば何とかなると、そこで言葉を切ったリーネがクオークを見る。

「出来るよね」

「今理解した。施錠されていたフォルダが開いた」

 その内容を一瞬でデータを読み込んだクオークだが、感情がないが故に淡々と語った。

「この頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドそのものが疑似精霊(イミテーション)であることを理解した。精霊への呼びかけをリーネがすれば可能だ」

 その開示された内容に、慌ててツキがエーテル炉のフォルダを開く。

「……本当だわ」

 事実であれば、とんでもないことである。精霊は精霊が生み出すものであるが、この頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの出自は異なり、人の手により生み出されたというのだ。

「クソ爺が、とんでもないことを……」

「だから、エーテル炉が知性を獲得する事を阻んだのね」

 顔を歪めるアキラに、悲しげなツキを見て、クオークが口を開く。

「何を悲しむ。なぜ友が増えて喜ばない」

「どういうことだ」

「戦闘中だ、簡単に言う」

 クオークが語るには、エーテル炉が知性を獲得しても、それは孤独で狂った疑似生命(イミテーション)が生まれるだけだ。それはアモンの実験結果がフォルダの内部に納められていた。だから、アモンは知性の獲得を阻んで、制御可能なエーテル炉としてこの頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドに組み込んだのだと。疑似精霊(イミテーション)として。生命ではなく、精霊として。

 そして、そのために頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドに組み込まれているエーテル炉は他とは違うのだと。

「生命体、特に炭素系の生命体には非情に感じるかもしれないが、我々ケイ素系の生命体には理解出来る手法だ。私とて、長き時間を独りで宇宙空間で過ごした身だ」言葉を区切り皆を見回す「それでそもそも、なぜ残滓、いや知性の萌芽を残していると思う」

 最後はクオークからツキへの問いかけ。

「まさか、時間をかけて……。私と一緒……」

「ツキはいきなり知性を獲得したようだが、そのために大きな犠牲、いや供物が払われているはずだ」

 ツキは自分から一度としてツクモガミだとは言ってはいない。ツクモガミの性質を持ちつつも、その出自が不可解であったことを自覚していたからだ。

 精霊から生み出された、精霊にあらざる者、生命にあらざる者。それがツキノナミダだった。

 クオークの言葉に、ツキは自分の目に触れた。

 両の目蓋から涙の雫が落ちていく。

「……そうだったの、御身が、シルバーが」

 嗚咽の中に、感謝をと小さく言葉を零す。

「さて、私としても、以前にレインと一緒にいた時間が有効に使えそうだ。これは喜ばしいのだろう?」

 何か間違っているかと首を傾げる、白くて大きな猫。

 恐らくは、それはクオークの演技。だが、張り詰めていた空気が緩んだのは確かだ。

「皆さん、戦闘中ですよ!私だけ頑張ってますけど?」

 たった一人で頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの回避行動を取っている、戦闘行為を繰り広げているレインが叫んだ。

 ツキが慌てて計器盤を見る。

 頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドは速度を生かして、包囲されぬように機動を繰り広げていたのか、今は後方から円盤六つが光線を放ちつつ追走している状態だ。

「反転、主砲を使う。旋回はするな」

「分かりました。後退飛行に移ります」

 アキラの言葉に、レインは頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの重心位置を中心にして、進行方向はそのままに、機体だけを後方へと向ける。飛行体としてはとんでもない状態であるが、空力ではなく、魔力の噴射によって飛ぶからこそ可能な姿勢制御であった。

「主砲準備」

 アキラは初めて使用する主砲の威力を危惧して、リーネに言葉をかける。

「最初は最小の威力に設定してくれ」

「分かった。魔力供給に干渉してクオーク」

「発射が可能なだけの魔力を供給する」

 それに頷き返したリーネ。

魔力室(チャンバー)に魔力装填確認。いつでも撃てるよ」

 副砲に挟まれた主砲のトリガーをアキラは握り込んだ。

「太い光線に設定してあるから、緩めの照準で大丈夫。落ち着いて撃ってアキラ」

 初めての主砲発射に、身体をこわばらせていたアキラだが、リーネの言葉で力が抜けた。

 円盤単体を狙うのでは、六つの集団の中心に照準を置く。

「発射!」

 アキラの指がトリガーを引いた。


????円盤 内部

 パークヒルの立つ操縦室では喧噪に包まれていた。

 頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドが後退飛行しているからではない。そんなものは、この円盤を考えればあり得る話しに過ぎない。

 驚きはその頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの機首にあった。

「魔術行使の反応、増大止まらないぞ」

「シールドを強化して防げ!」

 その言葉に、確かに六つの円盤のシールドは強化された。

 頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの機首、魔方陣で作られた砲身、砲口が光り輝くとともに、光線が放たれた。

 光線は円盤の隙間を通り抜けた。

 円盤に乗る者は外れたと胸をなで下ろしたが、警告音が操縦室で鳴り響き、またもや驚きの表情を浮かべた。

「……外殻の一部が損傷。もぎ取っていったのか」

 頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの放った光線は円盤をすり抜けて通過していったかのように見えた。しかし、光線が僅かにかすった部分がシールドと船殻を破壊しているのが、映像を通して確認できる。

 三つの円盤に被害が生じていた。

 乗員に被害は出ていないものの、三つの円盤が外殻の一部を失い、航行は可能だが、戦闘など出来る状態ではなかった。

「どうする。他の機から問い合わせがきているぞ。今回は貴様が主導したものだぞ。撤退は貴様でないと発令出来ん!」」

 ペレグリンが振り返って、パークヒルに叫ぶ。

 震える肩を隠しもせず、拳を握ったパークヒルが応えた。

「撤退だ。シールドを透過擬装へ……」

「分かった……」

 恐らくは屈辱で全身を震わせているのであろう。ペレグリンは声をかけようと口を開いたが、果たせずにはいた。

 考える。

 これでパークヒルが失脚しなければ良いがと。


コズミックガールしかし胸はない:「だーかーらー、戦闘中だって、言ってんでしょ!」

いつも、君には苦労かけるね。


次回、明日中の投稿になります。

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