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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第10章 I Just Called to Say I Love You
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10-7

引き続き、

第10章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

????円盤 内部

 頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドと対峙していた円盤は、仲間達の隊列へと戻っていた。もちろん、攻撃を諦めた訳ではない。一時、間合いを外すためである。

「再度の攻撃のため、炉の調整を急げ」

 操縦室と思しき空間の中央に立つ者が命じ、先ほど会話を交わしていた者が、計器盤のあちらこちらをいじり始めていた。

 他の円盤が共和国艦隊への攻撃を止め、移動を開始して追随するのに気づいた、その中央に立つ者がつぶやいた。

「先に、魔王の船をやることにしたのか……」

 あのシールドでは、その方が賢明か。振動雷撃線はこの機体しか放てぬしと続ける。

 忌々しいことに、他の機体の炉では、振動雷撃線を放つほどに炉が強化出来なかったのだ。

「我らが星であればな……」

 そう愚痴を吐きもするが、それはそれとして、気持ちを切り替えることにする。

「先ずは魔王の船、破壊されているとは言え、さらに粉々にしてくれる」

 前方の映像に、進路に割り込もうとする仰天号(アメイジング)の機体があった。

 魔力弾を放ちつつ、円盤達の進路を妨害しようと試みるものの、それは空しく円盤の外壁に弾かれる。

 まるで、押しのけるようにして、六つの円盤は仰天号(アメイジング)の攻撃を受けつつも、魔王艦隊の上空へとたどり着いた。

 機首を翻し、仰天号(アメイジング)が向かってくるが、先ほどまで、共和国艦隊に向けられていた光の柱が、今度は魔王の艦隊に向けられようとしていた。


魔王艦隊旗艦カルタゴ 艦橋

 総員退艦の命を発し、各所に残っている者がいないかを探しに出ていたカルタゴの艦長が艦橋に戻ってきた。

 すでに、司令部を構成する司令官、幕僚達は退艦させており、後退に使用出来そうなイリュリアへと移送はすませて司令官旗も移した。あとは艦長の退艦のために、下層で待つ者達と合流するだけだ。

 だが、艦長としての最後の役割として、艦橋に戻ったカルタゴ艦長が見たのは、メイドの姿であった。

 艦を預かる者として、オベロンへの邸宅へと報告に参上する事もあり、夕食を進められて、恐縮しつつも魔王と同席をしたことがあり、そのために艦長はメイドを知っていた。

 メイドは天井を見上げていた。

 その一方の手には舵輪に置かれ、もう一方の手は胸に添えられている。

 背は真っ直ぐと。

 その眼は濡れており、滴る雫を拭おうともしていなかった。

 差し込む陽光と燃え上がる炎に照らされ、終わりを迎えようとしている暗い艦橋の内部であったが、黒と白を基調とした、奇をてらわない正調のメイド服に身を包んだ、その美しい姿が浮かび上がる様に艦長は息を飲み、この状況にあっても一言呟くのが精一杯であった。

「ディーチウ様……」

 いつもの無表情のままに、しかし眼は濡らしたままに視線を艦長に向けるディーチウ。

「早く退艦を。後は任せてください」

「しかし……」

「あなた達が無事でなくては、次をどうするのですか」

 退艦を促すディーチウの心情が艦長にはよく分かる。

 魔王の艦隊、軍を再建するのは誰であろうと。

 だから艦長は、一言残す。

「お任せ申します」そしてふかぶかと一礼「失礼!」

 そして、艦長は堂々たる態度で艦橋から出て行く。

 見送ったディーチウは、小さく頷いて再び天井を見上げる。その時には魔王の艦隊はディーチウのシールドに包まれ、放たれた光の柱を受け止めているのだった。

 せめて、残りの艦が撤退出来るだけの時間を稼がねばならない。

「しかし厳しいわね」

 その手応えに、少しだけ、ディーチウの眉がひそめられるが、次の瞬間、その片方の眉が上がることになった。

 一重に張られたシールドが二重に変化した。

 すぐに、天井に向けていた視線が下ろされた。

「あらあら、びっくりした?」

「驚きもするわ」

 それを聞いて、弾けるような笑顔を浮かべるエン。しかし、その笑顔にもかかわらずエンの眼も濡れている。

「敵対していたのではないですか?」

「まぁー、しばらくはそうですね」

 そのエンの答えにディーチウは珍しく苦笑を浮かべる。

「本当に、馬鹿親父に、馬鹿息子なんですから」

「あらあら、それどっち?」

「上の方です、もちろん」

 その答えに、エンがそうだよねー。孫の方は可愛いもんねーと返す。ディーチウも黙ってこくりと頷く。

「とりあえず、助勢は感謝いたします」

「いえいえ、貸しということで」

 それを聞いたディーチウは、やはりとばかりにため息をつくのだった。


仰天号(アメイジング) 操縦室

 操縦席に残るのは、オベロンとフレイのみであった。機関を見る要員であるディーチウをカルタゴに送り出したために、今はフレイがその席に座っていた。

 ただ、フレイは人であり、エルフであった。一通りディーチウの代わりとなるべく、訓練は受けてはいたものの、ディーチウと比べては万全であろうはずもない。

 また、射手を失い、操縦と同時にオベロンが行うのも心許ない。

「さて行くぞ!」

「準備完了です」

 フレイが、唾を飲み込む音が聞こえそうなほど緊張しつつ、答えを返す。

 仰天号(アメイジング)の機体を、金色のシールドが包む。そして、それが機首へと集約されて一枚の盾となった。

「ふん、久々にシールドを張ったが、大丈夫そうだな」

 そう言って、操縦席から振り返ったオベロンはフレイを見た。

「機関全開!」

「機関、余剰魔力まで推力に回します!」

「魔力弾が駄目でもなー、体当たりがあるんだよ!」

 そう言って、オベロンは推力を全開にするのだった。


あらあら、まあまあ:「可愛いですよね~」

メイド:「同意いたします」

あらあら、まあまあ:「魔王がいるのに、大丈夫?」

メイド:「……あれ、可愛いですか?」

あらあら、まあまあ:「確かに」

馬鹿さかげんが、

かわいいっちゃー、かわいいのだが。


次回、明日中の投稿になります。

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