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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第10章 I Just Called to Say I Love You
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10-4

引き続き、

第10章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

????円盤 内部

 赤茶けたローブを着た者が、円盤内部の操縦室と思しき空間の中央で仁王立ち、ワナワナと震えていた。顔はフードで隠れている為に、その表情はうかがえないが、その発する声には怒気が多く含まれている。

「何故光線が当たらん!光速で放たれているのだぞ!」

「どうやら発射の瞬間に魔力を察知して、狙いを読んでいるようだ」

 計器盤の前に座っている、同じく赤茶けたローブの者の内の一人が応えを返す。

 それに、仁王立つ者が喚くように返した。

「ならば、先ほど命中した振動雷撃線を使え!」

「あれは、炉への負荷が大きい。先ほど使いすぎた」

「一撃だけでも放てんのか!」

 その言葉を受けた者が、計器盤をしばらくいじっていた。

 僅かに静寂が広がるが、その間にも頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドへの攻撃は続けられており、高速で飛行をしていた。

 計器盤をいじっていた者が、くるりと席を回して、仁王立つ者を見た。

「一撃で良いのだな?」

 それは確認ではなく、何か良くない意味を含んでいるようで、仁王立つ者は答えに詰まる。

「どうだ、一撃だけならば良いぞ」

 繰り返され、答えを求められる。

「その一撃で破壊は出来るのか?」

「分からん。あの流線型の機体には謎が多い。船殻が何で出来ているのかすら分からん。先に命中した時の変化も、外一枚の皮膜を剥がせたに過ぎん」

 その皮膜も、恐らくは塗装であり、あの呪紋を隠すためであったのだろうと続ける。あのような仕掛けが分かっただけでも、一つの成果ではないかと。

 そして、一言。

「間違いなく、あの機体は化け物だ」

「ならばこそ、ここで破壊しておくべきだ」

 その言葉に、計器盤の前に座る者がため息をついた。

「だから、それが出来るかどうかは分からんのだ」

「炉への負荷は?」

 一撃ならば耐えようと、答えが返る。

 会話を交わすうちに、冷静を取り戻したのか、仁王立つ者が腕を組んで、ほんの僅かに考える。

 計器盤の前の者も、ここに至っては答えを促すことはない。

「振動雷撃線を一撃、一時後方に下がり、その後炉の調整。それで再度の攻撃は?」

「……賭けにはなるが?」

「それで行こう。更には一工夫を加えてな」

 空間の中央で仁王立つ者が、フードの下でにやりと笑う雰囲気が漂い、それに引かれるかのように、計器盤の前の男もフードの下で笑っているのだろう。

 決断が成された。

「あれからは尊き残されし物(フェレトリー)の気配……。壊れてくれるなよ」


頂天号トップ・オブ・ザ・ワールド 操縦席

 以前として、後方の円盤からの攻撃は止まない。

 攻撃を受け続けている共和国艦隊があるため、その戦域から外れる事も出来ず、レインは巧みに頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドを戦域周辺を飛ぶように機動していた。その共和国艦隊の上空では、仰天号(アメイジング)が円盤に攻撃を行っているが、弾かれてしまって有効とは言えないようだ。

 そして、円盤から逃げ回っているための苛立ちとは別に、もう一つレインの頭痛の種があった。

 まさか味方が、との思いがレインにはあった。

「あーし、感激!これがお兄ちゃんのために作られた機体なんだね!」

 自分の契約者であるスノウが、背中の羽をゆらゆらとさせながら、一所に留まって興味深げに周囲を見回すのに比べて、ノーミーは自由奔放に操縦室内を飛び回り、一度などは、もっとも前方正面に用意されている席に座りかけて、機体を回避機動させているレインに叱責されたほどであった。

「もうっ、お兄ちゃんはあーしが座ったくらいじゃ、怒んないって」

「そんな問題ではないんです!機長席は機長のものなのです!」

 器用にも、円盤から放たれた光線をバレルを打ちながら回避しつつ、レインが反論する。ノーミーも、言い返しながらも、二度とは機長席には触れようとはせず、隣のリーネの背もたれに寄りかかり、キャーキャー言いながらリーネと一緒に計器盤をいじくっていた。

 そんな様子に、どう見ても回避起動中の緊迫しているはずの機内とは思えず、ツキがため息をつくが、注意しても状況は変わるはずもないので、放置することにする。

 唯一、同情するかのように、ツキの膝にクオーツの前脚が乗せられる。

 視線をクオーツに向けたツキが、静かにありがとうと告げたが、その瞬間に、クオーツの表情が険しくなった。猫の顔であるはずだが、ツキにもそれが分かるほどであった。

「エーテル炉のテキストフォルダに触るな」

「えー、何で、いいじゃん」

 どうやら、ノーミーは無断で計器盤を通じて、エーテル炉に自身を接続させていたようだ。

「馬鹿者、いかに大精霊とて、それは機密だ!」

 感情が無いはずのクオーツだが、自分なりに模倣しているのだろう。その怒りを込めた叱責には、さすがに堪えたのか、ノーミーもはーいと返事をして、接続を絶った。

「そこまでの秘匿が必要かしら?」

 クオーツの耳にツキが口を寄せて、声を潜めて尋ねる。

「テキストフォルダに、カギをされた付属フォルダがあるだろう」

 そのフォルダの内部は、ツキも先ほど見ており、一つどうしても開ける事が出来ない付属フォルダがある事を知っていた。

 頷き返すツキに、クオーツが言葉を続けた。

「今は時では無いような気がするのだ……」

「なぜ?」

「そう、何故か私は、このフォルダに触れることに規制を感じる」

 クオーツの言葉を聞き、一瞬考え込むツキだが、何かに思い当たり、クオーツの頭を撫でる。

「どうやら、今は必要ないようよ?」

「そうか、君がそう言うのなら、そうなのだろう」

 恐らくは、フォルダを開くには何かの現象が必要なのだろうなと言うクオーツに、ツキが頷き返すのだった。

 そして、再びクオーツの頭を撫でてやろうとしたツキだが、その手が止まる。

「稲妻が来ます」

「はい、姉上!」

 ツキの叫びに、言葉を返すが、すでに察知していたレインが素早く回避をとろうとするが、後方の円盤から放たれた稲妻のような光線は不規則な軌道を描いて、頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの船殻を舐め回すかのようにして命中し続ける。

「船殻が振動している?」

 頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの船殻が持ちこたえるであろうが、やはり、一度は被膜を剥ぐという被害を与えた攻撃だ。慢心は捨てて、ツキが慎重に船殻の状態を伺い、それが振動している気づく。

 電磁波で分子が振動して、その摩擦で熱を発生するのは、良く知られる現象だとアキラがいれば言ってはいるだろうが、船殻は単一分子ではあるが、対消滅の対策に複数の分子を層にしている事が徒となった。

「緩く重ねられた船殻がこすり合わされ……」

 先の稲妻からは、すぐに離脱出来たが、この度はレインがいかに逃れようとしても、稲妻は船殻を舐め回し続ける。

 レインが奇妙なベクトルを感じて叫んだ。

「牽引されている!」

 どうやら、敵の円盤は、頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドがスノウ達を回収するのに使用した牽引の魔術を見て、すぐさま自分達の攻撃に取り入れたようだ。リーネがレインの言葉に、すぐさま術式を読み取り、眉を潜める。

「駄目、術式を解除するのに、少し時間がかかる」

 そう言いながらも、リーネは精霊達に術式への介入を呼びかける。

「……温度が上がっていませんか?」

 一番生身に近い、スノウがぽつりと呟く。それに素早く反応したのが、ノーミーだ。

 スノウの全身を断熱のシールドで覆いつつ、顔を伏せたノーミーは言葉を上げた。

「離脱しないと、不味いよね」

「その通りだ。機内はもとより、エーテル炉にどのような影響がでるか」

 しかし、クオーツの言葉を受けて、ツキが声を発した。

「船殻の呪紋、消えていきます!」

 それを聞いたレインが、まなじりを上げ、リーネも表情が険しくなった。

「一度ならず、二度までも!」

妹狼:「暑いです」

J○?もどき:「薄着だけど脱げば?」

妹狼:「脱ぐのはやぶさかではないですが、キャラ被りますよ?」

J○?もどき:「……やっぱ駄目」

うむ、そうだね!


次回、明日中の投稿になります。

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