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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第10章 I Just Called to Say I Love You
187/219

10-2

引き続き、

第10章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

F-3管制機 操縦室

 距離を取ることによって、円盤からの攻撃から逃れる事が出来たスノウとノーミーが乗る機体であったが、遠見の魔術を使用しても、円盤の表面が上手く見る事が出来なかった。

「なーんかさー、変な擬装魔術使ってない?」

 ノーミーの言葉の前に、すでにスノウは同様の事を気づいていたが、更にもう一歩踏み込んで円盤達を見ていた。

「擬装、だけではないようです」

 そのスノウの言葉に、ほうと感嘆符を上げるノーミー。

 いかに軽く見えるとはいえ、ノーミーは大精霊であるのだ。けっして口にはしないものの、人や獣人の能力は軽く凌駕している自負はある。見下しているわけでは無く、純粋な力の比較としてだ。

 しかし、その反面、自分の契約した者が優れた能力を見せることを、ノーミーは嬉しくも感じていた。

 ノーミーから答えが無いことを、先を促す合図だと感じたスノウが続けた。

「シールドの役割もしているかも?」

「えーとさー、シールドって普通距離をとってさー、張らない?」

 もっともだと、前席に座るノーミーには見えずとも、スノウはその言葉に頷く。

 魔術師の常識として、シールドは少しであっても距離を取って張るべきである。それは、何らかの力を受けたシールドはたわんだりすることによって、守るべき対象に物理的なダメージを与えてしまうことを避けるためだ。硬度を上げるよりも、柔構造で受け止める弊害であったが。

 極めて常識的な魔術師であるスノウには、円盤が発動させている魔術を理解する事が出来ない。そして、スノウはシールドを空中に浮かぶ足場にしてしまうようなリーネであれば、どう判断するであろうかと、少し思う。

「近づいて、観察しましょう」

 スノウの言葉に、ノーミーは不満の声を上げる。

「えー、また攻撃受けるよ」

「大丈夫、ノーミーのシールドがあれば」

 信じていますよと言うスノウに、少しノーミーの頬が赤く染まる。

 信頼が心地よい。

「よーし、スノウのために頑張っちゃう」

 機体を滑らせ、ノーミーは円盤へと機首を向ける。もちろん、しっかりとシールドを張って。

 そして、傾く機体の中で、今度はスノウの頬が赤くなった。


 気づかれないはずなどない。

 この大空に遮蔽など無いのだから。

 地上戦に慣れたスノウにとっては、このすべてをさらけ出しているような感覚が恐ろしい。

 近づく際に、一瞬だけ隠蔽の魔術をかける事を考えるが、スノウはそれを振り払った。恐らく、感づかれる、そんな直感があった。

 共和国艦隊に、光の柱を突き立てている四個の円盤の周辺を回っていた二個の内の一個が、近づくスノウ達の機体に気づいたのか、機動を変える。

 どうしても、円盤という形状から、機首というものが無いために機動が読みがたい。

 近づく円盤を避けるために、ノーミーは機体を横に滑らせ、機首の向きを変えて進行方向を変化させる。

 しかし、距離があるにも関わらず、円盤は細い光線を放つ。

 もちろん、それに当たるノーミーではない。

 機体を翻して避ける。恐らく円盤にも当てるつもりもない、ただ接近を嫌っての嫌がらせ(ハラスメント)攻撃であろう。

 ノーミーが機体を操って、攻撃を避けている間に、スノウはじっと目を凝らし、遠見の魔術で円盤を観察していた。

「……精霊の魔術であるのは分かるけれど、術式が色々違うような」

「そうだよ、系統が違う」

「系統?」

 機体を操って回避ばかりでなく、ノーミーも観察はしており、その結果をスノウに伝える。

「あーし達と違うってこと!」

 その言葉と共に、機体が大きく跳ね上がった。

 今までとは違う、細い光線ではなく、稲妻のような光が円盤から放たれた。

「あいつら、本気になった!」

「距離をとって!」

 そのスノウの言葉に合わせたかのように、ノーミーのシールドが稲妻を受けた。

 一瞬にしてシールドが無くなるが、驚きの声をノーミーが上げる。

「シールドが溶けた!」

 スノウには、その言葉が理解出来なかったが、異常な事が起きている事は分かった。

「とにかく距離を!」

「やってる!」

 いかにノーミーとて、直線に走る光線とは違って、不規則な軌跡を描く稲妻は避けるのが難しいようだ。

 スノウは代わりにシールドを張り、ノーミーが操縦に専念出来るようにするが、翼に稲妻が触れる。

 激しい破壊音と共に、右側の翼が破壊され、構造物が地へと落ちていく。

『被弾、被弾しました!』

 相手を選ばぬ通話、全開放でスノウは叫んだ。そして、応えを得た。

『もうちょっと頑張って。今行く!』


頂天号トップ・オブ・ザ・ワールド 操縦室

 すべての衝撃や重力加速の影響を打ち消している頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの機体内で、加速の感覚を得るのは難しいが、その時は、一瞬機体が前方へと向けて放り出されるような感覚が得られた。

『もうちょっと頑張って。今行く!』

 スノウからの念話は、もちろん頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドに乗る者すべてに伝わり、全員が理解した。

 レインが機体を加速する。ツキが全周警戒を始め、クオーツが機関を最大稼働させる。そして、リーネはいつでも魔術が発動出来るよう、精霊に呼びかけを始めた。

 それは波に乗るかのような、いや、この時は現実、頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドは薄いエーテルの波に乗っているかのようだ。

 機首が僅かに波に抵抗するかのように左右に振られ、波の濃淡を飛び越える時の浮遊感。

 レインは頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの機体を、スノウの機体と円盤の間に滑り込ませた。

 円盤の放つ稲妻が頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドに襲いかかる。

 船殻全体を舐めるかのように稲妻は暴れ回る。そして、露わになる頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドの外壁。

 それは魔方陣を崩して貼り付けたような呪紋が機体に書かれている。

「船殻に異常!避けて!」

 そのツキの言葉に、レインの表情が変わる。

 回避の行動をとりつつ、レインが叫んだ。

「主様の機体に傷を付けたか!」

 まなじりが上がり、普段ののんびりとした表情は消え失せていた。

 だがそれも一瞬。

「落ち着きなさい!」

 そのツキの言葉に、はっとしたかのように、レインの表情が元に戻る。

「スノウ達の救援を」

「はい、姉上……」

 敬愛するツキに叱責され、しょぼんとした表情になったレインは、念話を使ってレインと会話を交わす。レインの乗る機体は、いかに大精霊が操縦していようが、構造体の一部が破壊されているため、飛行が不安定であった。

『そちらに頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドを寄せますから、機体を捨ててこちらに移乗して』

 そのレインの言葉に、すぐに応えは帰ってこなかった。スノウが迷いを見せている。

 スノウは機体を捨てることに迷いを感じていた。

 F-3は共和国の極秘兵器であることも一因であったが、何よりもスノウはこの機体を共和国から託されている思いが強かった。そう易々と捨てる気にはなれなかったのだ。更には、戦闘中の移乗には危険が伴う。この砂漠に因縁を持つノーミーに無理はさせたくは無かった。

 だから、念話を傍受していたツキが背中を押す。

『機体は後ほど回収出来ます』チクリと胸が痛む『移乗についても、こちらが必ず無傷で(すく)い上げますから』

 そして、振り返っていたレインに、ツキは出来るだろうと視線で言葉を送る。

 レインはツキの期待に応えるため、表情を引き締め、もちろんと頷いた。


幼女もどき:「ああ、怪光線が!」

しー。


次回、明日中の投稿になります。

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