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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第10章 I Just Called to Say I Love You
186/219

10-1

新しく第10章を始めさせていただきます。

どうか、よろしくお願いいたします。

航空母艦DH183 艦橋

 敵艦隊直上にいるスノウからの念話によって、艦橋は騒然となっていた

『分遣艦隊、謎の第三勢力より攻撃されました!現在、シールドが持ちこたえていますが、魔術師由来のシールドでは長くは持ちません!』

 回避、回避してと叫ぶ言葉はスノウが念話を繋げたまま、ノーミーに命じた言葉だろう。どうやら、スノウ達の機体も攻撃を受けているようだ。

 そして、それを聞いたシオダが先ずしたことは、艦橋にいたリータとディーネを見る事だった。

 その意を理解したリータが口を開く。

「指揮艦はDG173だったな?」

「その通りです」

 シオダの答えを聞き、リータとディーネが顔を見合わせてうなずき合うと、すぐにその姿を消した。

 他国の大精霊に、頼むわけにもいかなかったが、意を汲んでくれたのであろうと、シオダはひとまずは胸をなで下ろすが、すぐに顔を引き締めて、自ら成さねばならぬことに取りかかる。

「艦隊前進、飛行隊の回収を一刻も早く始める。第二次攻撃の用意始め」

 それを聞いて耳を疑う幕僚達。

 この航空母艦を含む艦隊が前進するということは、戦いの場に近づく事になる。それはすなわち、脆弱な航空母艦を敵の攻撃対象にするということだ。

「お止めください!今、イフリータ様とウンディーネ様が分遣艦隊に向かわれました。分遣艦隊は必ず戻ります!それを待っても……」

「聞こえなかったか、前進だ」そして、シオダは残っていたエンに視線を向ける「この艦隊にはどなたが残っておられる?」

 幕僚に問いかけるシオダであったが、その答えとして、エンは優しく微笑んだ。

「私も提督に賛成です。この艦隊は私が守りましょう」

 艦隊の指揮官と、共和国全体が崇めている大精霊が言うのだ。

 意を決したかのように、艦橋の内部では命令が飛び交い、DH183はDH184とE229、E230を従え、前進を始めた。そして、母艦たるDH183とDH184の内部では、戻ってきた飛行隊に再爆装するための準備が開始された。

 艦橋で、エンはそっとシオダに近づく。

「少し強行では?」

「議論を尽くしている場合ではないかと」

「賛成です。分遣艦隊を攻撃しているのは……」

 言葉にするのは不吉だとばかりに、眉を潜めたエンは言葉の途中で口を閉ざすが、シオダは聞かずとも同意だと頷いていた。

 以前、エンより内密にと聞かされた言葉を思い出し。


軽巡洋艦DG173 艦橋

 その姿は突然現れ、攻撃を受けている最中であり、一瞬であったが艦橋内部は騒然となったが、姿を認めて騒ぎはすぐに収まる。一部、反射的に武器を抜いた者もいたが、現れた姿が何者かを知り、あわてて武器は鞘に納められた。

「いい心がけだ」

 叱責を覚悟した武器を抜いた者だが、リータに微笑みかけられ、逆に賞賛されて、どう反応して良いものか、表情をくるくると変えていた。

「シールド、良く耐えていますわね」

 光の柱を支えるシールドに感心の声を上げるディーネ。魔術師由来とは思えないと艦橋で指揮を補佐する魔術師の長に微笑みかけた。

 リータとディーネはさっそく、分遣艦隊を預かるDG173艦長を伴い、窓から上を見た。

「艦隊は陣を解き、各艦独自に乙字で運動させています」

 後方に視線を向ければ、確かにシールドに光線を受け止めながら、各艦は独自に回避運動を行っているようだ。一見、衝突の危険があるようだが、艦は交互に左右に分かれて陣を解いており、余裕を持って回避を行っていた。

 即席で練度の低い艦隊で、単縦陣のままでの回避は無理だと、陣を解いたのは指揮をとるDG173艦長の慧眼と言って良い。

 だが、艦に乗っている魔術師の質と数では、もうすぐ限界に達するであろう。しかも、異様なことに、光線はシールドを破るような物ではなく、浸食するかのような様相であった。

「まかせろ」

 短くリータが口にすると、すぐに艦隊全体を覆うほどのシールドが展開された。さらには、ディーネがその内側に同様のシールドを張り二重の守りとする。

 自ら張ったシールドで光線を受け止め始めたリータだが、驚いたような声を上げた。

「なんだ、この気持ち悪い光線は。中和とか割るとかじゃねーぞ」

 後ろ備えとしてシールドを張っていたディーネが、光を発してシールドにぶつかる光線をじっと見ていたが、やがて気づく。

「これ、魔術の系統が違いますわね」

 そして、リータに注意するように告げてから続ける。

「精霊が違いますわ」

 そして、探るように見上げていたディーネが艦長に叩きつけるように告げた。

 逃げろと。

 瞬間、艦隊を指揮するDG173艦長は声を上げた。

「艦隊、反転。更に密集。シールドの強度を上げていただく!転進だ!」

 国は違えども、大精霊の言葉に艦長はすぐさま従う。ただ、さすがに撤退とは言えず、転進と命令するあたりに意地を感じる事が出来た。

 魔王艦隊に向かっていた艦すべてが、船体を傾ける勢いで転回を始める。幸い、回避行動のために距離をとっていたので、衝突の恐れは無かったが、僅かに集結に手間がかかり、シールドを張る大精霊二体が苦労していた。

「とうとうか」

「ええ、姿を現しやがりましたわ」

 そのディーネの応えに、リータは小さく呟く。

 早く目を覚ましやがれ、坊主と。


頂天号トップ・オブ・ザ・ワールド 操縦室

 艦を貫くかのように見えた光の柱だったが、かろうじてシールドが持ちこたえたようだ。

 前方の映像を見つめていたリーネが、こめかみを押さえつつ顔をしかめて呟いた。

「あの光、すごくいらいらする」

 その言葉が終わると、映像に艦隊すべてを覆うシールドが二重になって張られるのが映し出される。

「恐らくはリータとディーネが来てくれたみたいですね」

「……でも、長い時間はもたないよ」

 ツキの言葉にリーネが応える。何故かは分からないけれどと続けるが、それに静かだったクオーツが応えた。

「魔術の系統が違う。術式が違うとでも言えば良いのか?」

「そう、そんな感じ」

 その会話を耳にしつつ、ツキが目前の操作盤をいじって、前方の映像に光の柱の元を映し出すことに成功した。操作盤の扱いに苦労する様子を見ていたクオーツが、テキストフォルダがあるからと告げると、ツキは感謝の言葉と共に、エーテル炉へ自らを接続した。

 映像には、六個のスープ皿を二枚重ねたような飛行体が写っており、その内の四個から光の柱が発せられ、残りの二個はその周囲を飛び回っていた。

 円盤と言えば良いのか、目立った突起物も開口部もなく、外部はつるりとしており、外周だけがくるくると回転している。光の柱は円盤の動かぬ中心、その底面から直接放たれており、何らかの装置も機構もなかった。

「どうします?」

 その円盤は明らかに共和国艦隊を攻撃をしているのだが、どう判断して良いのかレインが言葉を上げた。

 それを受けて、ツキが片手を顎に当て、目を細めて映像を見つつ答えた。

「共和国艦隊を攻撃している事から、明らかに敵なのですが……」そして一瞬目蓋を閉じた後「仕掛けましょう」

 その言葉とともに、レインは頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドを悍馬が如く機首を円盤に向け、高度ともに速度をあげた。


仰天号(アメイジング) 操縦室

 今まで纏わり付かれるようにしていた頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドが円盤へと向かうことにより、仰天号(アメイジング)は自由を取り戻していた。

 さきほどまで、いらいらとした表情であったオベロンだが、いまは憤怒の表情に、歯を噛み締めてバリバリとした音を立てて前方の円盤の映像を睨み付けている。

「奴ら、来たのか……」

 絞り出すような声。それは応えるディーチウとて同じだ。

「ええ、その通りです」

「だが、早すぎる!」

 オベロンが力任せに目前の計器盤に拳を叩きつけた。外板が少し歪んだ程度で済んだのだが、ディーチウが非難がましく、じろりとオベロンの後頭部へ視線を向ける。

 映像には、円盤へと向けて高度を上げていく頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドが映っていた。

「行くぞ……」

「どちらへ?」

「共和国の艦隊を援護する!」そして舌打ち一つ「早く来やがれ馬鹿息子!」

 いやいや、斬ったあなたが言うなと、ディーチウは内心で呟くが、でもまあ口に出すのは勘弁してあげましょうと、黙って機関を全力に上げるのだった。

 今から始まるのは神話か、それとも英雄譚か。いや滅びの伝承か。以前から聞かされていたとはいえ、フレイは表情をこわばらせ、始まったと呟いて震える指で攻撃の準備を整えるのだった。

「ここに来たこと後悔させてやる。破壊者め!」

 叫ぶオベロンが、スロットルレバーを全開にした。


最近、

名前を間違えます。

幼女もどき:「ぶん殴る!」

会える大精霊:「ぶん殴る!」

だって、一文字しか違わないから……


次回、明日中の投稿になります。

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