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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第9章 LA・LA・LA LOVE SONG
179/219

9-13

引き続き、

第9章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

砂漠 魔王艦隊上空 仰天号(アメイジング)操縦室

 前方に広がる映像は、仰天号(アメイジング)の進行方向ばかりでなく、反転していくE229とE230を映し出していた。

 遠ざかる内の二隻の内、一隻からは黒い煙りが上がっていた。それを射撃手の席から見ていたフレイが口を開く。

「故障、あるいは不具合からの転進でしょうか?」

 そう口にしていながら、ではないだろうなという考えが籠もっており、あくまでもフレイの言葉は確認にすぎない。

「軍港の位置を知りたいのだろう。俺の支配下で優秀な沿岸監視員(コーストウオッチャー)が雇えるはずもなし、共和国暗部の諜報員でも動かすか?」

「対策は充分です」

 自信を込めて、オベロンへ答えを返すディーチウ。

 そうだろうなと頷くが、オベロンはそれを否定する。

「商会の情報でも使うつもりだ。軍事情報と違って、経済情報が主な奴らは経路が違うから、防諜も難しいだろう」

 その言葉に、反論出来ずに、ディーチウが唇を噛んだ。

 軍事情報ならば無理をしてでもという、いわゆる飢餓感が感じられるが、どうしても経済情報となると、ソフトな感覚で来られるために、対応が難しかったのだ。軍事重視の方針が徒となった形だ。

「こちらとしては、艦隊を立て直す時間が取れる。急いで軍港へ向かえ」

「それでは隠蔽軍港の場所を知られてしまいます」

 慌ててオベロンに反論するフレイだが、それを豪快に笑って吹き払うオベロン。

「どっちにしても露呈するんだ。なら、さっさと戻って、艦隊を修理する時間を作れ」そう言いながら、ガラス面の一部に写る三機のF-3を指差し「追尾の欺瞞は続けるみたいだな。茶番につきやってやろう」

 そう言ったオベロンは仰天号(アメイジング)を反転させるべく、操縦桿を捻るのだった。


財団(ファウンデーション) 商都リアルト 会長補佐室

 前線とも言える、帝国からは魔王の撤退が告げられ、戦闘詳報が送られてきた。その内容を見たミュールは驚きを通り越して、呆れもしていた。

 魔王が砂漠船を戦闘専用艦として艦隊を構成し、それに対抗して共和国も艦隊を作り上げていたのだ。

 ここまでは、僅かではあったが、財団(ファウンデーション)の暗部も情報を掴んでいたのだが、飛行体同士の戦闘までは予測できてはいなかった。

 確かに、精霊工学では帝国に、鍛冶では王国に遅れをとっている事は認めるが、その総合力では勝っていると自負していたミュールだ。その現れがこの商都の景観の先進さである。

 それが、下に見ていた共和国に負けるなど、ミュールにとってあってはならないことだ。

 幸い、魔王の先制は防ぎきり、現在は共和国が追撃を仕掛けようとしている。

 連合国部隊と共和国艦隊、そして魔王の戦力。どれも戦闘によって傷ついた状態に有り、今はそれを癒やしている、戦闘の狭間にある凪の時である。

 お互い、この時を狙って戦いを仕掛けたいのが道理。しかし、手負いで手負いに襲いかかるのは危険であった。

 故の自重であった。

 そして、この間を利用して、ミュールは観戦へと出かけようかと考えていた。間違いなく、前線では技術的な革新が始まっている。それを見ておかねばならなかった。共和国艦隊を見れずとも、その一端にふれることは可能であろう。

 幸い、財団(ファウンデーション)は本来の統治者で父親に任せておけば良い。万が一があってもリータが戦線に立っているために、頼ることも可能だ。

 行くべしと、ミュールが腰を上げようと決断した時、連絡が入った。

 財団(ファウンデーション)会長補佐の地位にあっても無視できぬものだ。

 ローダン商会会頭よりのアポイントメントの打診。

 ミュールとしては断るわけにはいかなかった。いや、他の予定を断ってでも会うべき相手であった。

 連絡から後日幾日か立った日、今こうして書類にも手を触れず、机に肘を乗せて両手を組んでミュールは扉を見つめていた。

 ノックの音が聞こえ、ミュールは入るように返事をした。

 開かれた扉から姿を現したのは、ベイタに案内されてきたローダンであった。隙のない身のこなしで、いつもの男装であった。

「ようこそいらっしゃいました」

 にこやかにミュールは立ち上がり、机を回ってソファへとローダンを誘った。ベイトはもてなしの用意をするために、案内をミュールに引き継いで、部屋を出た。

 ローダンにソファを勧めて、ミュールも向かいに座る。

 しばらくは、ベイトが用意した茶を飲みながらの、他愛ない会話を交わす。どちらも経済人、商人を自任しているため、主に交わす内容は景気の動向であったり、作付けの様子であった。

 そして、会話の潮目の変わり時に、ローダンが何気なく話す。

「ところで、対魔王戦の状況は把握していますか」

 実は珍しいことに、アポイントメントの打診の際に、用件をローダンは伝えてこなかった。ただ、商談だとしか言い伝えるだけで、普段であればミュールは断るようなものだ。

 しかし、それは大商会が相手であれば、逆によほどの重大な案件を持ってくるとの意思表示でもあった。どこに聞き耳を立てている者がいるか、用心に越したことはないのだ。この場にも、すでに魔術師があらゆる結界を張っており、現界からは遮断された異界と化していた。

「戦闘詳報は目にしました」

 エリオットとキムボール両名の署名が入った共同のものである事を告げた。逆に国家にあらず、あくまでも一般の商会がどこまで知っているか、ミュールは知りたかった。

 ローダン商会はドラゴンの御用達であるため、一般とは言い難いのだが。

 資金はもちろん、人材についても潤沢であろう。竜の巫女姫が関わりがあろうし、あのアキラまでも商会の一員としているのだ。

「詳報は私も目にしましたし、情報の共有化は出来ていると考えてください」

 そう言われては、ミュールには聞き出す術もない。懸命に頭を働かせるのみ。

 しかし、次の一言に、ミュールの考えは停止した。

守護地(フィールド)に同行してください」

 有無を言わせぬ言葉であった。


砂漠 DH183 搭乗員待機所付き作戦説明報告室

 部屋の前部に設えられた机の上に、猫の姿をしたクオーツがお座りをしており、並べられた椅子には、F-3の前席後席の搭乗員が座っている、どこから見てもシュールな光景があった。

 しかも、DH184からわざわざ砂漠仕様の短艇を使ってやって来た搭乗員もいた。この場に、共和国艦隊のF-3搭乗員がすべて集まったといって良い。

 クオーツの脇には、アキラの側にいたいと抵抗し、引きづられて来たレインと航空隊の指揮者であるテロンが立っている。しきりと愚痴っているレインを、テロンは迷惑そうに横目で見ていた。

 一人の搭乗員が手を上げ、クオーツに指名されて立ち上がった。

 名前と官制、所属を述べてから本文を話し始めた。

「F-3を機動する上で、まずは飛龍との違いに戸惑っています」

 生体である飛龍と、器物であるF-3。扱いが大きく違うのも道理であるが、航空兵力であるのは同じであった。

 飛龍を操る竜騎兵となれば、軍でもエリート中のエリート。そんな高い意識を持った者達から、機種転換と言えども、F-3の搭乗者を募るのは困難を極めた。しかし、反面だが志願してくる者は柔軟な意識をもっていた者が多く、F-3をこれからの航空兵力と見なしていた。

 しかし、それでも竜騎兵の名の通り、空の騎兵である運用思想から抜け出すのは難しかった。戦いの前に、ひとしきりアキラより、その小説や映画などからの知識から、航空戦の様子を聞いていたものの、実際は戸惑うばかりであった。

 しばらく、クオーツと搭乗員達との受け答えがなされ、搭乗員達は外へと出て行った。

 残っているのは、クオーツとレイン。そしてF-3の搭乗者を代表する形でテロンとキラであった。

「どうしても、飛龍経験者は近接戦闘していた時の癖が抜けきれないな」

 やれやれとばかりに頭を抱えるテロン。

 訓練を手探りで行うしかなかった悩みが、ここにきて出ていた。

「いや、今の会話で、問題点が抽出出来た。F-3はしばらく爆撃に専念してほしい」

「そうだな。そうさせて貰う。あの葉巻は頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドにまかせるよ」

 クオーツの提案に、僅かな屈辱を感じながらも、テロンは自分の隊の役割を確認した。

「でも、頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドも副砲しか使えないよ」

「副砲だけで十分だ。主砲は……」

 そこで気配に気づいたクオーツが入り口に視線を向ける。そこには顔を覗かせるスノウの姿があった。

 入るようにクオーツに促されたスノウが、おずおずと言うように中へと入り、全身を現した。背中の羽がふるふると振られていた。納める事が出来ず、羽は放置され続けていた。

「きゃー、かわいい!」

 その羽を現した姿に反応したのはキラであった。突進して、スノウの身体を抱きしめ、頭をなでなでしていた。

「念話で良かったのに、何か伝達か?」

 クオーツの問いかけに、そうそうとばかりに、頭をぐりぐりされつつ、スノウが口を開く。

「F-3の整備完了に目処が立ちましたので、艦隊の行動開始が決定しました。詳細を確認するので、会議室に来て欲しいと」

 艦隊の立て直しには、結構な日数がかかっていた。それは魔王にも利する事であったが、共和国本国から資材を取り寄せるなどして、攻撃の主体となるF-3を万全にする必要があった。この場でしていたように、戦訓の見直しも必要だ。

 スノウの言葉に頷いたクオークが、机から飛び降りた。

 そして、ふと思い出したようにスノウに話しかける。

「私は頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドに乗るが、スノウはどうする?」

 その質問にテロンとキラは興味深げだ。クオークが頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドに乗り込むとなると、スノウは前席を失う事になる。

「それが、その、ノーミド様が興味を示しておられて……」

 テロンとキラは驚愕の表情を浮かべ、クオークはやれやれと顔を左右に振る。レインは一言。

「良いんじゃないですか」

 あくまでも、普通に答えるのであった。


妹狼:「……邪魔です(ぱたぱた)」

J○?もどき:「邪魔じゃないさ!可愛いよ!」

妹狼:「むしり取ると……」

J○?もどき:「止めてし!……また生えるけど……」

妹狼:「取りましょう」

J○?もどき:「あーしのあいでんてぃてが……」

安いもんだな。


次回、明日中の投稿になります。

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