9-12
引き続き、
第9章を投稿いたします。
どうか、よろしくお願いいたします。
結論をまとめられず、結局仕方なくとエンが魔王の行政区と近くの港に襲撃をかけてはと提案した。
これには幕僚達が揃って反対をした。
非戦闘員を巻き込んでの戦いは避けたいと。
人権などの概念が薄くとも、民は国の重要な財産であるのは、この世界の国々の共通認識だ。悪政で民を苦しめる支配者は、そっと毒薬などで横にどかされ、暗愚であれば、周囲がもり立てて民を守る。食糧増産の政策にも熱心だ。そして他国の民であっても、後々占領して支配する場合を考えれば、抵抗の可能性があっても経済力を保持するため、民への弾圧ましてや殺戮などは避けるのが常道であった。
万が一、民を虐げるにしても、それは最後の、本当に最後の手段になる。
事実、歴史では、他国の占領地を優遇して、自国の民が飢えるという、本末転倒な事柄も記録されていた。
幕僚達が反対するのは、エンとて分かりきっていた。
故に主張のトーンを落として、襲撃ではなく、姿を見せて威圧、上陸占領の姿勢を見せれば、会敵場所を選べて優位な戦場で戦う事ができるのではないかと。そして、武人である幕僚達に考慮して、口にはしなかったが、魔王の民と地を人質にできると、そんな意を含ませて策を語る。最悪、民は安全地帯へ逃がす猶予を与えても良いのだ。
もちろん、魔王が自分の民達を歯牙にもかけず、戦いに臨むことはあるだろうが、エンは魔王が民をとても大事にしている事を知っている。魔王と交流していた思わぬ副産物であった。
幕僚達の意見は、敵国であっても民へ負担をかけることがあるが、損傷を抱えた魔王艦隊を討てると、エンの意見に傾きつつあった。
しかし、それをシオダの一言が覆す。
「エント様の策、いただきましたが、私としては、魔王艦隊の泊地あるいは軍港、そして軍事用のドックを叩いておきたい」
なぜかとの問いに、シオダは返す。
「成さねば、必ず魔王は復活する。魔王は討てても、その意志を引き継ぐ者が現れる。なれば、その意志をくじくためにも泊地あるいは軍港、軍用ドックの破壊は必須である」
断固とした意志を示したシオダによって、会議は決した。シオダの独断で方針が決定したように見えるが、意見百出の後に議論を尽くしているので、幕僚達は決定に関わったかのような気持ちになっているために、不満は出にくい。老練なシオダの誘導であった。
魔王艦隊の軍事本拠を発見し、艦隊と共に叩く。
そして、そのためには魔王艦隊を解き放つ必要があり、E229とE230は送り狼の役割を解かれる事になった。だが、そうなれば軍事としての本拠の位置は掴めないために、他の策が必要となるのだが、共和国としては魔王の支配域に暗部の浸透が出来ていないために、情報が乏しい。そのため、それを補うための策をエンが提案をした。
商人を使うのだと。
本店会頭室で、エンから秘密裏に連絡を受けたローダンは、難色を示す。子飼いの無名を危険にさらすことになるからだ。他を使えば、それではエンの要求には応えられないだろう。
ローダンは共和国の暗部、あるいは連合している暗部を使えと主張するが、現状、もっとも深く魔王の支配域に食い込んでいるのはローダンの商会と返されてしまう。軍事的な情報収集とは違って、経済的な情報収集は、その特性上から満遍なく行われる場合が多い。商売の種はどこに落ちているかは分からないのだ。
そして、期待されるのは、自社の暗部を担う無名が有能であるための弊害であった。
仕方なく、検討するので、しばらく待てと念話を終えて、偶さか戻っていた無名を部屋に呼び出した。
すぐさま無名は姿をローダンの前に現した。
「砂漠港の件だけれど、正式な軍港は別だよね」
「もちろんです。砂漠港近くの造船所は艤装をするだけで、ドックは軍港近くにあると見ています」
そうだよなとローダンはため息を零す。
「まさか、軍港の位置は把握出来ていないよな?」
「位置だけならば、大体の見当は出来ています」
何気なく返してきた無名の言葉に、おかしな表情を浮かべるローダン。
「どうされました」
「いや、有能な部下も考え物ですね」
そう言い、ローダンは頭を抱えつつ、エンに念話を繋げるのであった。
会議室では、軍港の発見をローダンが請け負うことになり、行動の指針が纏まることになる。
別途、別の部屋に移って費用の交渉でエンが念話でローダンと怒鳴り合っている様子だが、会議室にて待つシオダや幕僚達がそれを知ることもなかった。
会議室にいたのだが、察して哀れに思ったツキが部屋へ移動して、エンの肩を叩き、耳打ちした結果、商談はすぐに纏まり、満面の笑みを浮かべたエンがツキに抱きつくことになった。
改めて、会議が再開され、詳細が詰められていく。
本体であるDH183とDH184を中心とした四隻は、速度を落として警戒しつつこの地域を遊弋することになった。
魔王艦隊追尾の任を解かれたE229とE230であったが、簡単に追尾を止める訳にはいかなかった。警戒を抱かせては、敵は軍港へ戻る事をしない可能性があったからだ。
何らかの理由を見せつけて、追尾から両艦が脱落する格好をつける必要があった。
そのため、E229は機関に故障発生の振りをすることになり、E230は付き添う形で、徐々に距離を開くことになる。追尾を続ける振りをするために、F-3までが動員されて、距離を置いてだが、魔王艦隊の上空を舞い、仰天号から逃げ帰ることまでしたのだ。
こうした手間をかけてまで合流した共和国艦隊は、ローダン商会からの連絡を待つことになり、その時間を生かして艦隊飛行体の整備を実施するのであった。その中には、クオーツによる航空機動の講習も含まれていた。頂天号は以前として、アモンが調整を続けているのだった。
一方、ローダンはエンとの交渉を終えて、とても上機嫌であった。
金銭的な成果は上げられなかったが、それは他で充分に埋め合わせが出来る。エンとの交渉で得たのは、金銭では得られぬ貴重なものであった。
だが、そんな浮かれ気分の中にあって、一つ思い出すことがあった。
「そうそう、アモン老から頼まれていたんだ」
そう独りごちたローダンは、しばらく考えていたが、やがてため息をついた。
「商会単独では難しいわね。他の商人の恨みも買いそうだし」
技術は拡散も必要だろうから、ならばとばかりに、呼び鈴を鳴らし、待機していた商会員を部屋へと招くのだった。
命じるのは財団への連絡であった。
男装精霊:「やはり、無名○祀書と関係あるのかしら?」
名無し:「ガ○ノ○ーアでしたら、良く知っていますが」
男装精霊:「ク○ゥ○アは?」
名無し:「もちろんです」
男装精霊:「……あなたと相性のよさような大精霊を知っているわよ」
名無し:「??」
カ○ソリで喉は斬ったりしませんので、
ご安心を……
あれ?なんでここに……
次回、明日中の投稿になります。
します。




