表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第9章 LA・LA・LA LOVE SONG
169/219

9-3

引き続き、

第9章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

 エーテル炉の脇では、担架からベッドに移されたノーミーが横たわっていた。ディアナはノーミーの服を脱がし始める。他の大精霊と違って、ノーミーの服は人や獣人が作ったもので、物理的に除去する必要があったからだ。

 ペノンズはノーミーに背を向けている。特に誰に命じられた訳ではないが、裸身を見ないようにしているのだろう。

「シーツを掛けたから手伝って」

 研究者の口調になっているディアナに言われて、ようやくペノンズがノーミーを見る。

「エーテルの補給はどうするのじゃ。このままだと、かなり時間がかかるぞ」

「直接注入する」

 その言葉にペノンズは怪訝な表情を浮かべてどうやってと尋ねた。

「直接ぶっ刺す」

 ディアナはその言葉とともに、手にしていた複数の細い針を、次々とノーミーの脇腹に刺したのだった。一見無造作に刺しているように見えるが、ペノンズはその刺す位置が、精霊の体内エーテルの集中点、ツボのような点で、エーテル補充に的確な場所である事に気づき、改めてディアナのことを見直すのだった。

 その光景を壁に沿って立っていたクオーツとレインが見ていた。

「無茶をする」

「うーん、そうだね。でも私も似たようなことをされたよ」

「誰だ、それは?」

 その言葉の感じから、やったのがディアナではないと感じて思わずクオーツが尋ねる。

 うーんとねというように、顎に指を当てたレインが言いよどむ。

 何か言えぬ理由があるのかと、クオーツは思うが、とにかくレインの応えを待つことにした。まだかかると思われていたレインを元に戻す作業を、瞬く間に終えてしまったとなると、よほどの名手であるのだろうと、クオーツは知りたかったからだ。

 レインが言いよどんだのは、ご老人、おじいちゃん?と呼び方に悩んだためであった。

「おじいちゃん。アモンっていう」

 決まったようだ。

 どうやら隠すような、大した理由はないようだと、ならばとクオーツはそのことに対して問いかける。

「腕利きのようだな」

「ディアナが、やっぱりさすがってびっくりしてた。昔の知り合いだって」

「なるほど、それで人型にもなれるようになったのか」

 もともと、レインは人の形になることはなかった。そこがツキとは大きな違いだったのだ。

 えへへと笑ったレインが、ディアナとアモンの見解では、一旦半身を失い、魔力と生命力を強制的に受け取った副作用で、ツクモガミであっても精霊の性質が表れているとのことだった。

 もともと厳密には、この世界ではツクモガミも精霊の一種と分類されており、実際人型になるツクモガミも存在していた。

「それでは一時のことか?」

「ううん、このままだって、しばらくは」

 試みに人型になったところ、戻れなくなったのだと。

 もちろん刀の姿にもどることは先々可能だ。ただ、今は生命力が足りず出来ないとのことで、そのためかアモンという老人は直接操作ダイレクトコントロール出来ないではないかと憤慨していたとレインは語る。

 直接操作ダイレクトコントロールと聞き、何に乗ってここに来たのだとクオーツが尋ねる。

頂天号トップ・オブ・ザ・ワールド。すごい空を飛ぶ船。私が操縦してきたんだよ」

 ずいぶん自慢げに言うレイン。

 それを聞いて首を傾げるクオーツ。魔王の持つ飛行体とかF-3のようなものだろうかと想像をするが、レインが言うには、攻撃から戻ったF-3が着艦するスペースを空けるため空で待機していて、もう少ししたら戻ってくるとのことで、それを聞いたクオーツはなるほどと、それまでは楽しみにしておこうと思うのだった。

 だが、それはすぐにもやって来た。

 バンという大きな音を立てて、分厚い扉が開けられ、背後から羽交い締めする警備員を引きずっている、頬に傷ある老人がエーテル炉の部屋に入ってきた。それを追いかけて、あわあわと両手を前に突き出す姿でエンが駆けて来た。どうやら前進していた艦から転移で戻ってきたようだ。

「あのバカは苦戦しとるんじゃろう、バカ息子にな!」そしてノーミーを指差し「大精霊がこんな姿になっとるんじゃ。レイン、頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドで迎えに行ってこい」

 更にはじろりと視線を猫の姿のクオーツに向ける。

「お前は尊き残されし物(フェレトリー)だろう。エーテル炉の制御を計算機代わりに任すから接続されろ。レインと一緒に行ってこい」

 それから、細かい調整が済んでいないから、それも任すと言う。

 尊き残されし物(フェレトリー)と呼ばれ、何のことかと理解出来ないクオーツだが、視線から自分を指すものだと知った。

「繋げられれば可能だろう」

「甲板に乗せてある。行ってこい」

 そう言い残して老人は警備員を後ろに引きずり外へと出て行った。それをあわあわと、なぜか腕を頭の上で振るエンが追う。泣きそうだ。

 感情がないためか、ただその姿を見送るクオーツにレインが声を掛けた。

「あれがアモン。共和国の最高機密存在だって、あんなでも」大きくため息をつく「さっ、行こう。着艦のために甲板を空けてたのが戻ったんだよ」

頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドが?」

「そう、頂天号トップ・オブ・ザ・ワールドだよ」

 行かねば分からぬかと、レインはクオーツを伴ってエーテル炉の部屋を後にするのだった。


にゃ~にゃ~:「……何も言うまい」

コズミックガールしかし胸はない:「仕方ないじゃん」

じじい:「えっ、格好いいじゃん!」

えっ!!


次回、明日中の投稿になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ