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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第9章 LA・LA・LA LOVE SONG
168/219

9-2

引き続き、

第9章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

 眼下に広がった、リーネの黒い翼を操縦席に戻ったオベロンは、前面に映し出された画像で見ていた。

「あの大きさ、封印が解かれたな」

 そのにやりと笑ったオベロンの言葉を聞き、ディーチウが苦いながらも、僅かに喜びの混じった表情を浮かべて問いかける。

「それでは、ダークの起動は……いえ、まだありますね。こちらも制限開放ありました」

「そう、まだもう一つ二つはあるはずだ。リーネも性能のすべては開放されていないだろう」

 そのオベロンとディーチウの会話が理解出来ずに、フレイが戸惑いの表情を浮かべる。

「巫女姫に何かあるのですか?」

「そうだな、それが良いのか悪いのか……。ニアも詳しくは話さずに寝てしまったからな」

 問いかけには答えず、嘆息ついて、オベロンが天井を見上げた。そして、さらにはディーチウに問いかける。

「知っているか?」

「私たちにはまだ制限がかかっています。星系外の上位情報も含まれていますし」

「あいつ、何考えてるんだ?自分で考えろってか?」

 もう一つ嘆息したオベロンが、ああなったリーネに攻撃しても無駄だからと、フレイに攻撃を止めさせる。それにやり過ぎるとハクとロッサの介入襲撃を招きかねないと。あいつらはリーネを可愛がりすぎだとも。

「地上戦の援護に……。何だ、あれは?」

 目前の映像の片隅に写る、小さな赤と虹の火花にオベロンは視線を向けた。

「まさか、くそ親父、完成させていたのか!」


DH183砂漠航行中 航空甲板

 時は遡る。

 アキラと別れたクオーツとスノウは、意識をなくして身体を透けさせているノーミーを抱えてDH183に戻ってきていた。

 恐らく大精霊であるノーミーには影響はないであろうが、クオーツはその身を案じて、傷ついた機体を、甲板を滑走することなく、衝撃もなく、ふわりと甲板に降り立たせた。

 魔力を使った微弱な推力で機体を前進させて、艦橋に向かっているF-3の風防をスノウは安全装置を破壊してまで開けて、未だ動いている機体の操縦席から上半身を覗かせて叫んだ。

看護兵(メディック)!急いで担架を!」

 その叫びに、傷を負っている者がいることを察知した周囲が、慌ただしく動き回る。

 まだ機体が動いているにもかかわらず、危険を冒してまで梯子(ラダー)が操縦席に掛けられ、甲板作業員の一人が危険を顧みずに駆け上って中を覗き込んだ。

 そこには意識のないノーミーを抱えたスノウの姿があった。

「その人は?」

 見た目、身体が薄れていることから尋常ではないことを察知した甲板作業員が問いかける。

「大精霊のノーミド様です」

「えっ!」

 スノウの意外な返答に、甲板作業員は言葉を失うが、それでもその内容を疑うことはなかった。軽々しく口にして良いものではないため、信じるしかないのだ。

 ならば、看護兵(メディック)では対応できないと、背後に振り返って叫ぶ。

「精霊工学士を呼んでくれ。対象は大精霊だ!」

「はーい、ここにいるよ」

 そう応えながら駆けよってきたのは、ディアナであった。その背後にはどたばたと走るペノンズと、作業用とは明らかに違う、薄そうではあるが頑丈そうな生地で出来た、身体に吸い付くようなつなぎを着た青い髪の少女の姿があった。

 機体が止まるまで待てと、梯子(ラダー)に足を掛けたまま、手で制する甲板作業員はディアナを見て首を傾げる。このDH183の艦内で見た顔ではなかったからだ。精霊工学士ともなれば、エーテル炉搭載で魔術を使いまくっているこの艦であれば、どこにでも顔を出しているからだ。

 怪訝な表情で、その応えを信じて良いのか、疑問符を浮かべる甲板作業員に声を掛ける者がいた。

「帝国最先端の腕利きの精霊工学士と聞いている。任せて大丈夫だろう」

 それは艦橋の入り口から姿を現した、ライラとブルーを引き連れた、艦隊を率いるシオダの言葉だった。

 さすがに司令官の言葉を疑うことは出来ず、機体の動きが止まったことから、甲板作業員は梯子(ラダー)からクオーツが飛び降りて空いた操縦席に入り、ディアナに場所を空けて上がってくるように促した。

 それを艦橋の元で見ていたシオダだが、知らず問いかけをしていた。

「大精霊だと」

「協同国、あるいは蒼龍の守護地スカイドラゴンフィールドにお住まいのノーミド様です」

「あの、長く姿をお隠しされていたという」

 驚きの声を上げるシオダに、ライラは頷きを返す。

 その会話を隣でお座りして聞いていたブルーは、内心でノーミーお前、レアもの扱いされてるぞと呟くのであった。

 梯子(ラダー)を昇ったディアナは、後席を覗き込んで、様子を見た瞬間に声を上げた。

「自身のエーテルを使ったんですね」

「アキラもそう言っていました」

 スノウの言葉に頷いたディアナは、甲板に視線を落として担架の用意が出来ている事を確認した。担架の脇ではペノンズと屈強な看護兵(メディック)二人が見上げていた。

「エーテル炉に運んで」

 そのディアナの言葉で、何をするのか悟ったペノンズが艦橋の入り口に駆け戻っていく。運び込まれるノーミーにすぐさま対応するため、先にエーテル炉へと行くのだ。

 担架へと指示を与えるディアナを見て、その間を利用して、スノウは浮遊の魔術を使ってノーミーを下ろして担架にその姿を横たえた。

 すぐさま、屈強な看護兵(メディック)二人が担架を持ち上げて、艦橋へと駆けていく。それを見送っているのはスノウだけではない。甲板に降り立ったクオーツとその側に立つ青い髪の少女であった。

「直ったのか?となると新たな助けがあったようだな」

「完全ではないけれど」

「だろうな、生命力が足りてないようだな。身体の構成も甘い」

 そのクオーツの言葉ににこりと笑った少女。

「だから、まだまだ手伝ってね」

「分かっているよ、レイン。もう一人の友とも約束をしている」

 それを聞いて、レインは長く繋がっていた、同体とも、友ともいえる猫の姿のクオーツの頭を撫でるのであった。


コズミックガールしかし胸はない:「じゃじゃーん」

にゃ~にゃ~:「身体の構成が甘い」

コズミックガールしかし胸はない:「大きくなるんでしょ?」

にゃ~にゃ~:「無理!」

検討中!!


次回、明日中の投稿になります。

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