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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第8章 I Still Haven't Found What I'm Looking For
161/219

8-17

引き続き、

第8章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。


本日より普段通りに戻します。

 魔力砲を放ったがために、E229とE230の覆っていた隠蔽の魔術が解け、その全容が明らかになった。

「旗艦DH183より光魔法届きました。『我ら、同胞を迎えにすでに進出を開始す』です」

 それをE229の艦橋で、アキラはこの前進部隊の指揮を執っているE229艦長の横で聞いた。

 DH183とDH184の部隊が既定の行動を伝えてきたに過ぎない。

 実は、もともとの計画によれば、航空機の到着はE229とE230の前進部隊と同時に到着の予定であった。だがシオダは、航空機の先発を主張した。速度の速い航空機をいち早く出発させて先制攻撃を仕掛けるべきだと。

 だがそれを実行すると、距離の関係からF-3のエーテル炉から発生する魔力が尽きて、戻ってこられなく恐れがあるため、シオダの幕僚は反対をしたのだが、それは母艦であるDH183とDH184が迎えに行けば良いだけだとシオダは一蹴したのだ。

 それにはアキラも反対をした。

 セオリーで考えるならば、航空機を発艦させた母艦は待避行動、後退すべきだ。航空母艦は戦闘艦でありながら、守られる脆弱な艦であったのだから。

 シオダ対幕僚とアキラという図式ができあがったが、一刻も早く敵に打撃を与えるべきだという、たった一人のシオダの意見が通った。やはり、なんと言っても、この艦隊を指揮するのはシオダであるからだ。

 そのためといっては何だが、幕僚とアキラから交換条件が出された。

 当初は戦果観測のためを予定していたE229とE230の進出は、敵の打撃力を減らすために、肉薄攻撃に変更。予定よりも前進するDH183とDH184への打撃攻撃を少しでも減らすためであった。そしてそれにはアキラ達が同行する。

 アキラ達の同行は魔王への対抗のためであった。

 アキラは魔王オベロンへの肉薄攻撃を意図していた。

 エンは反対するものと、シオダと幕僚達は考えていたが、意外にもエンは反対することもなく、同行すると告げた。

 そして、同行していたエンが発動させた隠蔽の魔術のおかげで、E229とE230は敵の艦隊間近までたどり着き、至近距離から砲撃をする事ができた。目標は陸に上がろうとしていた船二隻。すでに町に取り付いていた船は爆弾の集中により、大きな被害を受けていた。

「さて、艦長。DH183とDH184も動き始めたようなので」

 そのアキラの言葉を聞いて、E229の艦長は艦橋に揃っていたアキラ達を見回した。今からアキラ達はオベロンのもとへと向かうつもりなのだ。

 アキラは別れの挨拶を艦長とエンにしようとした。

 だが、それをさえぎるもの。

「前方、上陸した艦に動きが」

 伝声管を通じて、見張りからの報告が聞こえていた。

 艦橋の窓の外に目を向ける。

 上陸していたトロイアの後部甲板に動きがあった。

 甲板が割れ、それはゆっくりとせり上がってきた。

 それを見たエンがまさかとつぶやいた。


 高度を上げていたスノウの目が、上陸していた船の後部甲板を捉えていた。

 甲板に、縦に線が生まれたかと思うと、それがゆっくりと左右に割れ始めた。甲板ががせり上がるかのようにして割れていく。

 この世界にも葉巻は存在する。

 その葉巻を大きくし、船の後甲板と同じ長さのものが姿を現し始めていた。それは自らが甲板を押しのけているように見えた。

「あれは……」

 後席で呟くスノウ。

「ふむ、あの船に二つ炉があった理由はこれか」

 前席のクオーツがスノウの呟きに応えた。

「何か分かりますか?」

「恐らくは飛行体だろうな」

 それを聞いたスノウが念話を発動する。

『全機、後部甲板に攻撃を集中してください』

 命じながら、スノウは背中に汗が流れ、腕が粟立つのを感じていた。

 あれは不吉だ。

 飛び立たせてはならない。

 すでに多くの機体は爆弾を投下し終えている。スノウは唇を噛んだ。恐らく、未だに爆弾を抱えているのは自らの機体と護衛の三機。

『護衛は必要ありません。何としても、あの後部甲板から現れるものを破壊してください』

 護衛の小隊を指揮していた隊長は、一瞬ためらった後に、スノウの強い言葉に了解の言葉を残して降下を始めた。

 一本の線を描き急降下して爆弾を投下するコースに乗る三機。

 恐らく、腕利きをテロンはスノウの護衛に付けていたのだろう。

 三機はかなりの高度を落としても爆弾を投下しない。残り少ない爆弾を的確にたたき込むため、十分に距離を引きつけるつもりなのだろう。

『離脱しろ、離脱だ』

 前席に座るクオーツが念話で声を上げる。管制はスノウの役割だと、クオーツとしては割り込んで他機に直接命じる事はなかったがそれが破られた。

 葉巻型の飛行体の上部が光り始めた。それを見たスノウもクオーツの言葉を理解した。

『魔力が放たれます!離脱して、逃げて!』

 護衛の三機はスノウとクオーツの言葉に忠実であった。技量を認めていたからであり、それが彼らを救う。

 飛行体から放たれる魔力から、三機はかろうじて編隊を崩して避けることが出来た。ギリギリであったが、逃れる事が出来たのだ。

「クオーツ、我々が行きましょう」

「何故にそれほどまで、あれを恐れる」

 クオーツの質問に、スノウは言葉に詰まる。

 何故と問いかけられ、すぐに答えが返せない。

 強いて理由を述べれば、姿を現しつつある飛行体は共和国の航空部隊に大いなる脅威だ。魔王が飛行体を用意しているとは想定していなかった。

 F-3の搭乗員達も、飛龍による戦闘経験はあってもどこまで通じるものか。

 だが、何よりもスノウの背中に、あの飛行体を見ると悪寒が走るのだ。邪悪とか、そのようなものではない。ただ、ただ破壊を求める存在であるように感じるのだ。

 だからスノウは一言。

「私はあれが怖い」

 今のうちに破壊をしておきたい。皆を守るためにも。

 感情が無いはずのクオーツから笑いの波動が広がる。

「では、おおせのままに」

 クオーツが操る機体が、斜めになって空を滑り落ちていった。


申し訳ございません。

ようやく通常に戻すことが出来ました。


他でも書かせていただきましたが、

年末年始の状況から、

書き溜めが出来ていない状況ですので、

再びお休みいただく事があるかも知れません。

その時には、必ず告知いたしますし、

再開も必ずいたします。


どうかよろしくお願いいたします。

次回、明日中の投稿になります。

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