8-16
引き続き、
第8章を投稿いたします。
どうか、よろしくお願いいたします。
時間が出来ましたので、
さらに1話だけ投稿をいたします。
大丈夫です。
続けますよーっていう証拠みたいなものです。
円を描いて町を砲撃していたカルタゴがそれを停止して、舳先を町に向け始めた。甲板に兵士達が姿を現す。陸上に上がることになり、隠蔽などの魔術を使用して近づく敵兵がないかを見張るためだ。
「砂漠に鳥か?」
兵士の一人が空を見上げていた。
それを見とがめた他の兵士が声を荒げる。
「おい!空なんか見ている場合か!しっかり見張れ!」
「へいへいっと」
空を見上げていた兵士は、言われたとおり陸上へと視線を向けるのだった。
兵士が見たのは鳥などではなかった。
立派な人工物、航空機、兵器であった。
『砂漠にあった四隻の内二隻が陸上に進路を向けたわ』
『ちっ、どうする、前提が崩れた』
前提とは、アキラは魔王が執るべく手を読んでいたのだ。砂漠船を陸上で機動する兵器として運用する可能性を。
そもそもアキラにとって、砂漠船を船と見るのは難しく、陸上を移動する乗り物としか見ることが出来なかったのだ。
ならば、少しの工夫で船ではなく、機動要塞として運用出来るだろうと。
キラとテロンの会話が全隊にスノウを中継して伝わった。テロンとしてはスノウの意見が聞きたかった。
『作戦変更はなしにしましょう。計画通り陸に上がった船に集中を』
『そうだな、賛成だ』
テロンとしても戦場にたどり着いてからの計画変更は避けたかったので、裏付けてくれるようなスノウの意見はありがたかった。
『それでは、私は高度を上げます。クオーツ、お願いします』
『了解した』
その返答と共に、スノウとクオーツを乗せたF-3が高度を上げていき、同型の三機がそれに追随する。管制を始めるスノウを護衛するためだ。敵に航空兵力は無いと判断されているため不要とスノウは主張していたが、万が一を考えてとテロンが許さなかった。
高度を上げていくスノウの機体を見送り、テロンが声を上げる。
『全小隊、順次攻撃を開始』
攻撃部隊全隊と自分の小隊の指揮を受け持つテロン。その言葉を合図に、真っ先にテロンは機体を傾け、滑るように高度を下げていく。順次続く機体達。
機首が陸上に上がった船に向く。
自重で加速する上、魔力で推進しながらの降下、動力降下には気合いがいる。地面へと自ら落ちていくのだから。
当初の計画では、敵船の上空を編隊を組んで水平飛行にて爆弾を投下する予定だったが、それでは命中率が落ちると、元いた世界の史実からアキラが反対したのだ。
爆弾をばらまくのではなく、意志を持って投げつける必要があると。
ではどうすれば、というシオダの問いかけに、対空火器が存在しないだろうとの前提から、アキラは急降下しながらの爆弾投下を提案した。新兵器による戦術的奇襲は可能なはずだ。だがそのやり方を聞いて、シオダは顔をしかめた。そんな方法は訓練でもしたことはなかったからだ。
そこで模擬弾を使って試してみることとなった。もちろん実行するのはクオーツとスノウのコンビだった。
アキラからの説明を聞き、クオーツはすぐに機動を理解した。
その結果は水平飛行よりも命中率が格段に良かった。初めての爆弾投下であるのに、見事命中させたスノウの技量にも皆は驚く。実はこれはアキラによる耳打ちが大きかった。
アキラは魔術によって投下される爆弾をミサイルのように制御出来ないかと考えていた。それをスノウは耳打ちされて応用したのだ。
つまり、急降下で投下された爆弾は、クオーツの助けを借りて、スノウが制御していたのだ。これは後ほど有効とアキラは判断して、全航空要員に開示されることとなった。
結果から、シオダはアキラの提案を受け入れ、航空隊はクオーツの指導により、急降下爆撃を学ぶ事となった。幸い、F-3の搭乗兵達は、急降下してから近接戦を行う飛龍での経験があったため、急降下そのものには慣れており、すぐさまその機動を習熟するのだった。ただし、動力降下のスピードに恐れおののきながら。
ぐんぐんと迫る船を見ながら、テロンとキラは歯を食いしばっていた。
「投下のタイミングは任せる」
「了解!」
キラは投下ボタンに指を乗せ、精霊に呼びかける。
投下のための照準器は水平飛行による投下を前提にしているために使えない。目視が頼りだった。前席のシートと計器類が視界を阻むために、キラは隙間を見つけて視線を敵の船にクギづける。
振動によって間違って押されぬように調整された硬いボタン。
キラの指が強く押し込んだ。
「投下!」
小隊の先頭にあったテロンとキラの機体から爆弾が振り下ろされた。一瞬だけ機体が軽くなる感覚に、テロンは操縦桿を一杯まで引っ張り、機首を上げた。機体を引きずり上げるために、魔力が奔流となって周囲に吐き出しまき散らされる。
キラが投下した爆弾に、後続の機体が投下した爆弾が続く。
この世界では、極めて初歩的な火薬しか未だ発明されていない。よって爆弾の威力が低いかと問われると、そうではない。
投下された爆弾には、魔術が仕掛けられていた。後席に乗る魔術師は航法だけのためでは無いのだ。後席の要員は爆弾を投下した際に、遅延式の魔術を爆弾に掛ける。
有効な起爆装置がないため、それを魔術で補っている。起爆と威力の増大。
キラの仕掛けた魔術は正確に作動した。
そして、爆弾は破裂。
『初弾命中!続き二弾三弾は至近弾!』
どうやら、魔王の船はシールドを前方にしか張っていなかったのか、キラが投下した爆弾が前方甲板に命中して、魔力を放出していた棒を破壊した。
『続け、続け!』
テロンが残る小隊に爆撃を命じた。
魔王が座乗する旗艦トロイアは爆弾の直撃と至近での爆発によって、瞬く間に上部甲板と船腹が破壊されていく。直撃はもちろんのこと、外れた爆弾は砂漠で炸裂して、巻き上げた砂は衝撃波を伴って船腹に叩きつけられる。
船内部の可燃物に引火したのか、火炎が吹き出している部分もあった。
幸い、艦橋はとっさにディーチウが前方のシールドを艦橋周辺に移動させたために被害はなかった。ただし、その町を覆うシールドに取り付いていた兵士達は、シールドの加護がなくなっていたため、連合部隊からの攻撃を受けて、次々魔力が剥がれて後退していた。
「空からの攻撃だと……」
普段、あまり驚きを見せないオベロンが驚愕の表情を浮かべていた。
その言葉の間にも、爆発は続いている。
そればかりか、爆弾の投下を終えた航空機が、高度を下げて、砂漠の表面すれすれにて向かってきており、盛んに魔術を放って被害の拡大を狙っていた。
最初は狼狽えていたものの、船に残していた魔術師達が対応を開始していた。
船体各所で小規模ながらシールドが張られ、魔術と爆弾への対応が行われ、地面ぎりぎりで侵攻してくる航空機に魔術を放つ。
「転身させろ、一旦引くぞ!」
そう命じたオベロンが、後方を振り返った。その瞬間、陸地に乗り上げようとしていたカルタゴとイリュリアで、轟音と共に火柱が上がった。
「なんだと!」
その光景にオベロンは眼を見開く。
申し訳ございません。
年始年末進行の影響で時間がとれません。
本日、
僅かに時間が出来たので1話だけ投稿いたします。
現状を報告いたします。
何とか1月21か22日くらいから再開したいと考えています。
どうか今後ともよろしくお願いいたします。