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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第8章 I Still Haven't Found What I'm Looking For
159/219

8-15

遅くなりましたけれど、

明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。


引き続き、

第8章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。


時間が出来ましたので、

1話だけ投稿をいたします。

続けますよーっていう証です。

 砂漠と陸上は一見して同じように見えるが、実際には違う。陸上は硬く、動く事はないが、砂漠は柔らかく流動的だ。だから、砂漠は海のように、船底が沈み込んで安定するのだ。

 だが、今魔王の先頭の船は、その硬い陸上を進んでいた。建物の上から見下ろしているキムボール達からは船体そのものが邪魔して見える事はなかったが、船の一番底である、いわゆる竜骨の部分だけが陸地に接して進んでいた。

 いや、支えているのは竜骨だけではなかった。硬い地面に接触してこすられているのは魔術によって生み出されたシールドであった。こすられ、エーテルに還元されて周囲に火花のようにまき散らされていた。

 前回より時間が空いたのは、このシールドを形成する魔術の行使方法、精霊への呼びかけ方を考えていたからなのだろう。こんな魔力のシールドをそりのように使うやり方などシルやリータのような大精霊でも知らなかった。

 唖然とするキムボール達が見守る中で、陸上に乗り上げて来たのは先頭の船だけであった。後続の四隻は右へ左へと舵を切り、陸上と平行に進む形となり、船腹を見せていた。

 やがて、その船腹の一部が開き、大勢の兵士達が砂漠へと躍り出た。

 前回はそりを使用していたが、陸上近くであるためか、兵士達は足を砂に取られながら、砂を掻き分けて陸上目指して駆け始めた。

 それを見たキムボールがはっと気づき、慌てたように声を上げた。

「防戦!シールドを張れ!兵士達は持ち場につけ!」

 その言葉に、待ち構えていた伝令が命じられていた部隊に向かって駆け始める。

 魔術師の部隊は、伝令が来るのも待たず、協力して精霊に呼びかけてシールドを張り始めていた。

 矢や炎弾、石弾等が上陸しようとしている魔王の兵士達に向けて打ち出されるが、それはことごとくディーチウが張っているであろうシールドに阻まれた。

「あの船にオベロンが……」

 遠見の魔術を使ったシルが、魔王が上陸してきた船の艦橋にいることを見つけ呟いた。

 躊躇なく、魔王の乗る船は町に張られているシールドに、舳先からぶつかる。

 舳先の前に張られたシールドと、町に張られたシールドがぶつかり合う。面同士のぶつかりであったが、舳先の鋭さの分だけ町のシールドがたわんでいる。

「さすがは代行者。シールドの強度が桁違いだ」

 そのリータの言葉に、シルが魔術師達の張ったシールドの後方にもう一枚のシールドを張った。

 舳先がシールドを抉る様を見てシルが顔を歪めた。

「どれだけ保つか」

 恐らく連合部隊の魔術師が呼びかけた精霊達の張るシールドは、そう長くは保たないだろう。シルも前回の戦いから、完全には回復していない。だが、それはディーチウとて同じはず。

「なぜ、そんなに早く魔力を回復出来たの?」

 そうシルは呟かざるを得なかった。

 上陸してきた兵士達の内から、魔術師達が前に出て、中に入れるだけの空間を開こうとシールドに取り付き魔術を行使し始めた。その周囲を守る兵士達。

「くそ、代行者のシールドが邪魔で攻撃できねぇ」

 魔術師達に火炎弾を撃ち出していたリータが舌打ちして毒づく。

 幸い、シルがシールドに重ね掛けしている転移阻害が効いているようで、オベロンやディーチウが転移してくる事はないが、シールドを挟んでの攻防が続く。

 盾と盾が押し合いをしているような状況。

 町中の兵士達の配置完了の伝令からの報告を受け終わったキムボールが大きく顔をしかめる。

「持久戦かよ。嫌な雲行きだぜ」

 いかに攻守の内で守りが有利で、しかも兵力が多いとは言え、魔術一つで戦況が覆る。恐らくこの状況を魔王は予測しており、それに対する何かの対策を持っているはずだと、キムボールは考えていた。

 それは何だと考える。

 だが、それも一瞬。

 キムボールの思考を断ち切るかのように、船から大出力の魔力が放出された。

「……至近距離からの魔力放出」

 あっけに取られたようなキムボールの言葉。

 今までは魔術で攻撃するしかなかったので、魔力を直接放出して攻撃するとは予想の範囲外であった。

 確かに、前回の戦いで艦砲射撃は見ていたものの、どこかにまさかという思いがあったのだろう。

 一射目で、連合していた町の魔術師達が張ったシールドは破られるが、二枚目のシールドが受け止めた。シールドを破られ、精霊達が慌てているのか、新たにシールドが張られることはなかった。

「リータ、手伝って」

 そのシルの言葉に、リータもシールドを張る。

 新たに二枚目となるシールドが張られた時、船が二射目を放った。

 シルのシールドは一瞬は耐えたものの、すぐに破られ、リータのシールドがそれを受け止めた。すぐさまシルが新たなシールドの内側に張る。

 シルとリータは交互にシールドを破られては張り直すという事をしていた。

 キムボールは伝令に魔術師の部隊にシールドを張るのは諦め、恐らく近々なだれ込んでくる敵兵に対処するために、攻撃魔術を用意するように命じた。

 走り去る伝令を見送るキムボールは歯を食いしばる。

「二対二じゃない、二対七だったんだ」

 そう、連合しているキムボール達は、敵に魔王とディーチウ、味方にシルとリータと言うように、大精霊クラスは同数だと考えていたが、それは甘い予測であったのだ。魔王の船は大精霊クラスの戦力とするべきだったのだ。

 圧倒的な不利。

「これは不味いな」

 まっとうな指揮官として、キムボールは撤退を検討し始める。

 魔王の船が大精霊と同等の戦力だとして、陸地奥深くにはさすがにこれはしないだろう。

 ならば、後方へ引くのも一つの手だ。

 だが、そうなると戦場が帝国領土奥深くとなり、大きな被害を生むであろう。帝国の民を苦しめる結果となる。

 しかも後方へ引くとなると撤退戦だ。必ず魔王は戦果拡大に追撃を仕掛けてくるだろう。兵に犠牲を覚悟せねばならない。

 じりじりとキムボールが考え始めた。


 旗艦トロイアの艦橋では、オベロンが渋い表情を浮かべていた。

「放出する魔力の方が多い」

 つまりはエーテル炉で作られる魔力よりも、シルとリータのシールドに向けられて放たれる魔力の方が大きいのだ。このままでは大精霊とエーテル炉が発生する魔力の量を比べ合うことになる。

 打開策は簡単である。

 オベロンがシールドの攻撃に加われば良いのだ。

 だが、オベロンとしては、自分の魔力は温存しておきたかった。確かにこの戦場には、シルとリータしか大精霊はいなかったが、他にもディーネやサインなど何体も戦いに参加していない大精霊がまだ控えているのだ。

 大精霊は人や獣人同士の戦いに関与する事を忌む。だからといっても、この戦いもそうだとは言い切れないのだ。現に、予測していたとはいってもリータが姿を現した。

 そして、何よりも恐れるのはドラゴンの存在。

 ブルーはリセット中ではあるが、ハクとロッサがどう出るか。オベロンはしばらくは様子見を続けると考えているが、ハクは良いとして、ロッサは気まぐれだ。オベロンの予測から外れてもおかしくはない。

 シールドとシールとがぶつかり、火花を上げている舳先をオベロンは見つめている。

 やがて決断したのか、声を上げる。

「カルタゴとイリュリアをトロイア後方につけろ。シールドを攻撃だ」

 オベロンはトロイアばかりではなく、更に二隻を陸上に上げる事を決断した。


申し訳ございません。

年始年末進行の影響で時間がとれません。

本日、

僅かに時間が出来たので1話だけ投稿いたします。


私事、

懸命に処理をしておりますが、

毎日投稿出来るのは何時からとはお約束出来ない状況です。

何とか1月20日くらいから再開したいと考えています。

どうか今後ともよろしくお願いいたします。

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