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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第8章 I Still Haven't Found What I'm Looking For
156/219

8-12

申し訳ございません。

昨日投稿ミスをしておりました。

改めて投稿いたします。


引き続き、

第8章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

 シルは魔王艦隊の旗艦トロイアの艦橋から、転移前の場所に戻った。纏っている薄衣は魔力の奔流によってかズタボロに引き裂かれていたが、瞬時に元通りにとなった。

 大精霊ともなると、その着衣までもが自分の魔力で作り出しているのだ。もちろん、ノーミーのように例外がいて、人や獣人が作った服を好む精霊もいるのだが。

 シルは視線を魔王艦隊に向けると、船足が早くなっており、進路の先には帝国の砂漠港の町が見える。

 改めて、シルが遠見の魔術で艦隊を見ると、甲板にローブを着た明らかに魔術師の出で立ちの一団が姿を現した。

 その魔術師達は、甲板に設けられた平たく伸ばされた箱状の構造物へと入っていった。

 そこから二本の太い棒が突き出されるのを見たシルだが、次の瞬間にはその棒の先から光が迸った。

「魔力を放出したの?」

 魔力の塊である光弾が、町の手前に落ちたかと思うと、激しい爆発を起こして砂漠の砂が天に向かって巻き上がった。

 それは魔王オベロンがシルに放ったのと同じで、魔術ではなく、精霊を介さずに魔力を撃ち出す攻撃であった。

 魔力を放出する構造物は、各船に三基備え付けられていたが、後ろに備えられているものは、進行方向には撃つことが出来ないようで、最初は先頭を行く船の前部に備えられた二基四本だけが光弾を放っていた。

 だが、艦隊は進行方向を変えて、町と平行するように向きを変えた。

 船腹を町に見せるような形で進む艦隊だが、甲板上の構造物が回転して、町へと突きだした棒を向けた。

 先頭の船は三基に増えた攻撃に、更に続く船がどんどん攻撃に加わっていく。

 幾つもの砂が巻き上がる。

 命中の精度は高くないが、一度ごとに修正を加えられているのか、徐々に光弾が着地する位置が町へと近づいて行く。

 このままでは町に光弾が命中することになる。

 幸い、町の住民は艦隊を発見してからすぐに離れており、最小限しかいなかったが、建造物を破壊されるのは帝国にとって被害が大きい。

 ついに光弾の一つが町の建物に命中し、街中で大きな爆発を起こした。

「これが坊やの言っていた艦砲射撃……」

 このままでは、アキラが予測していた通り、町に甚大な被害を及ぼす。シルはすかさず、町へと転移をして、すぐに町全体にシールドを張る。一重ではなく、幾重も。

 足を広げ、まるでシールドを支えるかのように両手を掲げてシルは光弾を防ぐ。シールドに叩きつけられた光弾は爆発を起こすが、物理的な衝撃をシルに及ぼすことはない。しかし、爆発はシールドを生み出すシルの魔力を通じて精神的な負荷となった。

 莫大な魔力を持つ大精霊だからこそ、耐えていられるものの、シルとて持っている魔力は無限ではない。船が持つ魔力とシルが持つ魔力のどちらかが先に尽きる化の我慢比べの様相になるかと見えたが、シルは最悪を予想する。

 町に腹を見せていた船の、その腹の一部が開いた。

 シルにとっては予想していた二番目の最悪が始まった。

 船腹に開いた扉から、砂上を移動するための馬に牽かれたそりが吐き出されていく。それらは真っ直ぐに町へと向かっていた。

 最悪の一番目は、魔王オベロンあるいは大精霊であるディーチウがシルの前に現れて戦いを挑むもの。

 そして、今シルが見ている二番目は、この町を占拠するために歩兵が送り込まれること。いかに魔王や大精霊が強力であろうとも、町を占拠することは出来ない。やはり、土地を占拠するのは歩兵でなくてはならない。

 シルはある意味では安堵していた。魔王はどうやら自身の手ではなく、軍による制圧を選択してくれたことを。

 シルはシールドの物理的防御を強化して、兵士達が侵入出来ないようにし、改めて転移の阻害を施す。魔力を複数の目的で使用するのは困難であるが、シルはそれをやってのけるだけの経験があった。

 だが、そりに乗る兵士達の一番前には、ローブを着用した魔術師達がいて、早くも精霊達がシルのシールドを中和しようとしている。

 町を巡る戦いは、持久戦の様相を呈してきた。


 どれほどの時間がたったであろうか。

 艦隊の攻撃が開始されたのが、昼前であり、今では大きく日は傾いていた。まだ夕方までには時間があるものの、日のある内にシールドを中和したい魔王の魔術師達は懸命に精霊達に働きかけていた。

 仕方なく、やりたくはなかったのだがシルはすべての精霊を支配下に置こうとするが、それがどうしても実施出来ないでいた。リーネとの戦いとは違う。明らかにシルに対して干渉している存在があるが、それをシルは知ることができなかった。

 シールドを破ろうと魔術を行使する魔術師の後方では、恐らくは魔王が鍛え上げた兵士達が整然とした様子で待ち受けていた。上陸してけっこうな時間がたっているにもかかわらず、弛緩した雰囲気もなく、戦意を高ぶらせて維持していた。

 シルの姿が時折、雑音が混じるように掠れた姿になる。身体を維持している魔力までも消費し始めていたのだ。

 存在その者が消える訳ではないが、大精霊の姿が見えなくなると言うことは、ほぼ魔力を使い尽くすことを意味した。そうなれば、シールドの維持など不可能になるであろう。

 未だ、町の向こうの砂漠では艦隊が円を描くようにして航行しており、断続的に光弾は打ち込まれてシルのシールドを破壊しようとしており、町の際では上陸した魔術師が中和しようと魔術を行使している。

「ここまでか……」

 シルは、ここは退き後方で魔王を待ち受けるべきかと、そう考え始めた時、微かに蹄が地を叩く音が聞こえた。

 それはほぼ同時であった。

 シルと魔王の兵士達が、同じ一方向に視線を向けた。

 砂漠と硬い陸の境界、砂浜にて砂塵が巻き上がっている。

 常ならば、シルは髪に砂が混じると嫌がるであろうが、この時は違い、輝く笑顔が浮かんだ。だが、それは一瞬のこと、すぐにその笑顔は陰る。本来はシルだけでこの場は抑えたかったからだ。

 時間は稼げたから良かったではないのだ。

 砂塵を巻き上げ、怒濤のごとく掛けてくるのは、紛うことなく帝国の最精兵であり栄光担う近衛騎兵の一団であった。

 脆弱な魔術師達を守るべく、後方に控えていた兵士達が帝国近衛との間に割って入り、横陣に構えて盾を地に突き刺し、槍を前方に構えた。

 そのまま騎兵が突撃すれば、少なくない被害を受けるであろうが、そうはならなかった。近衛の後方には、希少な魔術騎兵が付き従い、狛江の前方にシールドを張っており、槍や盾から守ったのだ。

 それを知った魔王の兵士達は、馬の蹄に掛けられるのを避けるために、騎兵達に道を譲り、結果として騎兵は兵士達をすり抜けるようにして魔術師達へと向かう。

 騎兵の速度は落ちており、シールドを中和しようとしていた魔術師達はそれを止めて、自らを守るためにシールドを張った。さすがに帝国近衛も術もなく行く足を止めるが、今度は自分達が危機に陥っていた。

 前方のシールドを張った魔術師と後方の兵士に挟撃される形となっていた。

「帝国近衛!町に入れ!」

 拡声の魔術を使い、シルはこちらに向かうように命じる。

 シールドすべてを消した場合には、着弾を町にさせることになるため、近衛の前だけシールドを開くのだが、精密な魔力の操作が必要になり、シルは目を細めてタイミングを計る。

 近衛は敵兵と混じり合って町へと入らぬように、距離を開けようと馬を走らせる。幸い、魔王の兵士達は歩兵であったためにそれは成功して、帝国近衛と魔術騎兵のみが町に入ることに成功した。

「シルフィード様!代わります!」



今回、小話はございません。

すいません。

年末進行中なもので……


次回、明日中の投稿になります。

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