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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第8章 I Still Haven't Found What I'm Looking For
152/219

8-8

引き続き、

第8章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

 アキラ達一行は、エンに誘われて甲板に出た。その大きさ広さにリーネがはしゃぎ駆け回り、それを心配そうにブルーが追いかけていた。猫の外装を被ったクオーツがスノウと共にゆっくりと何かを確かめるように歩き回り、アキラとツキは過ぎ去る光景を二人で見つめていた。

 空母DH183とDH184が桟橋を離れ、二隻が縦に並んで港の外へ向かうと、他の駆逐艦や巡洋艦らしき船が続く。エンによれば、空母ほどではないが、一際大きな巡洋艦はDG173とDG174、それと比べて二回りほど小型の駆逐艦はD115、D118、E229、E230と名付けられているとのことだ。それらすべてがエーテル炉搭載艦だという。

 港外に出たDH183とDH184が速度を落とす。身体でそれを感じ、何かがあるのかとアキラとツキが周囲を見回していると、兵士が駆けよってきて、リーネ達に片隅に避けて欲しいと頼んだ。

 兵士の言葉に従い、アキラは声を上げて皆を呼び寄せて、甲板上に設けられた艦橋、アイランドのもとに固まった。

 何が始まるのか甲板を見ていると、兵士達が忙しなく動き回っており、網のような物を準備したり、甲板の上を見回っている兵士もいた。

「来たわ」

 エンが空の一角を指差す。

 アキラが視線を向けると、ぽつりぽつりと空に小さな黒点が見えてきた。それは幾つも縦に連なっており、すぐさまその形が見て取れる大きさになった。

「プロペラがない!」

 アキラは木張りの耐熱性のない甲板を見て、この空母の搭載機はプロペラ機を想像していたのだが、それは見事に裏切られた。

 やがて現れた航空機はDH183とDH184の上を二手に分かれて旋回を始めた。

 その形状はかろうじて航空機のように見えたが、アキラにとってどちらかと言えば小型のスペースシャトルのようであった。三角翼の上に円筒を縦に割ったような本体が乗っている。しかも、その翼はどう見ても小さくて空力に頼って飛んでいるようには思えなかった。

「どうやって飛んでいるんだ?」

「ふむ、魔力が後方ばかりでなく、下方にも噴射しているな」

 アキラの疑問にクオーツが答える。つまり今この空母の上で旋回している航空機達は厳密には飛行機ではなく、ロケットだというのだ。

 飛行機であれば生み出す力はあくまでも推進ためのものであり、浮力や揚力は推進時に得られる空力によって得る。それがないというのだ。

「そうか、空力の理論がないんだ」恐らく理論がない故に、強引に魔力を下方に噴出して機体を浮かしているのだ。「無茶苦茶だ」

 呆れを通り越して、アキラは感嘆して声を上げた。

 旋回から一機が機体を傾けて、進行方向に対して甲板後方から進入してきた。着艦を開始したのだ。

 かつてアキラが映像で見たジェット戦闘機の着艦に比べ、いや、記録映像で見たプロペラの戦闘機よりも遅い速度で甲板に向かってくる。

 アキラの頭の片隅には、恐らくは静止状態から垂直に降り立つことも可能なのだろうと考えていた。魔力に限りがあるのでこうして水平から下降しつつ着艦をしようとしているのだろうと。

 まさしく、ふわりと言うように機体の下部に設けられた車輪が甲板を捉え、残った惰性で甲板上を進み止まった。網が用意されていたのは、万が一に起こったオーバーランに備えてのバリアだったのだ。

 着艦を終えた機体が人の力で押されて、次の着艦に備えて場所を空けた。

 甲板の片隅に駐機を終えた機体の風防が立ち上がるように開いて、二人が降り立った。すぐさま被っていた革の空帽を外すと二人ともエルフである事が分かった。

 アイランドの元で着艦を見守っていたアキラ達にすぐに気づいたその二人のエルフは、その中にエンの姿を見つけて慌てて駆けよってきた。

 二人は姿勢をエンの前に並んで正して、頭を下げた。

「DH184飛行部隊、テロン中尉到着いたしました」

「同じくキラ中尉到着いたしました」

「ご苦労様」

 テロンと名乗る背の高い方の男のエルフと、少し背の低い女エルフのキラが、明らかに民間人の服装であるアキラ達に訝しげな視線を向ける。

 その視線に気づいたエンは、アキラの腕を引っ張って引き寄せる。

「この人がアキラよ」

「ローダン商会のアキラと言います。よろしくお願いいたします」

「テロン中尉とキラ中尉は、魔王艦隊を発見したお手柄をたてたのよ」

 そのエンの言葉を聞いて、アキラは感心した声を上げるが、テロンとキラにはそれどころではないようだ。

 改めて姿勢を正したテロンとキラ。

「あなたがそうか、存分に使って欲しい。飛龍からF-3に乗り変わったばかりだが、腕に覚えはある」

「まったく、中尉は自信過剰なんだから」テロンの脇を肘で突いて、アキラに微笑みかける「期待しています」

 そう言い残して、テロンとキラは頭を一度下げた後、自分達が乗ってきた機体へと戻っていった。それを見送ったあとアキラは、エンを睨み付ける。

「どういうことだ、説明してもらおう」

「あらあら、慌てないで」

 そう言ってから、エンはアキラ達を連れてアイランドに設けられた扉を潜るのだった。


今回、小話はございません。


次回、明日中の投稿になります。

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