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引き続き、
第7章を投稿いたします。
どうか、よろしくお願いいたします。
蒼龍の守護地 中心地
スノウはノーミーから念話の魔術を教わっている。
姉が拳の天賦の才を持っているように、妹であるスノウは自分の魔力を操る才に恵まれていた。
学び始めてまだ間もないというのに、目視できる範囲であれば念話を可能にしていた。以前、ブルーが勘違いされた時と同じで、一人の魔術師スノウによって相互会話を可能としておりスノウの才能の高さを物語っていた。
そして、そんなスノウの才に興味引かれたのか、クオーツがスノウの念話の練習に同席したいと伝えてきたのだ。しかも、それはスノウとノーミーの念話による会話へ割り込む形でだ。
これにはノーミーも驚いた。
割り込むと、そう言うだけでは簡単に感じられるが、これは念話で会話している事を察知し、更にはその一人と一体の間に流れる、電波で言うところの周波数の魔力版を特定する必要があった。
割り込まれたノーミーは、慌てて念話を隠蔽した。どうやら会話内容が魔力上に残っていたようで、その内容は他へ聞かせられるようなものではないらしい。事実、スノウの顔も割り込まれたと知った瞬間に、驚き慌て顔を真っ赤していたからだ。
誰にも聞かれるはずがないと、緩みきっていた証左であった。しかし、同様の事が出来そうなドラゴンであるブルーがいるのに、よほどブルーは信頼されているようだ。ブルーは別に紳士なのではなくただ面倒なだけなのだが。
そして、スノウとノーミーは苦情を言うためと、クオーツの願いをかなえるために工場へとやって来たのだ。
すでに来ることはクオーツから聞かされていたのか、ディアナとペノンズは休憩と打ち合わせをするのに、この場を離れると告げ、後はよろしくと二人は連れだって工場を出て行ってしまった。
「やっほー、来ったよー」
ノーミーは出て行くディアナとペノンズに手を振って見送った後、クオーツに駆け寄って、その表面をぺちぺちと叩いた。
クオーツも嫌がる様子もなく挨拶を返す。
「よく来た」
その後、初めて近くで言葉を交わすスノウが、おずおずと遠慮気味に頭を下げた。
「お邪魔いたします」
「そう、畏まらないでくれ。私はアキラの友だ。その友の友は、私の友でもある」
「ともともともともって、なーに言ってんのさー」
ノーミーがクオーツの言葉をけらけらと笑う。それに対し、変だったかと尋ねるクオーツ。
「間違ってはいないですが、変は変かな?」
「そうか、言葉とは難しいな」
人であれば、腕の一つも組むところであるが、クオーツには腕も足もない。言葉使いもそのあたり、仕草で表現出来ないことが影響しているのだろうか。そんな考えをスノウがしている内に、ノーミーが勝手に念話に割り込むなと、苦情を言ったのだがクオーツが素直に謝ったことで、良しとノーミーは頷くのだった。
そこでスノウが気づいた。
「クオーツさんは見えているのですか?」
「せっかくだ、念話を使おう」
その言葉を合図にして、この場は念話で行うこととなった。
『先の質問だが、厳密な意味では私は視覚を持たない。その代わり、私は光や魔力などを観測して情報として処理をしている』
『ふーん、表面を触られたりと一緒?』
『まさしく、その通りである』
さすがに人とは違う感覚器官を持つ精霊であるノーミーは理解が早かった。
『でさー、なんでスノウに興味を持ったの?』
『ふむ、私が感じるところ、スノウは人としてはあり得ないほどの魔力を纏っているのではないか?』
その言葉に、スノウは目を丸くして驚いた。
現在の技術では、人が纏っている魔力の量を調べる術はなかったからだ。厳密には、あるかないかの状態を観測出来ているに過ぎない。
『その魔力が、スノウの負荷になっているようだな』
『さーすがー、クオーツは魔力が見えているからだね』
そのノーミーの言葉に、クオーツはそうだと答え、魔力の多少については厳密に量的な表現は難しいと告げた。クオーツが多いとしているのも他と比べてのことだ。
それを聞いたスノウが、自分の命は長くは保たないと、色々な者から指摘されているのだと。それは、魔力が多いことが影響しているのだろうかとクオーツに尋ねる。
『それについては、何も答えを持たない。なぜなら、私は生や死について詳しい情報を持っていないからだ』
それを聞いたスノウは肩を落として落胆した。自分の寿命について、何か情報を得られるかもしれないと期待をしていたからだ。
スノウは、無理に長生きしようとは思っていないが、それでも、自分がなぜ短命とされるのか、その理由くらいは知っておきたかった。
『それは残念です』
『いや、面白い考察のテーマを貰った』
今後、魔力と生命力、そして人や獣人との関係を考察してみようとクオーツは、スノウとノーミーに告げる。
『ところでさー、あんたはどっかから来たの』
『宇宙空間と定義されているところからだ。厳密に言うならば、この星系の中心から外へ向かって数えて三番目の惑星と四番目の惑星の間で、中心の恒星を巡る軌道に乗っていた』
『ふーん、けっこう遠いとこだね』
その会話で、ノーミーは理解したようだがスノウは無理だった。恒星というのは太陽であるというのはなんとなく分かるが、それ以外はまったく理解出来なかった。ノーミーの表現を聞いても、どれほどの距離か想像すら出来ない。
『うちゅうくうかん、ですか?』
『そうだな、この星の外と理解してもらえたら十分だ』
『ねーねー、やっぱ宇宙ってエーテルがざっぱーん、ってなってるの?』
『なかなか奇抜な表現だな。レインが聞けば喜びそうだ』
クオーツが語るには、この星の外、空気が途切れる先には、エーテルという物質で満たされており、それは恒星から放出されているため、空気や水のように星系の外へ向けて流れている。
『宇宙とは、エーテルの海だと考えて欲しい。この星や他の星は、そのエーテルの海に沈んでいるのだ』
どうやら、ノーミーとは感覚を共有出来ており、クオーツの言うことを理解しているようなので、スノウが理解出来る様に説明をしているようだ。
『海の中には海流があるそうだが、エーテルも同じだ』
だから、本来は星々やクオーツみたいなものは星系の外へと流されるのだが、自重がある上、恒星がつなぎ止めているから大丈夫なのだと。それが何故か、エーテルの流れに逆らうようにして移動して、この星に落ちたのだから何か他から力が加えられたのだろうと想像しているとクオーツが自分の考えを語る。
その他からの力と言うのは、クオーツにも分からないのだがと。
『それじゃー、クオーツは引っ張られたままだったの?』
『いいや、魔力を噴出して抵抗したが、遅かった。気がついた時には、この星に落下を始めていて、どうしようもなかった』
その後にアキラ達と出会ったのだが、意思疎通の手段を持たなかったので苦労したのだと、恐らく苦笑いを表現したいのだろう、言葉の調子を変えてクオーツは話す。
『そっかー、大変だったねー。でもさー、宇宙ってどんなだろう。行こーって思うんだけど、何か、空気のなくなるとこで、止まっちゃうんだよねー』
『なるほど、面白いことを聞いた。精霊には何か制限がかけられているようだな』
『そーそー。そんな感じ』
スノウは、ノーミーとクオーツの念話を横で聞いていたが、ほとんどが理解出来なかった。ただ、この地の外にも宇宙というものが広がっているのだと、漠然と理解したに過ぎない。
「この地の外にも、世界は広がっている……」
思わず念話を止めて、スノウは呟いた。
それを聞いたノーミーが目を輝かせる。
「スノウも行ってみたい?」
「そうですね。行ってみたいです」
「それじゃーさー、一緒に行こう!」
その機会があればと、スノウは少しさみしそうに笑って答えた。
わんわん:「宇宙はエーテルで満たされている」
幼女もどき:「それじゃ、エーテルは宇宙から降ってくるの」
わんわん:「その通り。そしてエーテルは魔力に徐々に変化していく」
と言うことらしいです。
次回、明日中の投稿になります。




