表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第7章 Change the world
141/219

7-14

引き続き、

第7章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

ブセファランドラ王国 王都パリス ローダン商会本店 会頭執務室

 大きな机に向かって、ローダンが異様な速度で書類をめくっていた。大精霊、しかも商業の精霊であるローダンにとっては造作もないことだ。

 最後の一枚に署名が施され、決済箱に放り込まれたのと合わせるようにして、扉が叩かれた。

 テーブルの上で手を組み、背筋を伸ばしたローダンが入れと命じた。

 扉を開けて入ってきたのは一人の女。野暮ったい濃い紺のスーツを身につけていた。町ですれ違ったとしても、決して目を引かず、すぐに忘れられるような容姿。

 名を無名(ノーネーム)といった。

 誰が名付けたかは知れず、少なくとも親ではない。もっとも、無名(ノーネーム)は親の顔など知らぬ。育て、教育を与えた者は知れど、名は知らぬ。もっとも、与えた教育はろくでもないものであったが。

 ただし、すべての大精霊には信奉者がいるが、この無名(ノーネーム)はローダンの唯一と言って良い信奉者であった。出会いは最悪であったが。

 無名(ノーネーム)は、執務室に入ると、テーブルの前までやって来て、大きく頭を下げた。

 無駄な言葉はない。

 頭を上げよと命じたローダンがため息を吐いた。無名(ノーネーム)はローダンが許可しない限り、頭を上げることはないからだ。

「もっとおしゃれをしても良いのよ」

「これが最善です」

 もう一度ローダンはため息を吐いた。信奉はしていても、聞く耳は持たないようだと。

 しかし、そこには見解の相違があった。無名(ノーネーム)の姿は自身の職務を全うするのに最善と考えており、ローダンの言うことを聞いてしまうと、それが出来ないからだ。一度試して、無名(ノーネーム)は駄目だと判断していた。

 無名(ノーネーム)の職務とは、ローダン商会の暗部を統括維持することだ。重要な案件と判断したならば、無名(ノーネーム)自身が動いた。今この執務室に現れたという危険を冒したのも、重要な案件に対しての報告を行うためだ。

「おしゃれは横に置くとして、報告でしょう?」

「はい、ただいま魔王の支配領域より戻りました」

 無言で先を促すローダン。

 報告の内容は、魔王が支配する隠された砂漠港にて活発な動きがあると。ただ、活発に動いていることは、前に報告が会ったが、その性質が変わったと無名(ノーネーム)は言うのだ。

「以前は荷物が運び込まれておりましたが、今はそれも少なくなり、港内部の動きが活発になっております」

 厳重な警備が行われている砂漠港だ。外からでしか見ることが出来ないため、その動きを掴む事は出来なかった。ただ、何か慌ただしい気配が外に漏れ伝わっていると。

「噂の艦隊とやらが動き出すと?」

「恐らくは」

「それで、艦隊を構成する船は把握出来ていないのね」

 頷いた無名(ノーネーム)が報告を続ける。

 完成した船が、いつまでも造船所に留まっている訳にもいかず、砂漠港へ移動する際や、恐らくは訓練のために港を出る時など、目撃される場合があった。ただ、それらの時でも、偽装が成されており、詳しくは掴む事が出来なかった。

「船体はそれほど大きくありませんが、砂を蹴立てる様からは相当重い船であり、純粋な戦闘船であると想像出来ます」

 珍しく、無名(ノーネーム)が不確定な言葉を使ったことにより、ローダンはよほど厳重に隠蔽されているのだと知った。

 推進については、帆が見当たらないことから、海の船と同様に魔術を使用していると考えられているが、船外では魔方陣が観測できなかったために、性能は予測出来ないと。

「謎が増えていくばかりね。ただ、純粋に戦闘用の船である事だけでも確定できればね」

 海上、砂上に関わらず、戦いは商船、貨客船を転用して行われる。距離を保って魔術や矢などで攻撃を行いつつ、接舷してからの格闘戦が主流であった。船首に衝角を取り付けて、体当たりする戦法もあったが、衝角を備えている船は未だ少ない。

「関連は不明ですが、戦闘船が港から出て戻るまでの間に、砂漠の方角から奇妙な音が聞こえたとの噂があります。現在調査中です」

 それを聞いたローダンは、顎に指を当てて考える。船と音は恐らく関連があるのは間違いがないが、その内容を知りたい手っ取り早いのはローダンそのものが、船あるいはその近くに転移すれば良いのだが、場所が分からなければそれも出来ない。しっかりと隠蔽されているのだ。

「とにかく、調査を進めて」

 そのローダンの言葉に、無名(ノーネーム)はしっかりと頷いた。


申し訳ございません。

今回は進行上、短くなりました。

小話も思いつきませんでした。

精進いたします。


次回、明日中の投稿になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ