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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第7章 Change the world
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7-6

引き続き、

第7章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

 そんなわけで、共和国に来たのは、アキラ達いつものメンバーであった。

 すでに何度も旅したメンバーであり、役割分担も出来ているので、旅路では何も事故なく共和国にたどり着いていた。

 もちろん、国境を越える際にはエンが発行した招待状は使わずに商用だと押し通した。それで何らトラブルも起こらず、政都までこうやってやって来たわけだが、政都に入る際にそれは起こった。

 当然、共和国の首都である政都ベアリーンに入る際には、検問を通る必要があったのだが、ここでも商用だと告げたが、一応念のために招待状を見せると、検問を管理していた兵士達に緊張が走った。

 待つように告げられ、アキラはこれは失敗したかと考えていたところ、検問の責任者らしき人物がアキラの前に立った。

「エント様より伺っております。すぐに官邸にお連れするように命じられております」

 よほど丁寧な扱いをするように伝えていたのか、その責任者の男は緊張しており、案内する際にもぎくしゃくとした動きで前を歩くのだった。

 案内されながら、都市の様子を見ていたアキラは、ツキに王国と似ていると言葉をかける。それにツキは、それも当然だと応えた。

 もともと、共和国は王国の一部であったのだ。王国から分離独立した国だと。

 それを聞いたアキラは驚いた。なぜなら、ローダン商会で見た地図では、共和国は王国の数倍の大きさであったからだ。領土だけを見れば、共和国から王国が分離独立したと教えられた方が納得がいくほどであった。

 どんな歴史があったのか、アキラはツキに尋ねたが、それに暗い表情になったツキは、ディーネの悲しい出来事ですとだけ言い、それ以上は語ろうとはしなかった。

 ツキの表情を見たアキラも、それ以上は聞く気にはなれず、黙っているのだった。


リシア共和国 政都ベアリーン 頭領官邸

 共和国の国家元首である頭領が政務を行う官邸だが、アキラの予想を裏切って、王の宮殿かと見間違うばかりの豪華さであった。共和国と言うからには、共和制であろうと考えていたアキラは、質素な建物を想像していたからだ。もちろん、それはアキラの思い違いである。たとえ共和制をとっている国家であっても、外交上の配慮から、一定以上の豪華な舞台が必要となるのだ。

 しかも、もともとは王国であった領土である。事実、共和国官邸はこの地を昔治めていた大貴族のものであったと言う。

 そんな説明を、検問の責任者から案内を引き継いだ女子職員から聞きつつ、アキラ達は豪華な絨毯を踏みしめて、廊下を進んでいた。

 やがてたどり着いた扉の前で一行は立ち止まり、職員はノックをすると返事も聞かずに扉を開けた。

 何人かの職員が働く小部屋を抜けて、二枚目の扉を案内の職員はノックした。

 今度は澄んだ声の返事を確認してから扉を開き、職員は中へと入るように手で合図をアキラ達に示した。

 どうやら、中に入るのはアキラ達だけらしい。

 先頭に立ったアキラは、ブルーを足下に、リーネとツキを後方に従えて中に入った。

「ようこそ、リシア共和国へ」

 大きな机を挟んで、両手を横に大きく広げてアキラ達を出迎えたのは、頭の天辺だけが禿げた美形エルフであった。


 エルフは頭領のジェナン・ラヴェルと名乗った。

 それを聞いてアキラは驚いた。てっきりエンの部屋に案内されると思い込んでおり、出迎えたエルフは、エンの使用人であろうと思っていたからだ。

 まさか国家元首から出迎えされようとは思わず、驚きから立ち直ったアキラは慌てて自己紹介をする。

「ローダン商会に席を置く、アキラです」

 その言葉に対して、ジェナンはにこやかに笑って手を机の上に差し出した。

 どうやら、共和国では握手の習慣があるようだ。

「よろしく」そしてジェナンはツキに視線を向け「以前お会いしておりますな、巫女姫」

「はい、スカイドラゴンの従者として」

 ツキはその言葉の後に、新たな巫女姫としてリーネを紹介した。それを受けて、ワンピースをつまみ、足を下げてクロスし、見事なカーテシーをリーネが披露する。それにジェナンは胸の前で腕を水平にして頭を下げて応えた。

「では、そちらがスカイドラゴンだと」

 事前にエンから聞いていたのだろう、驚くことなく、ジェナンはブルーに向かって深々と頭を下げた。

「お久しぶりでございます」

「ふん、出世したもんだな。前に会った時は、議員だったか?」

 少しだけ皮肉交じりのブルーの言葉にも、ジェナンは笑みを崩さずに頷いていた。どうやら、ジェナンが頭領になっているのには、ブルーが皮肉を言いたくなるようなことがあるのだろう。

「おかげさまで、国民の支持を得まして、こうして頭領を務めています」

 そう言ったジェナンは、皆をソファに座るように招いた。

 扉のすぐ外で待機していた、ここまでアキラ達を案内してきた職員に、エンを呼ぶようにと、そして飲み物の用意をジェナンは命じた。

「さて、先の帝国との戦いは大変でしたね」

 アキラとしては、さっそく魔王への対応を尋ねたいところだったが、どうやらジェナンはエンが来るまでするつもりはないようだ。戦いの内容など、共和国に必ずあるであろう暗部ないしは情報部から報告を受けているはずなのに、アキラとしては、はいとしか答えようもないが。

 しばらくは、戦いの様子をジェナンは根掘り葉掘り聞いてきたが、なぜかアキラがどのようなことをしたのかが中心であった。ブルーのことではない。

 対外的にはシルと帝国対ドラゴンであるはずなのにと、アキラは違和感を感じていた。そして、この共和国元首がどこまで知っているのかと。

 それならばと、アキラから情報を与える必要もないので、のらりくらりと応えていたが、アキラはジェナンがしきりと頭の天辺を撫でる仕草が気になった。

 何かの合図なのだろうかと。

 適当にアキラは応え、ジェナンの仕草に首を傾げていると、扉がノックされてジェナンが応えると、扉を開けてエンが執務室に入ってきた。

 挨拶もなしで、エンの第一声。

「代金はこの場で?」

「ローダン商会へ頼む」

 茶碗蒸しのレシピは、案内が官邸の入り口で交代した時に、すでに渡してあった。更には何故か一緒にいた官邸直属の料理人らしき人物には、レシピに書かれていないノウハウも伝えてあった。

 レシピを渡してからの時間を考えれば、アキラはそろそろ出来上がるんではなかろうかと、予測していた。必ずレシピを渡したら、すぐにエンは作らせるはずだ。

 事実、普通に考えれば、執務室で頭領と一緒にエンが待っていないのはおかしい。きっと、厨房で指示していたのだろう。だから、今になっての登場というわけだ。

 やはりとばかりに、エンを追いかけるように茶碗蒸しが執務室に届いた。

 今度ばかりはプリンと違って、ジェナンの分も用意されているようだ。いや、ジェナンが代金を用意するのか?

 先ずはとばかりに、茶碗蒸しを食す。

 一口二口と進む内に、ツキは大きく頷き、リーネは驚いた顔をしていた。試作時の味とは全く違っており、すは入っておらず、卵液は丁寧に漉したためか口当たりなめらかで、具も丁寧な味付けをしてから加えている様子だ。

 どうやら、具の味からして、協同国から共和国は調味料等を輸入しているようだ。後ほどエンにアキラが聞いたところ、緊急に少量だけ輸入したそうで、現在のところは官邸の調理室のみで試作使用されているのだと。

「あらあら、まあまあ、見事ですね。ぷりんと同じような材料で、菓子ではなく食事のための料理になっています」

 エンの絶賛はその後も続き、配膳に来ていたメイドに、おかわりの作成を指示するほどであった。

残念エルフ:「初めまして」

社畜男:「すいません、カーテン閉めて良いですか?」

残念エルフ:「駄目です」

社畜男:「えっ?」

残念エルフ:「特徴失われてしまいます」

別に深い意味はありません。

ないです。


次回、明日中の投稿になります。

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