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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第6章 JUST BECAUSE
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6-9

引き続き、

第6章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

蒼龍の守護地スカイドラゴンフィールド 中心地

 帝国兵の部隊が引いた中心地では、アキラは精霊馬に装備を取り付けていた。これから、追撃をするつもりなのだ。

 ディアナとペノンズはもちろんとして、人狼姉妹とノーミーはこの場に残すことにした。

 万が一を考えて、この中心地を守るためだ。

「残ってくれないのか」

 自分の愛馬スプライトに装備を括り付けているリーネに、アキラは声を掛ける。追撃をするといった時に、リーネは真っ先に自分も行くと宣言したのだ。それを聞いたアキラは迷った。なぜなら、再び精霊を封じられて、魔術の使えないリーネが無防備になることを恐れたからだ。

 追撃に連れて行こうが、この中心地に残そうが、やはり、積極的に戦いの場へと連れて行くのは気が引けた。かといって、この地に残して、知らぬ間にシルの急襲などの事故があってはとも思う。

 リーネがどうしてもと言い募るのと、やはり側に置いて守る方が悔いはないかと、アキラはリーネに同行を許したのだが、それでも迷いは続いていた。

 すっかり準備を整えたリーネが、問いかけるアキラに向き直る。

「ごめんね、足手まといになっちゃうかもだけど。でもね、行かなくっちゃと思うの。なんだか、胸の奥がざわざわしてるから」

 そのざわめきは何だと。アキラは不安を感じるが、ツキは逆にそんな時は一緒にいた方が良いと勧めたのも、同行を許した一因であった。

「分かった。でもな……」

「逃げる時は逃げるって。大丈夫」

 リーネは努めて明るく振る舞う。

 そうまでされては、アキラもそれ以上の言葉もなく、スピリットに跨がると、ツキを引き上げて後ろに乗せた。ブルーはスプライトの首筋に抱きついて乗っており、その後ろにリーネが跨がる。

 見送りに来ていた留守番組をアキラは見回す。

「さて、それじゃ帝国の尻をかじりに行くか」

「お下品じゃん」

 リーネに習って、明るく言ったアキラだが、ノーミーに駄目だしをされてしまった。慣れないことはいうもんじゃないと、照れ隠しのように、アキラはノーミー達に後を頼むと言い、精霊馬達を駆けるのだった。


 帝国の国境まで、守護地(フィールド)の精霊達は道を作ってはいなかったが、それとは別に帝国が輜重のために道を作っており、邪魔する精霊達に苦労しながらも何とか維持をしていた。

 整然と隊列を作って、後退していく帝国兵達だが、その後方からアキラは襲いかかる。

 シルがいないためか、精霊を奪われることもなく、まるで先の戦いの鬱憤を晴らすかのようにリーネは雷撃を放ち続けた。

 馬上で大太刀を振るって帝国兵達の魔力を剥がしていくアキラに続いて、雷撃で意識を刈っていくリーネ。それはまるで、帝国兵という草むらを掻き分けて進むが如くであった。

 帝国兵の一団を抜けたアキラは、精霊馬の足を止めず、そのまま進み続けた。

 帝都へ向けて。


モス帝国 帝都ロンデニオン 近郊 草原

 人虎の族長であるフォイルと財団(ファウンデーション)傭兵部隊のバス司令は、遠くに帝都を見下ろす丘の上で、背を屈めていた。視線の先には隊列を整えつつある帝国近衛がいるため、姿を見られないための用心だ。

 二人の後方では、獣人と傭兵の精兵達が秩序を保ちつつ、休息をとっている。

 遮二無二ではあったが、さすがに途中で休憩を挟んで、帝都近郊まで来ていたが、戦いの前に休みをとらせているのだ。

 フォイルとバス司令の前方で、腹ばいになっていた魔術師が、逐一帝国近衛の動きを報告していた。それを受けたフォイルが呟いた。

「エリオット王子は間に合ったようだな」

「みたいだな。近衛騎兵の他に帝国騎兵が加わっている」

 聞いたバス司令は、苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべた。

 恐らくは、シルの指示を受けて、先ずは動ける騎兵だけでも率いて戻ったのであろう。時間はこの連合部隊の敵だ。時間がたつにつれ、各地から帝国兵が集まってくる。

 顎を手の平で撫でたフォイル。

「どうする。迂回は無理だぜ」

 その言葉を、バス司令はじっと帝国兵陣地に視線を向けたまま聞いていた。

 何かを考えている様子に、問いかけたフォイルは黙って応えを待った。

 風が草原を渡っていく。

 草の擦れる音と、陣の移動する様子を逐一伝える魔術師の声だけが聞こえていた。

「正面から、堂々とやり合うか」

 ぽつりと零すようなバス司令の言葉に、嬉しそうにフォイルが頷いた。

「数の上では互角だ。今ならやれる」

 もともとフォイルは迂回などするつもりはなかった。まずは一当て、それからどうするかを考えれば良いと。迂回などの消極的な動きはフォイルの好みではなかった。正面で当たって、駄目となれば考えに入れる程度のことだ。

「私が先頭に立つ?」

 いつの間にか、二人の側にはサインが立っており、自分が先頭に立ってシールドを張って突破してはと提案をした。

 フォイルとバス司令は、即座に反対した。ただ、その真意は別にあった。

 フォイルはただ、信奉する大精霊を前に立たせたくなかっただけだが、バス司令は、サインが先頭に立つことによる、民や各国の指導部の批判を恐れてのことだ。今、二人がしている事は、ドラゴンを助けるという大義があっても、見方を変えると容易に侵略と非難されることである。フォイルが直感的に感じた事が正しいのだ。

 他国の侵略をするのに、先頭に大精霊を立てた。

 精霊を信奉するこの世界では、立派に非難されるやり方だ。

 バス司令は、サインに後方で待機していて欲しいと頼むと、少し不満げな表情をサインは浮かべた。

 サインはサインなりに役立とうとしているのだ。たとえそれがドラゴンのためであっても、フォイルとバス司令には好ましく思え、微笑ましい。

「フォイル殿。獣人は下馬戦闘をお願いしてもよろしいですか」

 バス司令は獣人兵に歩兵として戦ってくれと頼んでいるのだ。実は戦いの指揮を、合流した時にはフォイルはバス司令に委ねていた。地位としては、当然族長であるフォイルが上で、バス司令は合流してからはフォイルが指揮をとると考えていた。そのため、指揮を渡されて驚いたものの、その意気を感じてもいた。

 指揮権を握っていても、律儀に提案の形を取ってくれているバス司令に感謝しつつ、フォイルが応えた。

「もちろんだ。獣人にとっては下馬した方が良い」

「獣人兵には、負荷のかかる戦いになりますが」

「任せておけ」

 フォイルの賛意を取り付けたバス司令が、陣形を説明した。

 中央に歩兵である獣人を配置して、その両脇には騎兵を二分して配置した、極めて正統な配置で、恐らくは帝国側も同じような陣形をとってくると思われる。

 歩兵対歩兵、騎兵対騎兵。

 連合部隊は両国の精兵を集めたもの、帝国は国家中枢を守る近衛を中心としている。ならばどちらが勝つかは、機を掴んだ方。

「それではお願いがあります。獣人でなければ出来ないことです」

「ほう、そう言えば、お前は先の内乱に傭兵として参戦指揮していたな。あのくそまみれだった内乱で、獣人を指揮していた」

 獣人を指揮したことがあったのだなと、思い出すようにフォイルが尋ねると、バス司令は頷き返す。

「ならば、我ら獣人の力を人に見せつけてやろう」

 フォイルとバス司令は見つめ合い、にっと歯をむき出して笑い合った。


社畜男:「おしりかじり○18世」

幼女もどき:「声優がリアルラン○セルとリ○ーダーの姉の人?」

お酒飲むのに免許証が必要だったそうで。

ラン○コ、チョーチョー大好きです。


次回、明日中の投稿になります。

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