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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第6章 JUST BECAUSE
115/219

6-6

引き続き、

第6章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

モス帝国=財団(ファウンデーション)国境 国境警備司令部

 国境から僅かに離れた財団(ファウンデーション)側の位置に、国境警備を行う部隊を統括する司令部はあった。

 以前、帝国の兵が増強された際に報告を受けた司令部にて、あの時と同様の砂塵に塗れた伝令がバス司令の前に立っていた。

「では、帝国兵が動き始めたのだな」

「輜重を先発しておりますので、本格的な移動かと国境検問では見ております」

 常ならば、国境で火種となる兵の移動は吉兆ではあるが、今はそうとも言い切れない。

 恐らくは、協同国から帝国へ兵の侵入があったのだ。事前に商都より命を受けていたバス司令は苦い表情を浮かべ、伝令兵に下がるように命じた。

 それを知っている副官がバス司令にどうするのか問いかける。

 商都からの指示は静観である。つまり、何もするなと。

 これから国境から移動する帝国兵は、恐らく協同国の兵が侵入してきた国境へと増援として向かうのであろう。伝令によれば輜重もそのような方向へと向かっていると。

 財団(ファウンデーション)として取るべき行動は複数あったが、商都の指導部は静観を選択している。増強された国境警備の部隊を用いて帝国へ侵攻することも可能だ。そうなれば、帝国はドラゴンと財団(ファウンデーション)とで二正面、いや、王国も連動して動いてくれれば、三正面の戦線を持つことになる。

 そうなれば、国力で劣る財団(ファウンデーション)とて、帝国から一時とはいえ領土をむしり取る事はできるであろう。その一時を利用して、のらりくらりと交渉を行って利を得れば良い。

 または、恐らく兵が手薄となった協同国へ攻め込むのも一つの手だが、これは悪手といえる。大義が無いばかりか、弱みにつけ込んだと、周辺国から叩かれ、まともに交渉する事などできない。

 商都の静観という指示は、無難と言えた。バス司令の周囲もその命に服すと考えていた。実際、司令部の中は帝国兵の移動という情報を得ても、静かなものだった。

「さて、増強された部隊を国境へ送れ。迅速にだ」

 その命令を聞いたバス司令の周囲が慌てた。何故と。それを副官が問いただす。

「商都の命令は静観です。兵を国境に送り、下手に帝国を刺激するのは命令に反します」

「何を言っている。刺激されているのは我が部隊だぞ。輜重が後方へと向かったとは言え、それが欺瞞であって、帝国兵が油断した我が方へ向かってきたらどうする」

「それは……」

 バス司令の言い分はもっともである。何事も最悪に備えるべきなのだ。

「分かりました。では部隊一つを……」

「何を言っている。増強された部隊すべてと命じたはずだ」

「それは戦力として過剰では?」

 その副官の言葉に、首を左右に振りつつ、バス司令が立ち上がった。

「その様子では、指揮官に命令がうまく伝わらんだろう。俺が行く」

 副官は愕然とした表情を浮かべるが、それは捨て置かれてバス司令はつかつかと司令部から外へと出て行くのだった。

 外へと続く廊下を歩きながら、伝令兵を呼び寄せ準備を行うように各部隊へと伝え、騎兵は今すぐに出発すると命じた。

 建屋の外に出ると、バス司令のホーンホースがすでに準備を終えて待ち構えていた。そして、その後方では騎馬部隊が揃って整列をし、バス司令の言葉を待っていた。

 騎兵の一人が前に出る。

「準備出来ております」

 以前、国境へバス司令と一緒に駆けた騎馬隊指揮官であった。その引き締まった表情を見たバス司令はたった一言だけ伝えた。

「出発」


 通常、騎馬隊の行動は早いのであるが、それは行動を始めてからのことである。初動、馬を馬房から出し、騎士と共に装具を整えるという時間がかかる。

 しかし、今検問指揮所についた騎馬部隊はバス司令の命が発せられた時には、すでに準備が整っており、司令部から検問指揮所を駆ける時間だけが要したものであった。そのため、来るとしても時間がかかるであろうと考えていた指揮所では、迎え入れる準備など整っていなかった。

 ホーンホースから飛び降りたバス司令は、手綱を入り口を警備していた兵に渡すと、すぐさま指揮所の中へとずかずかと入っていた。

「砦の指揮官は来ているか」

 廊下を進みながら、バス司令が居合わせた兵に尋ねると、その兵は頷き案内を申し出た。

 兵に続いて、部屋に入ったバス司令は、以前の帝国侵入時に指揮を執った指揮官の姿を見つけた。

 驚いた表情を浮かべる指揮官に、バス司令は折りたたんでいた紙を広げて指揮官に手渡す。

「これを指揮所で一番高いところに掲げろ。模写したものを砦の高いところにもな」

 驚きを収めた指揮官が、受け取った紙に書かれた内容を見て、改めて驚いた顔を浮かべる。

「これを本当に掲げるおつもりですか?」

「命令だ。さっさとしてくれ」

 その有無を言わさぬ口調に気圧されて、指揮官が手近にいた兵に、指揮所の屋上で、受け取った紙を持って立つように命じた。

「方角は帝国領土へ向けて、ですな」

「もちろんだ」

 それとバス司令は騎馬部隊を休ませろと命じた。ただし、すぐに進発する故に、装備は解くな、輜重部隊の編成を行えと指揮官に命じた。

「どちらに向かうおつもりか?」

 その言葉に、バス司令は懐から一枚の丸めた書類を取り出す。それは鑞で封印され、印章を押しつけた正式な命令書であった。しかも、その印は財団(ファウンデーション)中枢からである事を証明する、ミュール会長補佐のものであった。

 受け取った指揮官は、正式文書である事を確認すると、視線で開けて良いのかとバス司令に尋ねた。内容によっては、周囲に知られる訳にはいかなかったからだ。

 封印を剥がし、中を一瞥する指揮官が驚愕の表情が浮かぶが、それも最初だけであり、読み進める内にその表情は納得へと変わっていた。

「検問周辺の警備を増強します」

「理解が早くて助かる」

「ただ、金ははずんでくださいよ」

 その指揮官の言葉に、バス司令はにやりと笑みを返すのだった。その背後では、続々と騎馬部隊の到着を告げる兵の声が響いていた。


社畜男:「マジで、出番がない」

幼女もどき:「影薄いもんね」

大太刀:「特徴もないですし」

J○?:「いなくても話し進むし」

社畜男:「……納得してしまった」

いやいやいや。


次回、明日中の投稿になります。

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