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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第6章 JUST BECAUSE
110/219

6-1

新しく第6章を始めさせていただきます。

どうか、よろしくお願いいたします。

魔王支配地域 岩窟内部

 岩山を刳り抜いた洞窟。

 その内部は砦もかくやと言う如く、狭い通路を通り抜けると、広々とした空間があった。周囲には幾つもの通路が見て取れ、その先には大小併せて幾つもの部屋が用意されていた。至る所に光る石が壁に埋め込まれており、窓がなくとも光を供給している。

 大広間の片隅で、大きな男が大剣を振っていた。ただ、振るだけではなく、決められた身のこなしを幾度となく繰り返す。

 汗が舞い、男の口からは剣の軌跡に合わせて息が吐き出される。

 革と思しきズボンの上には、粗末なシャツが一枚。それも今は汗にまみれていた。

 どれほどの時間がたったであろうか。汗はシャツばかりでなく、男の足下に水たまりを作るほどになっている。

 大剣が風切る音と、男の口から吐き出す息の音だけが大広間にはあった。

 いや、大広間の片隅には、クラシカルなメイド服を着た女が、手にタオルを捧げて立っており、側の小さなテーブルには水差しとコップが用意されていた。

 メイドはただ静かに立っている。眼差しは伏せられ、微動だにしない。ただ、主の言葉を待つ存在。

 風切る音と、吐く息の音が止んだ。

 男は大剣を振り切ったまま、しばらく残心していた。

 先とは違って、静寂が大広間を支配していた。

 やがて、男は大剣を鞘に納めて、大きく息を吐く。

 視線がメイドに向けられると、その意に添ったメイドが、タオルを捧げて男に近づいていく。

「ご苦労」

 短い感謝の言葉。あろうことか、先ほどまで自らを生きる家具としていたメイドの頬が、赤く染まった。それを隠すかのように頭を下げたメイドは、元の位置に戻って、用意されていたコップに水を注ぎ入れて、男の元へと戻った。

 顔に続いて、シャツの中に潜り入れたタオルで全身を拭っていた男だが、そのシャツが僅かに捲れてメイドの視線に止まった。

 逞しい筋肉が、男が身体を拭うのに合わせて蠢いていた。

 それから目が外せない。

 苦笑を浮かべ、男はメイドが捧げたプレートからコップを取り上げ、その中身を飲み干すのだった。

 喉を通り過ぎる水が、こくりと喉仏を上下させる。それにもメイドは視線を捉えて外すことが出来なかった。見上げるメイドの頬は赤いままだ。

「下がって良いぞ」

 空になったコップが、メイドが気づかぬうちに、プレートに戻っており、慌てて一礼をし、元の位置へと下がるメイドだ。

 その背を見送る男はため息を吐く。

「魔王様、鍛錬は終わりましたか?」

 魔王と呼ばれた男が振り返ると、そこには軽く頭を下げるエルフがいた。

 頭を上げたエルフは、自らより頭二つは大きな魔王を見上げるが、そこには魔王の渋い表情があった。

「その魔王と呼ぶのは止めろ。俺にはオベロンという立派な名があるんだ。貴様もエルフ、エルフと言われるより、フレイと呼ばれる方が良いだろう?」

「それはそうですが、魔王様は、魔王様なので」

「オベロンと呼べ」

 命じられて、諦めたのか、エルフのフレイは軽く頭を下げた。

 身体を拭い終えたオベロンは、タオルを首から下げるが、その姿にフレイは顔をしかめてメイドを呼び寄せた。

 どうにも首からタオルを下げた姿が、威厳に欠けると判断したのだろう。メイドも呼ばれたものの、魔王たるオベロンからタオルを奪うわけにもいかず、少し戸惑う様子を見せた。

「オベロン様、タオルをメイドに」

「いや、構わん。下がっていろ」

 オベロンがメイドに微笑みかけ、その頭を撫でてやる。本人はメイドを労ったつもりであろうが、された方はたまったものではない。危うく意識を刈り取られそうになったが、何とか踏みとどまったメイドは褒められるべきだろう。

 壁際へと戻るメイドを見つつ、首に下げたタオルの一端で、額を拭ったオベロンはフレイに言葉をかけた。

「忙しい貴様がここに来たんだ。何か用があるんだろう?」

蒼龍の守護地スカイドラゴンフィールドに送っていた偵察からの伝言です。境界間近の帝国の陣から、シルフィード様の姿が消えました」

「行き先は守護地(フィールド)内部だな」

 その言葉に、フレイが頷く。

 オベロンの口角の一端が上がる。

「内部への侵入は?」

「少人数を。ただし、連絡が来るのに時間がかかりましょう」

「そうそう伝令を出すわけにはいかんか。では、結果を楽しみに待つとしようか」

 言葉を残して歩み始めるオベロンに、続くフレイ。

 大剣を手にしたオベロンは、大広間から外へと続く通路を抜けて外へと出た。

 岩窟の外には、町が広がっていた。いや、都市と呼んで差し支えがないほどの規模だ。

 通りを大股でフレイを従えて歩くオベロン。

 道行く人々が、魔王であるオベロンの姿をみとめて、脇に避けて頭を下げる。ごく自然な様子だ。恐れる様子もなく、逆にオベロンと道で出会えて誇らしげな様子が見て取れた。

 では、道行くオベロンの様子はというと、至って自然体である。特に人々に厳めしい顔を向けるでなく、逆に媚びへつらう事もない。ただ、うっすらと口元に笑みを浮かべているだけだ。

 人々が頭を下げて畏まる中を進むオベロンの前に人影が二つ飛び出した。追っていたフレイが、柄に手をかけて、オベロンの前に出ようとするが、それをオベロンの手が遮った。

 人影二つは幼い男女のものであった。二人並んでいる様子は、幼なじみなのであろうか、年も近いようで、仲睦まじい様が感じ取れた。

 おずおずと、二人は手にしていたものを前に差し出した。

 女の子は野に咲くのを摘んだと思しき花束。男の子は、かごに乗せた果実を数種類。

 二人は誇らしげでもあり、大人達がするように、頭を下げた方が良いのかと迷っているのか、もじもじと立っていた。

 警戒を解くことのないフレイを後ろに下がらせたオベロンは、おもむろに膝を地面に着けて、しゃがみ込んだ。

 女の子の花束を受け取ったオベロンは、それをシャツの胸ポケットに挿した。

「どうだ、似合うか?」

「はい、とっても!」

 そうかと笑い、オベロンは女の子の頭を撫でる。そして、男の子に向き合うと、果実をかごごと受け取る。しっかりと落とさぬように用心して。

「今年の出来はどうだ?」

「去年より良いって、父ちゃんが言ってた」

 男の子に頷きかけるオベロンだが、男の子がじっと見つめていることに気づき、まだ言いたいことがあるのかと、先を促した。

「俺、魔王様の軍に入りたいんです!」

「そうか、ならば先ずは勉学に励め」

「だけど俺……」

 まだ何かを言い募ろうとする男の子の言葉を遮るオベロン。

「いいか、軍は頭が良い奴しか入れない」

 その言葉に絶望的な表情を浮かべる男の子。それが可笑しかったのか、オベロンは豪快な笑い声を上げた。

「剣も学問も頑張れ。楽しみにしているぞ!」

 そう言って立ち上がったオベロンは、かごを持とうとするフレイをことわり、そのまま歩き始めた。その背にはきらきらと輝く瞳が向けられていた。

社畜男:「えっ、俺の出番は?」

J○?:「途中で主人公の交代なんて、よくある話しだし」

社畜男:「いや、ないだろう」

J○?:「次回からタイトル変更だよ。転生したらJ○になっていた~あーし、もといた世界の知識で内政チートしちゃうよ~」

社畜男:「まじありそうで、怖いわ」

わんわん:「内政チート?無理だな」

うそです。

まじ混乱したらどーする。

タイトルは、

もう一つ思いついたのがあったけど、

ここには書けねーよ。


次回、明日中の投稿になります。

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