表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第5章 St. George And The Dragon
103/219

5-13

引き続き、

第5章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

 ディーネが王国へと帰ってから、三日ほどが過ぎた夕方。守護地(フィールド)の中心地でアキラ達は作業を終え、夕食までの時間を利用して、自分の部屋を片付けたりなど個人の用事を行っていた。

 食堂に付属した厨房では、サインから入手した醤油などの調味料を使って料理をしつつ、アキラは使用方法をツキに教えていた。

「味噌というのは、スープに使うだけではなく、具材に塗るという方法もあるのですね」

「それは醤油も一緒だよ。酢だって、スープに入れるばかりじゃなくて、ドレッシングにして料理に直接かける場合もあるだろう」

「なるほど、そのあたりは臨機応変ということですね」

 そうそうとアキラは頷き、味噌などは、直接焼いて副惣菜にも使えると説明をする。

 そんな二人が肩を並べ、仲良く料理をする様子を、リーネが入り口の影から覗き込んでいた。

「一緒にしたかったら、中に入れば良いだろう」

 突然ブルーに声を背後からかけられて、驚き飛び上がるリーネ。

 わたわたと慌てた様子で、リーネが答えを返す。

「……ツキが楽しそうだし。私は邪魔かなって」

「そんな気にする奴じゃないさ」

 リーネに頭をつけて、ぐいぐいと押すブルーは、厨房へと入っていった。

 それに気づいたアキラとツキが振り返り、ブルーに押されて入るリーネの様子に笑いかけた。

「ちょうど良いところに。明日使う予定のボアを味噌漬けにしようと思ったんだ。リーネも手伝ってくれ」

 ウッドボアの肉塊と、味噌を持ったアキラが両手を挙げて食材を示す。それを見たリーネが僅かにためらいを示すが、ツキが笑って手を差し出す。

「手伝ってくださいな」

 行けよとばかりに、後ろから押すブルー。

 そしておずおずと、はにかむリーネがツキの手を取るのだった。

 そんな時、外から呼びかける声が厨房まで届いた。

「今の声は?」

「王子が到着したようですね」

 ツキの応えに、アキラがやれやれとばかりに、リーネが出した水で手に付いた味噌を洗い流して、外へと向かう。続くブルーが不機嫌そうだ。

 外へと出たアキラとブルーは、ちょうどホーンホースから降り立ったキムボールの姿を見ることになった。

「早かったな。もう二・三日掛かると思っていたが」

「実は境界で待機していてな、ディーの伝言を聞いて、すぐに出たんだ。こいつには無理をさせちまったが」

 そう言いながら、キムボールは愛馬の首筋を軽く叩いてねぎらい、放して大丈夫かとキムボールが確認してきたので、アキラは精霊馬が駆け回っている場所を指し示してやる。

「ここが守護地(フィールド)の中心か。自然が豊かだ」

「人手が一切入っていないそうだからな」

 もちろん、そのアキラの言葉がすべて正しい訳ではない。ブルーは自分達が住む周辺は間伐を行ったり、獣を狩って間引いたりしていたから。だが、守護地(フィールド)の大部分は、精霊達が管理する道を除いて、何の管理もされてはいない。いわば原生の自然というわけだ。

 物珍しげに、周囲を見回すキムボールだが、ある一点で視線が止まる。手持ち無沙汰にしていたアキラの腕をキムボールが掴んだ。

「どうした?」

「あれは……?」

 言われて、アキラはキムボールの視線を辿ると、その先には大浴場の入り口付近に置かれたベンチに寝転ぶノーミーの姿があった。ただし、身体に一枚のタオルを巻いているだけの姿であった。

 ノーミーは、どうやら入浴後に、ベンチで涼むのを気に入った様子で、よく見かける光景だった。

 その背の羽をゆるゆると動かして、気持ち良さげなノーミーを見て、キムボールは気づいたのだろう。

「大精霊が、あんなあられもない姿で……」

「ああ、いくら言っても言うことを聞かないんだ」

 後頭部を掻きつつ、アキラがぼやくが、その説明でキムボールが納得する様子はなかった。ブルーが鼻息一つ吐き出した。

「まぁ、好きにさせてやれ。ああいう奴だが、人や獣人の前では気も抜けぬからな」

「……さすがは蒼龍の守護地スカイドラゴンフィールド。常識は通じないか」

「とはいっても、半裸の女の子をじっと見つめるのは良くないぞ」

 そうアキラに指摘され、慌てて視線を逸らすキムボールだが、逸らした先には、かご一杯の野菜を持って、とことこと歩くサインの姿があった。もちろんその背には羽が揺らめいていた。

「大精霊が、雑事をしていると?」

「サインは農業の大精霊だからな。ああやって野菜なんかの管理をするのが好きなんだと」

 アキラの説明を聞いて、キムボールが首を左右に振り、常識を忘れろと自分に言い聞かせているようだった。

「とにかく、ここでは大精霊であろうと、ドラゴンであろうと気遣う必要はないからな」

「いや、俺には気遣えよ?」

 否定するブルーに、アキラは苦笑いを向ける。

「何か、いつもと違う反応だな?」

 ふんと再び鼻息を吐いたブルーは、アキラ達に背を向けて食堂へと歩み去って行く。やれやれとばかりに首を傾げたアキラは、キムボールを促してブルーを追いかける。

「そろそろ夕食だ。ツキが作った」

「それは楽しみだ」

 嬉しそうに答えるキムボールに、アキラはほとんどは自分が作ったとは言えないのだった。


J○?:「聞いてよ、あーしも気を遣うわけよ」

わんわん:「…………」

幼女もどき:「…………」

社畜男:「……お前、ホントに大精霊?」

J○?:「殴るよ」

いや、タオル一枚はないだろ。


次回、明日中の投稿になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ