表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただ一つだけ  作者: レクフル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/141

魔力増加


 ヴァルカテノ国にあった聖女に関する事を聞いてから、俺はこの国にいるのは良くないのではないかと考えを巡らせた。


 しかしジルの様子を見ると、そこはあまり深く考えていないような感じに見える。

 ジルにその事を聞いてみると、

「何処に行っても同じ気がする」

と言い、それに加え

「なんだか私はここにいなくてはいけないような気がする」

とも言った。


 この国には聖女の生まれる神聖なる村がある。ジルはその存在を感じているのだろうか。


 この国に来てから、ジルは穏やかな表情をしているように思う。勿論、いつも笑顔を絶やさないジルだが、前に旅をしていた時よりも心が落ち着いているような、そんな感じがする。


 だから敢えて他国に行く提案をせずに、俺達はこの国に留まっている。

 とは言え、同じ場所にいる訳ではない。ジルが不意に

「あっちの方向に行きたい」

等と言ってくるので、何か感じるものでもあるのかもと思い、ジルの意見を採用して向かう方向を決めている事が最近は多くなってきた。


 追っ手の気配はない。それでも慎重になりながら、俺達は旅を進める。


 行く先々で、この国の情勢を感じ取る事ができるが、ここ最近ヴァルカテノ国は他国に戦争を仕掛けるのではないかとの話をよく耳にした。

 しかもそれは、フェルテナヴァル国らしいのだ。


 聖女を取り返す為の戦争だと言われているが、聖女をこの国が捕らえたとの噂もある。何が真実か分かってはいないが、聖女を取り返す為と、聖女を奪った不埒な国に戦争を仕掛けるべくこの国が動いている事を、国民達は当然の如く思っているようだった。


 しかし、もし本当にフェルテナヴァル国に戦争を仕掛けるのであれば、結構な遠征になると考えられる。

 ヴァルカテノ国は周辺国と比べると領土も大きく武力も高い。隣国はヴァルカテノ国に迂闊に手を出そうとはせずに、同盟を結んでいるのだが、フェルテナヴァル国は小国だし離れているしで、交流等今まで全く無かったようだった。


 互いにどんな国なのか、現在調査中といったところなのだが、その役割が俺を含む騎士団の遠征チームだった。それをジルを救いたいが為に、俺が半ば無理やり自国へ帰らせたのだが。


 今となってはあの国がどうなろうと構わない。

 そう思ったところで、ズキリと胸が痛くなった。

 公爵家や王族、貴族達に対しては勿論そう思っているが、暗部の者達や騎士団の者達、王都で知り合った平民の人達の事を考えると、やはり軽々しくこんな事を考えてはいけないとも思ってしまう。


 とは言え、俺はあの国に未練はない。あるのは両親を殺された怒り、ジルに対してしてきた事の怒り、そして腐敗した王族貴族への諦めだ。


 戦争になれば、フェルテナヴァル国は負けるのではないか。そんな感じがする。

 そう感じたのは、この国は他国に比べて、魔力持ちが多いからだ。


 俺も魔力を持っているからこそ分かるのだが、フェルテナヴァル国では魔力を持っている人は、王族や貴族の人達が殆どだった。

 たまに平民でも魔力を持っている人が現れるが、大概が俺のように貴族に養子として半ば強制的に連れていかれる。それほど魔力持ちは珍しいのだ。


 しかし、ここヴァルカテノ国では、恐らく三分の一近い人達が魔力を持っているのではないだろうか。

 勿論、魔力の多さに個人差があるが、それでも他国に比べると、これは異常な多さだと言える。


 だからこそ魔法の教育も進んでいて、魔力持ちの人は無償で魔法学校に通うこともできる。

 そうなのだ。この国には他国にはない、魔法学校と言うものがあるのだ。


 そこに通えるだけでもステータスが高いと言われており、そこでは魔法に関しての高度な授業が受けられるのだとか。全く、羨ましい限りだ。俺だって通いたかったくらいだ。


 そしてそこを卒業すれば、エリートの道が約束されていると言っても過言ではない。国の魔術師団に高給で仕える事ができる可能性が高いのだ。

 だからこの国の軍事力は高い。それが分かっているからこそ、隣国はこの国には迂闊に手を出さないのだ。


 そして、俺はこの国に来てから魔力が多くなった。

 俺の魔力は然程多くなく、生活魔法が使える程だったのだが、最近では攻撃にも使える程の強い魔力が発せられるようになってきた。


 今俺達は、この国で冒険者として働いている。受ける依頼の殆どを魔物討伐だが、その時に自分の魔力がどれ程上がり、魔物に影響するのかを試してみたのだ。

 今までは、できる事と言えば、自身の体に身体強化をし攻撃速度を上げる程度だったのだが、それに加え、火魔法や水魔法で魔物を攻撃でき、大きなダメージを与える事が出来るようになったのだ。


 それに、今まで使えなかった属性の魔法も使えるようになってきていて、その事が俺はとても嬉しかった。

 最近はジルに魔法の使い方を教えて貰う事が多いが、ジルは持って生まれた天性の才能のお陰で教えるのが下手だった。

 感覚で伝えてくれているのだが、何とか分かって貰おうと頑張ってくれている姿が可愛くて、言ってる事の半分は分かっていないが、俺は楽しくジルの講義を受けているのだ。


 そんな事もあって、少しずつだが魔法で出来る事が増えてきた。それはジルも同様で、この国に来てから元々あった多くの魔力が体から溢れそうになる、とよく言うようになった。


 聞くと、ジルの魔力はつけている首飾りに集められ、奪われた左腕につけられていた腕輪へと移動するのだそうだ。


 それを聞いて俺は凄く驚いた。今でもかなりの魔力持ちなのに、それ以上の魔力を持ち、その殆どを奪われた状態でいたと言うのだ。どれ程の魔力があるのか、想像するだけでも……いや、想像すらも出来ない事だと、それを聞いた時は開いた口が塞がらなかった程だった。


 その魔力が更に増えてきていて、首飾りにはおさまらない程となってきているのだと言う。 だから3日に一度程、夜、ジルは街の外に出て、膨大に膨れ上がった魔力を放出している。

 

 ジルから発せられた魔力は広く行き届き、辺りを浄化させていくのだ。

 お陰で日々、魔物被害が少なくなっているようで、それに困っていた人々はこの不思議な現象に安堵していた。

 それがジルのしている事だとは気づいてはいないが、聖女が帰ってきたからではないか、との噂も多く聞くようになった。


 聖女が帰ってきた。聖女が捕らえられた。


 それについて、俺は思い当たる事があった。


 それは行方不明になった、ヴィヴィの存在だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ