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ただ一つだけ  作者: レクフル


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天使のようで


 伝書鳥は定期的にやって来る。


 この鳥はオオクチバシと言う魔物だ。魔物だから魔力を持っているが、飼い慣らせばこうやって伝書鳥として働いてくれる。近場であれば飛んで来てくれるが、王都とこの街まではかなり遠いから、今回は魔力を使って足に仕込んである転移石でやって来たようだ。

 因みにもう片方の転移石は、リーダーのアドルフが持っている。


 もちろん、伝言があればその都度飛ばされるのだが、報告は随時行っている。

 王都にいる騎士団は旅の状況をキチンと知っておく必要があるからだ。


 どこにどんな魔物がいるのか、他国の情勢、瘴気はどうなのか等、行った事のない土地の調査も兼ねているから必要な事だ。

 そして今回は、この伝書鳥を利用させて貰った。


 伝書鳥が持ってくる指令書は通常、もちろん正式な物だ。が、それをイザイアに偽造させた。この手に関してはイザイアの伝手を使えば、偽造のプロに頼む事は容易にできる。

 そして侯爵家の暗部には希少である魔物使いがいる。ソイツはイザイアが可愛がっている後輩だから、きっと快く騎士団で飼われているオオクチバシを使役しただろう。


 指令書に詳細は書かれていない。鳥の足に装着して持ってこさせるから、当然あまり大きな紙ではない。だから必要最小限の伝達事のみ伝える事となるが、今回はそれが功を奏した。


 納得はしていなさそうだったが、とにかく指示に従わなければならない。伝書鳥にアドルフは確認の手紙を足に装着させ、また王都まで飛ばしたが、それを魔物使いが呼び寄せた。

 そうしてまた、偽造した指令書を持たせて送り出す。そんなやり取りをしてからやっと、渋々アドルフは帰還する為に街を離れて行った。


 今回は時間が稼げればいい。


 俺は王都にも、騎士団にも侯爵家にも未練などなく、もう戻るつもりはない。

 ジルにあんなに酷い事をするフェルテナヴァル国にホトホト嫌気がさしたと言うのが本音だ。

 俺を縛り付けるモノは何も無くなった。あの国に留まる理由は何もない。


 幼い頃の夢は冒険者だ。体力や武術には自信がある。ジルを食わせてやるくらい、俺がどうにでもしてやる。

 また二人で旅をしてもいい。住みやすい場所があればそこに定住してもいい。きっと二人でいられるなら、何処であろうと楽しい筈だから。


 遠征チームが街を出て行って暫く様子を確認してから、俺は転移石で王都に帰ってきた。


 早速あの搭に駆けて行く。もうすぐだ。もうすぐジルに会える。そう思うだけで心が逸る。


 いつもの場所にたどり着き、辺りを見渡しジルの姿を確認する。当然まだ来ていない。今はまだ朝だ。これから皆動き出す。


 ジルはもう起きたか?

 

 ゆっくり眠れたか?

 

 もう大丈夫だからな。


 これからはずっと二人でいよう。きっと楽しい日々が待っている筈だから。

 

 そんな風に思いながら、ジルがいる部屋の窓を見続ける。俺は気配を消している。それでもジルは俺に気づく。来はじめた頃は気配を隠す事は止め姿を現していたが、ジルに俺の姿が確認出来ているのならと気配を消したままにしている。


 エルマはジルの様子から、俺が来ている事が分かるらしい。いつもカーテンに隠れてはいるが、その表情が違うらしいのだ。だから俺のいる場所まで来る事ができたと言っていた。

 

 どうやって抜け出して来るのか。俺のように気配を消して来るのか、侍女に扮装してエルマと共に来るのか、そこまでは話せていなかったから分からないが、俺はジルの姿を探すように辺りに目を凝らす。


 すると、突然結界がビリビリ振動しだした。


 バリバリバリッ!


 と言う音を立てて結界にヒビが入りったと思ったら


 バアアァァァァァァァァァァンッッッ!!


 と大きな音を立てて結界は崩壊するように崩れ、消えていった。



「ハ、ハ……すげぇ……流石ジルだ……!」



 あんなに強固な結界が、いとも簡単に崩され消えてしまった。そうして俺は難なく搭に近づく事が出来るようになった。


 何やらバタバタ慌ただしく、兵士達が搭の中へと入っていく。ジルは相変わらず豪快だ。秘密裏に人知れず抜け出してくるのかと思いきや、こんな風に何事かと皆に思わせる程の事を起こしてしまう。

 いや、もしかしたらそれだけ切羽詰まっている状態なのかも知れない。


 俺は慎重に搭へと近づいていく。


 搭の入口もそうだが、この騒ぎを聞き付けて兵士や騎士が来るかも知れない。いや、それだけじゃなく神官達や近衛兵、そしてヒルデブラント陛下も……

  

 迅速に、慎重に動かなければ。


 辺りを確認しつつ、搭の近くまでやってきた時だった。突然


 ズガァァァァァァァァァァンンッッッ!!


と言う大きな音がした。


 音がしたのは頭上からだった。 

 その音にまたも驚きつつどうしたのかと見上げると、ジルがいる部屋の窓から爆発した後の煙がもうもうと上がり、吹き飛ばされた窓ガラスが粉々になって降ってきた。


 その時、その窓から割れたガラスと共にジルも落ちてきた。

 


「ジルっ!!」



 すぐに駆け寄って両手を広げてジルを受け止めようとする。



「リーンっ!!」



 ジルも俺を見て、驚いた顔をしながら両手を広げた。


 ガラスの欠片が太陽光に照らされてキラキラときらめく中、空から舞い降りる天使のようにフワリと落ちてきたジルは


とても美しかった……

 





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