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オトメクオリア  作者: invitro
第六章 燃える魔法

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24 檻の住人

「う~ん、どうやって動いてたのかさっぱりわかりませんねぇ」

「ゴーレムの構造を理解して量産しようとしてたわけじゃないんだろ」


 金剛寺が崩落した入り口の岩石を撤去している間、ラウラと玄間はゴーレムの残骸を調べる。

 ゴーレムは過去にオベリスクを発見した何者かと取り引きをしている様子だった。そして、この山脈一帯からは魔導具の材料となる魔鉱石が掘れる。最も聖遺物を使い熟していた転移者とされる五百年の転移者から得たい知識といえば、取り引きは魔導具製造に関する情報だと予想できた。


「こいつらは魔導具の原型を創った集団だったかもしれません。もしかしたら、現代まで伝わっていない魔鉱石の精製方法やマナの変換から現象を引き起こす原理を理解して教えていたのかも、ていっ」

「なんのっ」


 ラウラと玄間は分析をしながら割れたゴーレムの指でチャンバラ遊びはじめた。

 ゴーレムには骨格と呼べる物はあった。しかし、関節部に動力や操縦者の指示を伝える回路はなかった。念動力で動かす人体の代替品とでも呼ぶものだった。

 現代の魔導具は、まだ光の発生や熱の増幅や減衰といった原始的な働きしか持たせられない。ゴーレムを再現できないと知って興味が薄れたようだ。


「どこかに昔の転移者が造った搭乗型汎用ゴーレムとかないかなー。輪島なら作れないかなー」

「どの道コクピットがあってもラウラ様じゃゴーレムに乗れないだろ」

「わたしに不可能はない」

「いや無理でしょ。ロボって基本男の体に規格あわせてあるじゃん? ラウラ様だとチャイルドシートないと乗れないっしょ?」

「わたしは140cmだ! チャイルドシートは必要ない!」

「規格は時代と共に変わるのだよ。あとサバ読んでるけど139cmしかないのバレてるぞ」

「だまれっ」


 上段に構えたゴーレムの指を振り下ろす。玄間も自分の持っていた指をぶつけて防ぐ。ぶつかった二本の指は砕けて粉々になった。

 激しさを増した二人のチャンバラで破壊されたというよりも、突然分子の結合が解けて消えたような不自然な崩れ方だ。その証拠に、残されていた胴体や頭部から出てきた核も崩れて砂となった。ラウラはその様子を興味深そうに見つめる。

 オリジナルの聖遺物が完全に破壊される光景を見るのはラウラにとっても初めてのことだ。以前、貴志の破壊魔法でメイアとポーネットの聖遺物が壊されかかったが、女神の神気が残っているとされる大神殿ならば修復可能な範囲だった。


「聖遺物って神の道具だろ。けっこう簡単に壊れるんだな」

「人と融合して死という概念を与えられた影響ですかね。魔法や聖遺物同士の衝突でも完全な機能停止までいった物は見たことありません」

「ところで、こやつの名前はなんだったのだ。ラウラ様が言わせずにトドメを刺したせいで気になっておるのだが」


 落石の撤去を終えた金剛寺が会話に加わる。


「はて? 図書館で重要そうな本はかなり読みましたが、こいつら名前も隠されてるんで。それぞれ○○の王みたいな表記はあるんですけど……。教会はせいぜい教訓を伝える物語の存在にでもしたかったんでしょうね」

「名前を言ってはいけないあの人、みたいな?」

「それは少し違かろう。しかし、徹底した緘口令に焚書で歴史を消すか……あくどい侵略者の宗教に見えるぞ、ミラルベル教」

「当時の判断としては妥当だったと思いますよ」

「ええー、焚書は悪だろぉー」


 転移者の力については可能なかぎりすべて集めておきたいラウラだったが、溜め息と共に過去の行いは認めざるを得ないという。


「わたし達も日本にいた頃はよく聞いたでしょ。腐ったみかんだとか、クラスメイトが親から友達は選べって言われてたりだとか。ソレの延長です」

「どういう意味だ」

「一度でも知識や共感を得てしまうと、人は初めてする行為でも抵抗が薄れるんですよ。無いはずの選択肢や他人もやっているという免罪符が生まれ、思考の閾値が下がる、とでも言いましょうか。人は遺伝子だけでなく成長と学習によって完成する。なら悪い教材は最初から目の届かない場所へ隠すのが正解ってね」

「そういうもん?」

「自由に学べる事が必ずしも素晴らしいとは限らない。……玄間の好きなエロゲやエロマンガだって本当は18才未満購入禁止だったでしょう。もっと情報を制限されていれば、おまえ達も緋龍高校にぶち込まれるような馬鹿はやらなかったはずです」

「……確かに。どこにでもエロい情報が転がってるネットが悪いんだ。オレは悪くない。……そうかっ、オレはネット社会から性的虐待を受けて心を歪められた被害者だったのか」

「そこまでは言ってねぇです」


 地下道からオベリスクのある場所に出ると会話がぴたりと止まる。

 雪山下方の景色が一変していたのだ。

 山脈の中にある谷間には、隠し鉱山の坑道と思われる集落があったはずだ。山頂からボロ小屋や煙突のようなものが確認できた。それが雪煙でまったく見えなくなっていた。集落の周り以外でも、所々で雪崩や崖崩れが確認できる。オベリスクを守っていたオーク達も山の怒りだと震えていた。


「……悪いのはゴーレムだよね」

「五百年前の残りカスのくせに、ずいぶん暴れてくれましたからねぇ」

「責任転嫁してる場合ではないぞ! 急いで救出に行かねば!」

「ここから下りても間に合いませんて」




――――――――――




 本来、雪崩の起きない場所で雪崩が起きたせいだ。永く押し固められた氷山の如き雪面がずるりと滑り、集落をまるごと呑み込んでいた。遠目に予想していたよりも強固な造りの家屋が原型をとどめることなく破壊され尽くしている。


「本当に悪徳の魔王(笑)と取り引きしてた連中なら正体はテロリストですし、救助は気にせず一番デカい屋敷の跡からお宝探して掘り起こしてみましょー」


 今更人を掘り起こしたところで生存者は望めない。仮に凍死を免れても四肢の末端は壊死により切断、挙句長く苦しんで死ぬだけとなる。

 ゴーレムの封印されていた場所から考えれば、取り引きをしていた相手はこの集落に住む人間だろう。皇帝直轄領で秘かに活動できるだけの力を持った集団であり、悪意に満ちた存在と手を結んだ未来のテロリストである。

 それでも、自分達が暴れたせいで村が滅んでしまったと金剛寺は手を合わせた。


「事故だから犯罪者だからと死を悼まぬ道理はあるまい」

「無駄な善良さですね。死ねば罪も流れると考えるのは日本人の悪い癖です。さっさと手を動かしてください」

「うわー、鼻で笑ったよこの人」

「よくその性格で聖女なんて務まると感心するわ。貴様こそ焚書されろ」

「おまえこそ現実を学べハゲ。ここで活動してた連中の遺産はどこかで引き継がれて、次の犯罪に繋がるんですよ。悪党の仲間や遺族が嗤って過ごせる世の中になったら、犯罪者が増えるだろうが」



 オーク達の手も借りて雪崩で流された屋敷の物を探す。

 集落の人間の衣服や装備は帝国棄民の隠れ里で暮らす者達とは違っていた。秘境と言ってもいいような山奥でありながら、なかなか良い生地の服を着ていた。

 採掘された鉱物やその記録などは見つからず、代わりに出てきたのはゴブリンの死骸が入った檻だ。それが屋敷の址からいくつも見つかった。ゴブリンの死骸はどれも、雪崩によって崩れた家屋の廃材でできた傷とは違う傷がある。


「昔は魔鉱石の隠れ採掘場だったようですが、今はゴブリンの調教方法を研究していたみたいですね」


 近くに埋まっていた拷問道具や薬物の容器を拾いながら言う。

 割れた奥歯や恐怖と苦悶に満ちた表情が、雪崩以前に壮絶な死を与えられたことを伝えている。


「ヒトキメラを創った連中なら従える方法も知ってるってわけか」

「クズすぎる。拙僧の供養を返してほしい」


 雪でぐしゃぐしゃになった書物から、集落で行われた所業を調べる。

 ページをめくろうとするだけで破れてしまう上に、インクと紙の質が低く文字は滲んでほとんど読み解けない。水が浸み込んでいない部分を残した書物の中心部から、どうにか内容を推測する。


「あれ? ……この紋章、皇族の使うハンコじゃね?」


 玄間が小さな宝石箱を見つけて呟いた。

 中には精製され綺麗にカットされた魔鉱石と手紙が残されていた。宝石箱も割れたせいで手紙も例に漏れず中身を確認できなかったが、封蝋の形跡から玄間が手紙の送り主にアタリをつける。


「集落自体はそれなりに新しいけど、第一第二皇子はまだ14の小僧、若すぎる……。ここで怪しげな研究をしてたのは皇帝ヌルンクス?」

「でも皇帝の物とは紋章が違う。恐らく皇子の物だけど、デモクリスもエピクロスも違う」

「うむ、ハンコを複製する練習で覚えたから間違いないぞ」


 印璽を複製する練習していたおかげで得た知識が活きたとドヤ顔で答える。


「じゃあ誰のですか。ここの建物はたぶん先代皇帝の時代より前に遡るほど古くはないですよ」

「それは知ら……む、あそこに誰かいるぞ」


 金剛寺が記憶を辿るように遠くへ目線を投げると、ちょうど双眼鏡のレンズが反射する光が目に入った。

 遠く離れた場所からこちらを窺う集団。

 厚手の防寒具と帽子で髪や肌の色は目視できないはずだが、オークを引き連れているのが不味かったのだろう、集団は奥へ逃げて行った。


「ラウラ様を見て逃げたように見えたのだが」

「傷つきますねぇ。このプリティーフェイスになってからは、初対面の人間に逃げられることはなくなったはずなのに」

「尋問できる相手が生き残っててラッキーってのが顔に出てんだよ」

「どうしてその容姿からそんな凶悪な笑みができるのか不思議でならん」

「そう見えるのは、おまえ達の目が曇ってるからです」


 帝国内でラウラを一目見て聖女だと判別できる者は少ない。これまでの道程で直接会った者。ミラルベル教の関係者。皇帝を訪ねた時に城で会った者。第二皇子のパーティーに参加していた者。せいぜいこの程度だ。

 雪崩で埋まった集落をオークに任せて逃げた集団の足跡を追跡する。

 足跡は雪原を掻き毟るように乱れていた。金剛寺が言うように、ラウラを聖女だと理解した上で逃げたと見ていいだろう。


 集団は数ある坑道のひとつに入った。

 もう長いこと鉱山としては稼働していない坑道。瓦礫の山や車輪を引きずった形跡が残っていない。

 しかし照明には高価な光の魔導具が設置されていた。わずかに熱を持った新鮮な風が坑道内をすり抜けていく。他の入り口とも繋げているらしく、魔導具によって空調まで管理されている。


「あったかくてマジ助かるわー。けど、すげぇ無駄遣い」

「というかここはなんなのだ」


 坑道の様子が変わり、掘られた穴に鉄格子を嵌めた檻が出てきた。

 檻の中には殺されたばかりのゴブリンの死体が転がっている。

 ただ、雪崩の下から掘り出した死体とは違いがあった。

 坑道内のゴブリンは無表情。どこか笑みを浮かべているように感じられるものさえあった。姿勢も首を刎ねやすいよう自ら膝をついて頭を垂れていた。

 実験済みとして殺処分するにしては、身体も綺麗にされている。首にかけられた番号付きの札は、出荷待ちの家畜を連想させる。なぜ集団は足を止めてゴブリンを殺したのか疑問を抱く。


「うおっ、くっせ。マジ吐きそう」


 オベリスク周辺を巡回していたゴブリンの血の臭いと比べ、強烈な青臭さと腐臭放つ死体に三人は鼻をつまんだ。その血には、明らかに普通の生物が持たない成分が含まれていた。


「何かの罠かもしれません。血が毒になってる生物兵器とか」

「うへぇ、毒かよ。一旦引く?」

「ひとまず拙僧に変化がないか視てみよう」


 ラウラと玄間を下がらせる。金剛寺は筋肉魔法の副次効果により治癒能力が高い。

 死体を調べつつ様子を見る。体に異変は現れない。

 安心してラウラ達を呼ぼうとするが、今度は奥からゴブリンの死臭によく似た煙が流れてきた。


「奥を視てくる」

「あっ、カンちゃん待てって!」

「……無鉄砲さも鉄に似てきましたね。一年の頃は、調子こいてる先輩らに特攻しては返り討ちにされるのが鉄のお約束だったんですよ」

「笑ってないで追いかけないと!」



 人間離れした速さで駆ける金剛寺を追いかける途中、実験をしていたとみられる小部屋でラウラは足を止めた。

 ひっくり返されたガラスの鉢が散乱している。ゴブリンに与えていた薬の原料となる植物を水耕栽培していたのだろう。部屋の隅では、まとめられた植物と研究資料と思われる書物に火がついていた。


「ゴーレムから教わっていたのは特殊な植物の栽培と成分の抽出方法か」

「火は消したし、ここは置いて早くいこうぜ」


 代えの培養液をぶちまけて消火を終えた玄間がラウラを急かす。

 小部屋を抜けて物音のする分かれ道を進む。再びゴブリンを閉じ込めていた檻が並ぶが、今度は何も入れられていない。更に道を進むと、先程ラウラ達を見て逃げた集団が倒れていた。その中でも一番良いコートに身を包んだ男の前で、金剛寺が立ち尽くしている。


「金剛寺……。ヤッちまったな」

「待て待て待て、どう見ても自害だろうが! 拙僧は殺しておらん。追いついたらこやつらが勝手に自刃したのだ!」

「わたしでも人間は殺さないようにしてるのに、これ仏教破門だろ」

「だから違う! 殺してない!」

「さわるな、この人殺し。穢れが移るだろが」


 ラウラが掴まれた肩をはたき、金剛寺は泣きそうな顔になった。

 戦闘になった様子はなく、自らの口を封じるために自害したことは一目瞭然だったが、情報源を失ったラウラは八つ当たり気味に金剛寺を責める。


「金剛寺が執拗に追い詰めたから、死ななくてもいい人間が死んでしまった……」

「謝るからお願いほんとやめて」

「ラウラ様、尋問相手に逃げられて悔しいのは分かったからカンちゃんをいじめるのはそれくらいにして……牢に誰かいるぞ」

「え?」


 奥の檻を覗いていた玄間が指さした。

 “誰か”というあたり、ゴブリンではなく人間を示しているのだろう。ラウラは慌てて玄間のいる檻を確認しに行く。


「あ? お前……見覚えあるな。確かキモオタの……なんだっけ、玄間だっけ? じゃあそっちの坊主は金剛寺か。ちょうどいいとこに来たな、オレをこっから出せよ」


 うっすらとしか灯りの届かない暗がりから、目つきの悪いチンピラがガンを飛ばしていた。

 囚われの身でありながら、ずいぶんと偉そうな態度で自分を檻から出すように要求してくる。


「こいつ……誰だ?」

「戸波だよ、戸波孝親。青木と仲良かったクソ野郎だよ」


 不良に興味のなかったラウラは戸波の顔をすっかり忘れていた。

 戸波は異世界に来た直後、貴志のグループに所属していた。そのため玄間と金剛寺は多少会話する機会もあったが、ラウラとは単なるクラスメイトで縁がなかった。


「あー、青木の陸上部仲間にこんなゴミがいたかも」

「なんで忘れてんだよ、クラスメイトだったし青木はお前の友達だろ」

「……友達の友達は赤の他人では?」

「マジで覚えてないのか……」

「あきらめろゲンゲン、聖女様は不良なんぞ塵芥程度にしか認識しておらんのだ」

「隙あらばわたしの人間性を貶めようとするのやめろハゲ」

「オイ! ナニこそこそしゃべってんだ! ここから出せっつってんだろ!」


 小声で確認を取っていると戸波が大声で叫んだ。

 怒鳴られた玄間と金剛寺が反射的に肩を震わせる。

 緋龍高校で過ごした一年半の間に、不良に対する強固な苦手意識が植えつけられているらしい。特に金剛寺は、ラウラに殺人の容疑をかけられて筋肉魔法の影響が抜けるほどショックだったようだ。完全に腰が引けていた。


「出せ出せ出せ、とっとと出せよォ!! つーか、なんでガキなんて連れてんだ? キモオタ君たち、まさか幼女誘拐なんてやらかしちゃった? 異世界来たからってはっちゃけすぎだろ、ギャハハハ、ロリコンすげー、きめーマジウケる」


 癇に障る笑い声がラウラのこめかみに青筋を浮かばせる。

 鉄格子によって二人の間が遮られていなければ、即座に戸波の顔面を陥没させるラウラの蹴りが飛んでことは間違いない。


「玄間、金剛寺、わたしは他の檻を確認してくるからこいつシメとけ」

「え、拙僧らがやるのか?」

「おまえ達はミラルベル教の聖女であるこのわたしがケツ持ってんですよ。こんなザコにナメられんな」


 ラウラは二人の背中を叩き、すたすたと別の通路へ姿を消してしまった。


「小山内きゅんがアニキと呼ぶ気持ちが分かった気がする」

「てか不良がつるむ気持ちが分かったわ。何ミスってもケツ拭いてくれんだもんな。あんなんが後ろにいたら気が大きくなるわ」


 取り残された二人の気分は不思議と高揚していた。

 この時初めて、玄間と金剛寺は強大なバックがいることを自覚したのかもしれない。


「あれあれ、なにキモオタ君たち、あのロリっ子に足で使われてんの? ロリコンの上にマゾとかキモすぎんだろ。……アン? おいなんだその顔、また昔みたいに殴られてーか」

「戸波さんよぉ、高校じゃよくもやってくれたな」

「一年の時にカツアゲされた恨みは忘れておらんぞ」

「もちろん魔の森で何度か魔獣の生け贄にされそうになったこともな」


 檻の鍵は自害した貴族が落としたのだろう。目の前に転がっていたが、金剛寺は敢えて鉄格子を力任せに破壊して檻の中へ入った。

 金剛寺の持つ魔法がどういう類のものか理解した戸波が頬を引きつらせる。


「ちょっ、ただの冗談だろ、ふざけただけだって。オレ達、同じ教室で過ごした友達だろ?」

「否、赤の他人だ」


 金剛寺は引きちぎった鉄格子を捻じり、鉄バットに加工して玄間へ渡す。


「ケツモチ万歳」

「聖女の威光万歳」

「待て待て落ち着け、な? オレの魔法使えば、お前らキモオタでもいくらでも美味しい思いさせてやれっからよ。だからその武器置けよ。マジでやめっ、ぎいゃあああああああぁ」


 縊り殺される雄鶏のような汚い悲鳴が坑道の外まで届いた。

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