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三話
振り返ると数少ない友人の一人である、伸一が立っていた。
「よっ」
両手をポケットに突っ込み、人懐っこそうな笑みを浮かべている。
「おう」
「秀太、今日暇か?」
「まあ、暇だけど」
「また、ボール蹴んの付き合ってくれよ」
「しょうがねえな」
伸一は市内のサッカークラブに通っている。6歳からサッカーをやっているという生粋のサッカー少年だ。
秀太の両親は共働きである。
家にいてもすることがないので、放課後は図書館に行くか、伸一と学校でサッカーをして遊んでいる。
とはいっても、伸一はサッカークラブやら習い事やらで忙しいらしく、こうやって一緒にボールを蹴るのは週に一度ぐらいだ。
「いくぞー」
秀太と伸一は、グラウンドのサッカーゴールの前でボールを蹴りあっていた。
伸一が蹴ったボールは、きれいな放物線を描いて秀太の方に飛んでくる。
右足で何とかトラップし、伸一に蹴り返した。