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一話
「秀太、秀太。起きなさい」
フェリーの窓際の席でうとうとしていた秀太は、母に肩をたたかれ、目を覚ました。
体が重い。
「そろそろ着くわよ」
見ると、母はすでに荷物をまとめている。
「はーい」
重たい瞼を開け、ぐっと伸びをした。
今日の朝は五時に起きたので、まだ少しだけ眠い。
秀太はリュックの中から新幹線で買ったペットボトルの天然水を取り出し、半分ほど残っているのを一気に流し込んだ。
窓の外をのぞくと、青空の下できらめくエメラルドの海が見える。その向こうには、真っ白な砂浜と、深い緑におおわれた島が見えた。
秀太が今回引っ越すことになった、石垣島だ。
ついに来てしまったのか。
秀太は心の中でそうつぶやき、ため息を漏らした。