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月の果実は恋の味  作者: v私立桜咲学園文芸部
9/11

第九話 両手に華?

見透かす天使ちゃん

「大丈夫ですか?」


「気にしないで良いよ。彼とは仲良くなれそうだ」


 映画を見に来たはずが、美少女に囲まれたり好きな人がアイドルのプロデューサーをボコボコにしたり。情報量が多すぎて本来の目的を忘れてしまいそうになる。プロデューサーが優しそうな人で良かった。


「なんで殴ったりしたの?」


「月奈をスカウトするとか言うからさ、世界一可愛いのは認めるけど許可は出来ないって言ったんだよ。そしたら世界一は違うって言うから口論になっていつの間にか殴り合いに」


「恥ずかしいからそれ以上説明しなくて良いよ」


 仲が良さそうに肩を組んで大きな声で笑ってる二人。性格は似ているから打ち解ければ大丈夫だけど、打ち解けるまでの方法が人とは違うから厄介だ。


「映画の時間は大丈夫?」


「そろそろ行くか」


 星月さんとプロデューサーに全力で謝ってその場を後にした。普通に映画を見に来ただけなのに、色々と大変な目に遭って疲れた。

 休日のショッピングモールは果てしなく人が多くて、歩くだけでも疲れを感じてしまう。服を買う時とかは平日の夜に買うようにしてるから、これだけ人が多い時に何かを買おうと思うことすら無くなる。


「はい、チケット」


「ありがと」


 恋愛映画はあまり見ない。アニメ関係の映画をよく見るから、その時くらいしか恋愛ってジャンルの映画を見る機会がない。日向が面白いって言ってたし、この映画を見て面白かったら、色々と恋愛ジャンルの映画を探してみても良いかも知れない。


「時間だし入ろうぜ」


「うん」


 結果から言うと面白かった。ドキドキしたりキュンってしたり忙しいけど、それはそれで一つの面白さだし、見ていて楽しかった。こういう恋愛に憧れたりする気持ちは私にもあるから、それも相まって面白かった。ただ、一つだけ文句を言うなら。


「うぅっ……」


「そんなに泣く? 感動じゃなくて恋愛だよ? 泣きすぎじゃない?」


「だってさ、ずっと好き同士だった人たちが結ばれて……思い出したら泣けてきた」


 感動の域を超えて号泣していた。もうペットボトルじゃ抑えられないくらいの涙を流してひたすら泣いている。


「虐められてた彼女を助けたシーンも泣けたけど、その女の子が笑えるようになって一緒に映画を見に行くシーンが何故か他人事とは思えなくて……リアリティーある作品だから余計に泣けるんだよ」


「そっかそっか」


 それがリアリティーあるって感じるのは私と日向の出会いからやってることまでがそっくりだからです。


「自信を付けるって一人で部活見学行くシーンとか、本当に見守ってあげたくて」


 それにしても、本当にこれフィクションなのかな? こんな恋愛世の中にある訳ないって言ってるけど、私と日向の間で起きたことや今の状況にそっくりなんだけど。違う点を言うなら日向にロマンなんて無いってことだけど。


「大丈夫?」


 永遠に泣き続ける日向。あまりに泣き続けるから心配になってくる。そんな日向を心配しながら歩いてるともの凄い人だかりが出来ていた。百はくだらない人数だ。


「うわっ! 凄いことになってる」


 大体予想は付いていた。その人だかりの原因が私に気付いて手を振っている。ボロボロになりながら人混みを縫うように進んだ。


「映画面白かった?」


「今の状況の方が遥かにフィクションですよ」


 日本一のアイドルが私の手を握って微笑んでいる。日本一のアイドルの後ろには日本一のモデルと、学校の天使と女神が居る。そりゃ人混みがこの人数でも仕方がない。その人混みの後ろで高らかに笑いあってる日本一のアイドルのプロデューサーと私のヒーロー。携帯の画面を見せ合って自慢気に笑っている。何をしているのか一瞬で分かった。


「月奈ちゃんは凄いね」


「え? 何がですか?」


「ボクも見習わないとね」


「え? え?」


 天日先輩は私の頭を撫でながら呟くようにそう言った。


「人助け。色々大変だと思うけど、困ってる人が居たらこれからも助けてあげて欲しいな。ボクは君が誰かを助けてあげてるってことを誰よりも知っているから」


 この人は私のことをどこまで知ってるんだろう? 私のことは全然話したこともないのに、よく分からないけど見透かされてるような気がする。簡単に言うなら私のことについて知らないことは無いんじゃないかって。普通の人とは違う感じがする。


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