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月の果実は恋の味  作者: v私立桜咲学園文芸部
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第十一話 足掻いて藻掻いて

「……日向が私の誇りなんです。私は日向の真似事でやってるだけで、結局力になれてないし。日向がフォローしてくれるから……日向は凄いんです」

「ボクは、ううん。ボクやメアちゃんはキミのことを尊敬してるよ。キミみたいに見返りも何も求めず人を助けて、それでも凄いのは人であって自分ではないと言い張る。でも、それは人の域じゃない。それをするのはボクの仕事だ。キミは人らしく前を向いて必死に足掻いて生きれば良い。人らしくね」

「はい…………違う」

 天日先輩の言うことに流されかけたけど、違う。私は私に自信が持てない。だけど、今の生き方を恥だって思ったことはない。誰かの為になれなくても全力を尽くして助けるって決めたんだ。それが何の意味を成さなかったとしても私は日向の隣に居るために頑張るって決めたんだ。

「私は今の生き方を変える気はないです。天日先輩にはすべてお見通しなのかも知れませんが、私は日向と困ってる人たちの為に頑張るって決めたんです」

「……うん。それならボクたちも力を貸さないと、キミだけに仕事をさせる訳にはいかないからね。どうしても困ったときはボクかメアちゃんを頼ると良いよ。メアちゃんも良いよね?」

「もちろん!」

 普通の人じゃないのは知ってる。でも、その言葉は物凄く力強く心を支えてくれた。この先輩たちのことをよく知らないけど、信頼できることだけは確かだ。この先輩たちの言うことは絶対大丈夫だ。

「日向っ!」

「ん?」

「私もっと頑張るから!!」

「おうっ!! 俺も負けねえっ!!!」

「ありがとうございます。きっと先輩たちのお力を借りる時があると思いますが、その時は是非よろしくお願いします!」

 手を振って見送ってくれる先輩にお辞儀して、さっきの五倍はある人混みを掻き分けてボロボロになりながらショッピングモールを出た。私には特別な力なんて無いけど気持ちだけは誰にも負けない。

「さっさと来い!」

 ショッピングモールを出て一番に飛び込んできたのは、嫌がる女の子を無理やり引っ張る人の姿。体格もそこそこ大きな三十代くらいの男の人だ。金髪でいっぱいピアスしてるしタトゥーも入ってる。そんな姿に怯えて誰も助けようとしない。

「日向! これ持ってて!」

 鞄を押し付けて一直線に走った。そんな私に気付いた男の人がこっちを睨みつけて拳を振り上げた。大丈夫。私は困ってる人の為なら何だって出来る。


「せぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええいいいっ!!!!!!!!!」


 手を地面に勢いよく叩きつけて体を大きく捻りながら顔を全力で蹴った。普通の人ならこれで意識を失うはずなんだけど。

「痛ぇじゃねえか!!」

 少しは怯んだけど、ダメージはほとんど無いみたい。

「っ!」

 足を掴まれて身動きが取れない。この状況は凄く不味い。このままじゃサンドバッグ状態だ。日向もこっちに向かって走って来てるけど多分間に合わない。やっぱり私じゃダメなのかな。

「おい」

 拳がお腹に当たる直前で止まった。

「俺の生徒に何してんだ?」

「青原先生!?」

 今まで見たことの無いような表情をしている。見た瞬間に固まってしまうほど怖い顔だ。

「穗村、その行動は何も間違ってない。胸を張れ! 百点満点だ!」

 そう言って先生は男の人の顔を殴り飛ばした。体格差もあるのに軽々と吹っ飛んでいった。

「月奈! 大丈夫か!?」

「うん……青原先生、ありがとうございます」

「気にするな。あの状況で穗村が止めてなかったら、あの女の子は間違いなく連れ去られていた」


「クソ………クソがっ!!!!!」


 吹き飛ばされた男がナイフを持ってこっちへ向かって来た。ナイフを持った相手でも何度か対処したことはある。冷静に対処すれば大丈夫。

「下がってろ、穗村」

「危ないですよ! 先生!」

「心配するな。先生だから大丈夫だ!」

 ナイフを持った男との距離が十メートルを切った瞬間に男が吹き飛んでコンクリートに叩きつけられていた。

「ごめん、先生。後輩を傷付けられるのは先輩として許せなかったんだ」

「ボクの可愛い後輩を傷付ける奴は誰であろうとね」

「天日と望無か、すまない助かった」

 私、もっと強くならないと誰かを助けることなんて出来ない。今のままじゃダメなんだ。もっと頑張らないと、私と同じ思いをする人が出て来てしまう。そんなの絶対嫌だ。



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