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月の果実は恋の味  作者: v私立桜咲学園文芸部
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第一話 ヒーローと共に

助けてくれた、一緒に居てくれた、全てが掛け替えのない大事な大事な思い出で君と居る時間が幸せでたまらない。

 私は小さい頃から思ってることをはっきりと言えない臆病者で、そんな人が居ればイジメられるのも当然。私は「やめて」の一言すら言う勇気も出ずに、ただただ黙って耐えていた。そんなある日のこと、転校してきた君は私に手を差し出してくれたんだよ。

 私はすごく嬉しかった。今までそうやって手を差し伸べてくれる人が居なかったから、助けてもらったことに凄く感謝している。


「なんでこいつの味方するんだよ!」


「こいつが悪いんだよ!」


 なんてクラスのみんなが一斉に言っても、君は怯まずに大きな声で言い返してくれたよね。


「うるさいっ! お前らがこの子の敵で居るなら、俺だけでもこの子の味方で居るんだ!!」


 あの時の言葉が本当に嬉しくて、明日から高校生だけど未だにそのことを思い出す。私も君と同じ高校に行きたいって言ったら君は凄く驚いてたよね。


「俺も一緒の高校なら嬉しいな」


 なんて優しく微笑んでくれたあの日、私は恋を知りました。そして迎えた入学式当日。駅で待ち合わせしてから一緒に学校に向かう約束をしている。約束の二十分前に約束の駅へ着いたのに、私より先に居たから思わず笑っちゃった。


月奈(るな)は入りたい部活とかあるの?」


 月奈って言うのは私の事で、本名は()(むら) 月奈(るな)。これと言って特徴って言える部分は無いんだけど、強いて言うなら普通過ぎるのが私の特徴なのかも。


「ううん、全然考えてないよ。日向(ひなた)は?」


 日向って言うのが私の隣に居るこの子の事で、天風(あまかぜ) 日向(ひなた)。私の大好きな人で、私にとってヒーローみたいな存在。中学生だったあの日、日向が転校してきてくれたおかげで今の私が居るなんて言っても過言ではない。第一印象は凄く怖い人だと思ってた。金髪で髪の毛ツンツンしてるし、言葉がトゲトゲしてたし。高校入学を機に私自身も変わりたいって思ってるんだ。だから、いつかは絶対に自分の気持ちをまっすぐ目を見て伝えたい。大好きですって大きな声で伝えたい。高校を卒業するまでには。


「今日から高校生だね」


「なんか実感が湧かないよな」


 教室でそんな話をしていると時間が経つのはあっという間で、そのまま帰るか部活見学に行くかの話で教室の中は盛り上がってる。


「立花さん! 少し時間貰っても良い?」


 先輩らしき人が女の子の返事を聞く前に腕を引っ張ってどこかへ連れて行った。部活見学に行くんじゃなくて部活の方から強引に勧誘されることってあるんだ。もし私がそんなことされたらどうしよう。断れる自信ないし、辞めるって言える自信もない。


「もしああいう風になったら俺が止めてやるよ」


 なんて太陽よりも眩しい笑顔で言うんだからもっと好きになっちゃうから辛い。いつか子の好きが止められなくなったらどうなっちゃうんだろう? もしそうなったらその時は嫌でも大きな声で好きだって言っちゃうんだろうな。でも、なんか思い描くハッピーエンドとはずっとずっと遠い気がする。何が違うのかは説明できないけど、なんか違う。


「もし困ったら天野先生にでも相談すれば良いよ」


 先生が自己紹介の時にそんなこと言ってた気がする。ずっと日向の方を見てたからほとんど話を聞いてなかった。次から気を付けないと。


「一緒に部活見学行こっ!」


 今は伝えられなくても良い。君の手を引っ張って走るこの瞬間も、君と居る一瞬一瞬が私にとっての掛け替えのない大切な時間。どんな宝物よりも、どんな大金よりも価値のある時間。私のヒーローは今日も一段とカッコいい。


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