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5.小さな戦い

騒ぎが起きてる場所へと走り続けると、街の出口で複数人の男共が何かに群がっているのが見えた。


ここから見えるのは男共が街の外にいる何かに群がっているというものだけで、その何かが何なのかまでは分からない。


そこから聞こえてくるのは「出てけ」や「消えろ」といった暴言ばかりだった。

その言葉たちから察するに、男共が群がっているのは野良魔族で間違いないだろう。


「いたぞノエル、あそこだ」

「はい、あの人達ですね」


野良だとしても魔族は魔族、ぞんざいな扱いを受ける義理は無いはずだ!


俺はそいつらと話すべくそこへと近づき、ノエルは俺のすぐ後ろをオドオドしながら着いて来ている。


周りには店やら住居やらがあり、中から見ている者や陰から覗く者達が見えていた。


きっと心配そうに見ている奴らなんて殆どいないだろうし、寧ろみんな揃って男共と同じ考えを持っているはずだ。


ピリピリとした冷たい視線が俺達を貫く中、遂に問題の奴らのすぐ後ろまで辿り着いた。


「何してんだあんたら?」

「あ?」


声をかけると、中心にいたリーダー格のような男が振り向いた。

それに続くように他の奴らもこちらに振り返り睨みつけてくる。


「見てわからないか?野良を追い出してるんだよ」


「ほら」と男は間を開けて、その野良を見せてくれた。


やはりと言うべきか、そこには汚れた布の服を着て、白い髪に垂れた耳を生やした少女がぽつんと立っていた。


「シルヴィ、やっぱり来てくれたんだな。良かった」


彼女の方も俺に気づいたらしく、嬉しそうな顔に変わった。


「ジャスティスさん⋯⋯」


いつからこの状況だったのかは分からないが、辛い思いをさせてしまったな。

もっと早く来るんだった。


「ほら、これ渡しとくぞ」


持っていた小剣をシルヴィへと投げると、彼女はそれを両手でキャッチした。


「これ、剣ですか?」


シルヴィは受け取った剣を興味深そうにマジマジと見つめていた。


ノエルと同じく、彼女も剣を握ったことがないのだろう。戦闘慣れしてない魔族が二人とは、これから大変だぞ。


「ギィィイイ!!」


シルヴィの元へと歩み寄る途中、甲高い人のものでは無い雄叫びが辺りを包んだ。


「なんですかっ!?」


ノエルが更にオドオドしてしまったが、手は腰にある短剣へと伸びていた。


「この鳴き声は⋯⋯」


俺は上空を見上げた。


大人の男性よりも大きいぐらいだろうか。巨大な鳥のモンスターが三羽、羽ばたいていた。


「⋯⋯?あれはグリーンフォーゲル?」


綺麗な緑色のグラデーションの翼でバサバサ羽ばたいているそのモンスターは、グリーン大陸を代表すると言っても過言ではない鳥だ。


俺が知ってる限りでは人を襲ったりはしないはずだ。比較的安全なモンスターだと聞いている。


しかし何故あんなところで雄叫びを上げてこちらを睨みつけているんだ?


「ジャスティさん!」


ノエルが空を見ながら俺の名前を叫ぶ。


驚きながらも空を見直すと、フォーゲル達がこちらへと急降下してきているではないか!


「うおぉぉお!!」


俺は手に持った剣を鞘から抜き、急いで空目がけて斬り払った。


⋯⋯手に斬った感触は伝わってこなかった。


俺に目がけて来ていたフォーゲルは、俺が空を斬り払ったことによって軌道をずらし、俺のすぐ横へと土煙を上げて着地した。


「ギギッ⋯⋯」


威勢のいいその鳥は、こちらを睨みつけて警戒している。向けた剣を下げでもしたらすぐにでも飛びついてきそうだ。


「きゃああっ!!」

「うわあああっ!!」


睨み合いが続く場に二人の悲鳴が響いた。


「ノエル!シルヴィッ!」


二人の方を見てみると、残りの二羽それぞれが二人を押さえつけようと急降下している所だった。


なんとか二人は避けれた様だが、このままでは危ない、早く助けに行かなければ。しかし目の前には俺を獲物として睨み続ける奴がいる。



――ッ!?



「がっ!?」



気がついた時には奴の体は目と鼻の先にあり、力強いタックルが俺を地面へと衝突させた。


「ギッギッギィ!」


そのまま鋭い爪の生えた片足で俺の体を押さえつけ、大きく鋭いクチバシを開いた。


いかにも殺傷力が高そうなそのクチバシで俺の顔をついばもうとしているのだろう。


もしもそんな事をされたりでもしたら致命傷になりかねない、そんなのはゴメンだ!


「はぁぁああ!!」


左手に魔力を集中させ、奴の顔に手を向ける。

手の大きさを超える程の炎の塊を作り出す。


これを顔面にぶち当ててやる!


「ギギィ!?」


その炎に奴は気づいたのか、荒らげた声を上げた。


飛び退こうと俺の体から足を離し、翼を羽ばたかせようとしている。


「逃がすか!」


俺は左手に溜まった炎を奴めがけて撃ち放つ。


炎は見事に奴の頭に命中して爆発した。

その爆発で奴はその巨体を反らせ、背中から地面に倒れた。


トドメを刺すなら今しかない!


急いで立ち上がると、右手に持った剣を力強く握りしめて雄叫びを上げながら駆け出した。


「うおおおおおッ!!」


奴は体を捻って体勢を整え、今にも飛び立とうとしている。


俺は奴めがけて跳躍し、両手で剣を逆手に持つ。


「くらえぇぇっ!!」


その剣は綺麗に奴の背中へと突き刺さり、奴は声にもならないような悲鳴を上げてぐったりと動かなくなった。


よし、なんとか一体やっつけたが中々に危なかった。


早く二人を助けなければ!


深く突き刺さった剣を抜き、二人の方を見る。


「うわわっわっ!」


ノエルは短剣を構えて、飛びかかるフォーゲルを避け続けていた。


「ノエル!そっちは頼んだぞ!」


返事は返ってこず、視線はフォーゲルを捉え続けていた。返事をする余裕は無いらしい。


だがノエルが避け続けていてくれるなら好都合だ。シルヴィを助けるのに邪魔が入らないって事だからな。


「た、助けてっ!ジャスティスさん!誰か!!」


シルヴィの助けを呼ぶ声が聞こえた。


彼女には剣を渡したはずだったのだが、彼女は鞘に入ったままのそれを両手で握りしめているだけだった。


「ギャッギャッギャッ!!」


突進を繰り返すフォーゲルをなんとか避け続けているシルヴィだが、このままでは時間の問題。


敵に向かって小さな炎を連射しながら、俺はシルヴィの下へと走り出した。


「大丈夫か、シルヴィ?」


駆け寄ると、シルヴィは震えた目で俺を見つめた。


「ジャスティスさん⋯⋯」


励ましの言葉でもかけてやりたいところだが、今はそんな事言ってられない。


このままでは誰かが死んでしまう、そんなのは嫌だ!


「来いッ!その首をぶった斬ってやる!」


「ギィッ!!」


言葉の意味を理解したかの様に、俺が剣を構えるのを見て奴はクチバシを開いてこちらへと突進を始めた。


奴は俺の頭を噛み砕くつもりなのだろう。こいつとの戦いはこの一撃で決まる。



「――ハァッ!!」



俺は奴の首元目がけて滑り込むように斬り払った。


綺麗なぐらい気持ちのいいその一振りは、奴の首元をおもむろに抉りとった。


「ギ⋯⋯」


小さく鳴き声を漏らすと、ドサッと地面へと倒れ込み、ピクリとも動かなくなった。


これで残りは一体、ノエルを助けるだけだ。


ノエルの方を見ると、残りの一体はこちらの様子に気づいたのか後ずさりをし始めた。


しかし、なかなか飛び立とうとはしない。逃げるなら早く逃げてくれた方がこちらとしてもラクだ。


仲間が二人もやられたんだ、何故逃げない?


「ギギギ⋯⋯ギ⋯⋯」


大きな翼を広げてやっとそいつはどこかへと飛び立って行った。


それを近くで見ていたノエルは、さっきまでの緊張感からかストンと座り込んでしまった。


「はぁ、なんとかなったな。ノエルー?大丈夫かー?」


シルヴィを連れてノエルの所まで行くと、ノエルは疲れた顔をしながらあははと笑っていた。


「平気ですよ。それより、そちらの方は大丈夫ですか?」


ノエルはシルヴィを見つめており、シルヴィは俺を見つめていた。人見知りだったりでもするのだろうか。


⋯⋯まぁ、人を警戒するのは悪いことではない。少し説明してやるか。


「こいつはノエル、俺の連れの使い魔なんだ。信頼できるかどうかは昨日会ったばっかだしなんとも言えないが、多分良い奴さ」


なんとも言えないという部分でノエルは口をムッとしてしまった。


「ボクはジャスティさんのこと信頼してますよ。ボクとご主人様を助けてくれましたから」


「悪い悪い、冗談だって。嘘つけなさそうな顔してるもんな?」


更にぷうっとしてしまったノエルだったが、シルヴィに見つめられるとすぐにその顔をやめてしまった。


「あっ、えっと、お名前を聞いてもいいですか?」


その言葉を聞いて、シルヴィは再度俺の顔を見つめた。信用できる者なのかもう一度確認したいのだろう。


俺がコクリと頷くとシルヴィもコクリと頷き返し、ノエルに向けて口を開いた。


「野良魔族の⋯⋯シルヴィです」


それだけ言うと、体をこちらへと向けてしまった。皮肉のように言ったその言葉だったが、ノエルは不思議そうな顔をしながらこちらを見つめていた。


そうか、こいつ野良魔族を知らないんだ。


説明してやってもいいが⋯⋯シルヴィの前で話す気にはどうしてもなれなかった。


「⋯⋯そうだ。ノエル、悪いがフレイを探してきてくれないか?どうにも遅すぎる」


「えっ⋯⋯と、はい。分かりました」


顔はハテナなままだったが、ノエルは渋々街の中へと走っていった。


シルヴィと話すにも、二人だけの方が話しやすいだろうしな。

先の話ばかり考えて今の話が中々書けない。

あると思います。

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