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1.旅の途中のハプニング

日が西へと沈み始め、赤いような、橙色のような、綺麗な空の下で俺は空の色よりも赤く濡れた剣を川で洗っていた。


王都ファルシアに向かう旅の途中の街で買った素朴な剣だが、モンスターの一匹二匹程度から身を守るぐらいには役に立った。


川の水で綺麗になった剣をタオルで拭くと、剣を鞘に収めて腰を上げた。

ファルシアまではまだ遠いが、もう日が暮れるのも時間の問題だ。確かもう少し歩けばベゴニアという街が見えてくるはずだ。今日はそこに留まって明日また向かおう。


川の側の街道へと戻ると、ベゴニアへと足を進め始めた。

村を出て一日では着かないだろうとは思ってはいたが、思っていたよりも近づけた。ベゴニアとファルシアの距離はさほど離れてはいない。明日になればすぐに目的地に着けるだろう。


「だっ、誰かっ!誰かっ!」


俺の背後からタッタッタッと物凄く急いでいるような足音と共に聞こえてきた声は、ただ事ではなさそうな言葉を発している。


振り返ると、そこにはぴょこんと犬のような耳が生え、これまたぴょこんと尻尾の生えた「魔族」の少年だった。


「ん、どうしたんだ?」


少年は息を切らしており、助けを求めて全速力で走ってきたというのは容易に想像できる。ガクガクと震えた足と怯えきった顔を見た感じ、助けを求めていることも分かる。


「はぁっ⋯はぁっ⋯ボ、ボクの主人がモンスターに襲われてて⋯⋯、お願いしますっ!助けてください!」


主人というのがどういう人物なのかは知らないが、「使い魔」と見られる魔族が主人のために助けを求めてきたということは、仲の良い二人なのだろう。助けない理由はない。


「分かった。お前の主人はどこにいるんだ?」


俺の言葉を聞くと、その子の顔が明るくなった。


「あ、ありがとうございますっ!こっちです!」


少年は来た道を走り出した。俺もそれに続くように走る。


三百メートルぐらい走っただろうか、道から外れた原っぱに狼のような姿をしたモンスター四匹がひ弱そうな男性を取り囲んでいるではないか。男性は細身の剣を構えて威嚇しているようだ。


「ご主人様ーっ!大丈夫ですかっ!?」


魔族の少年が主人とやらに叫ぶように声を上げると、その狼達はこちらを睨みつけるように視線をこちらへと向けた。


「ひっ!」


少年の足はまたガクガクと震えており、やはり怯え切ってしまっている。

武器も持たずに構えもせずに、どうするつもりなのだろうか。

よく見てみると腰には鞘に収められた小さな短剣のような物をつけているじゃないか。この子にも戦ってもらわないと厳しいぞ。


「戦えるな?」


震えたままの少年の顔を見るも、返事は帰ってこなかった。やはりこの子、まだ戦いの経験が無いのでは⋯⋯?

そうこうしている内に狼の内の一匹がこちらへとゆっくり向かってきてしまっていた。


「ここで戦わなきゃお前の主人は助からないかもしれないぞ、戦わないのか?」


そう尋ねるも、返事は沈黙のままだった。目線は短剣へと向いたが、刃物を持つことも怖いのかもしれない。

だが、この状況ではそんなこと言ってられない。


俺は右手に魔力を集中させると、すぐそこまで迫ってきていた狼に向けて小さな炎の塊を作りだし、撃ちはなった。

見事直撃し小さく爆発したのはいいが、狼はピンピンした様子のまま仲間の元へと戻っていった。


今の攻撃で他の狼達も男性から離れて一箇所に固まりだした。直ぐにでも攻撃を仕掛けてくるだろう。

狼達の様子を見てその男性はこちらへと走ってきた。


「どなたか存じませんが助かります!」


「気にすんな。それよりこの子、戦闘経験は無いのか?短剣を手に取るのを拒んでいるように見えるが⋯⋯」


「実は、この子は召喚したばかりの子で、護身用に短剣を持たせてはみたもののこの様子だと戦うこと自体を拒んでしまっているみたいで」


苦笑いをしつつ淡々と説明をしているが、戦うことを拒まれてしまっては困る。


「そうは言ってもこの子が戦ってくれないと辛いぞ。今回も、きっとこれからも」

「そう、ですよね⋯⋯」


男性は少年の傍に近寄ると、落ち着いた声で優しく語りかけた。


「ノエル、彼の言うとおり君にも戦ってもらわないといけないみたいだ。本当はさせたくないんだけど⋯⋯」

「ご主人様⋯⋯」


男性の言葉を聞いて、少年は鞘から短剣を抜き取り両手で握りしめて見つめた。


「アオォーン!!」


彼の決意はまだ固まってはいないだろうが、奴らは待ってくれるはずも無く、一匹が吠えたのを合図に全員がこちらへと駆け出した。


「来るぞっ!構えろ!」


俺達は奴らに剣を構えるが、奴らの勢いが弱まることはなかった。



――――――――――――――――――――――――――



「はぁっ⋯はぁっ⋯。お、終わった⋯⋯?」


辺りには血が飛び散り、四匹のモンスターの死体が転がっていた。


良かった、なんとか勝てた。


「ふぅ⋯⋯、二人とも無事か?」


俺はほぼ無傷で終わらせることができたが、二人は大丈夫だろうか。特に戦闘経験の無かった少年は心配だ。


「僕はなんとか、大丈夫です」


男性は血に濡れてしまった剣をブンブン振って血を飛ばそうとしている。寧ろかわいてしまって逆効果ではないか?


「ボクも大丈、夫、です」


声を詰まらせるように話す少年はやはり無事ではなかったようだった。

少年の足を見てみると、荒々しい歯型がついており、そこから血が流れ出していた。


「全然大丈夫じゃねえじゃねーか!」

「ノエル!あぁ、どうすれば⋯⋯」


男性は少年の怪我を見るや、慌てふためき取り乱してしまった。


はぁ⋯。使い魔が使い魔なら主人も主人だな。


母お手製の革でできたポーチからガーゼを取り出すと、足の傷口に強くキツく巻き付け始めた。


「うっ⋯⋯」


少年は痛さからか声を漏らした。


そりゃあ痛くないわけもない。しかし街につくまで出血しっぱなしではそれこそ危ないだろう。止血だけでも幾らかはマシなはずだ。


「男だろ?このぐらい我慢しろ、な?」

「⋯⋯はい」

「良い子だ」


ガーゼを巻き終えると、主人の男性が深く頭を下げた。


「怪我の治療までしてもらって、なんとお礼を言ったらいいか⋯⋯。本当にありがとうございました!」


礼を言われるのは悪い気分ではないが、まだ礼には早すぎないか?


「ところで、どこに向かうつもりだったんだ?夕暮れ時にこの辺を歩いてるってことは、ベゴニアに向かうつもりだったってことでいいのか?」


「はい。ファルシアに向かう途中だったんですけど、もう暗くなるし、ベゴニアで宿を取ろうかなと思って歩いていたところを襲われてしまって」


ふむ、目的地はベゴニアどころか、ファルシアまでも同じだったとは。


「おおっ!俺もファルシアに向かう旅の途中なんだ。奇遇だな!」

「ホントですか!?」


男性はなんだか嬉しそうに顔をほころばせると、それを見て少年も優しく微笑んだ。とにかく、助けられて良かった。


「とりあえずベゴニアに向かおうぜ、暗くなるとモンスターが活発になるからな。長居は無用だ」

「ええ、勿論です。ノエル、歩ける?」


男性が尋ねると、少年は怪我をした足を見つめながらゆっくりと歩を進め始めた。


「っ⋯、痛みますけど、ゆっくりなら⋯⋯なんとか」


少年は歩く度に痛そうに顔をしかめる。歩く度に出血している箇所を力んでしまうのは危ないかもしれない。


何よりも、この心優しそうな顔をした少年が苦しんでいる顔なんて、俺は見たくない。


俺は少年に背を向け、片膝をついて腰を下ろした。


「ほら、宿に着くまでおぶってやるよ」

「えっ!?そんな、ボクは大丈夫⋯ですから⋯⋯!」


恥ずかしがってるのか純粋に遠慮しているのか、俺からは顔を見ることができないため分からないが、遠慮している場合ではないだろうに。


「僕では君をおぶったり抱えたりするのは無理だろうし、ここはお言葉に甘えさせてもらって、ね?」

「うぅ⋯」


男性の言葉を聞いて、ようやく少年は俺の背中に身体を預けてくれた。完全に体重が乗りきったのを確認すると、少年の足に腕を回して立ち上がった。


「ボクのせいでご迷惑を⋯ごめんなさい。重くないですか?」

「気にすんな。もしも重くたってここには置いていけないだろ?別に重くはないけども」


ありがとうございますと返事が返ってくると、少年は強ばった体から力を抜いた。


「じゃあ行くぞ。怪我人がいるから急ぎはしないが、それでも早く街に着きたいからな」


俺が歩き出すと、男性も俺の横を歩き出した。


ベゴニアに着く前にハプニングが起きてしまったが、失う物も無くて良かった。あるとしたら、剣を洗った時間が無駄になってしまったことぐらいか。


「そうだ、ご挨拶が遅れましたね。僕はフレイ・ソディカル。その子はノエルです」


自己紹介か。それならばこちらも名乗り返すのが礼儀ってもんだよな。

俺は男性の目を見て口を開いた。


「俺の名前はジャスティス・マルドゥーク。ジャスティって呼んでくれ」

うーん難しいねえ

細かい設定とか考えきれてないし、書く時は行き当たりばったりだし(笑)


正直いつまで続くか分からんよね(ぇ)

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