魔法少年 なれる☆オレが?
親父が俺にも分かりやすい様にゆっくりと、しかしガキが眠くならないようなスピードで話し始める。もっと早く話せよ…と思ったが、よく考えれば今の俺はガキそのものであった。そりゃゆっくり話すわな。
「魔素ってのはな、この空気中に漂っている目に見えない物だ。例えば…コレは貴族のお得意から聞いた話なんだが…」
親父が話を区切って、何か迷っているような表情を見せる。勿体ぶらずにさっさと教えてくれよ親父。
まあ…これで魔法は理解できたとして。問題は…魔法が使えるか。そしてそれが、何に使えるかだ。勿論、どこぞのドラゴンなクエストのメラ○ーマの様な火球が飛ばせたりするならば、俺は魔法を諦めると思う。何故か?そんなもん使えたら戦争になったら兵士として駆り出されるような気がするからだ。
だって、電気がないし、かまどの燃料は薪。つまりエネルギー革命だったか…何か忘れたが、まだ石油や石炭すら出ていない世界だ。中世ヨーロッパの様に、徴兵制があってもおかしくない。
戦争はゴメンだ。それが、敗戦国である日本人の性なのか、それとも俺のチキン気質なのかはよくわからないが。
「【魔素とは炉であり、器である。魔力は薪であり、液である。】って…あぁ、そうか。魔力も知らねぇよなぁ…」
「そんな白い目で見ないでくれよ」
また新しい単語だが…マリョク?あれか、MPのことか。…それで何だった?
【魔素は炉で器、魔力が薪で液】?…なんかわかりづらく言われてるが、つまり…
「その魔素に魔力ってやつを注げばいいのか?」
「まぁ、大まかに言えばそうだ。だが、魔力を知らんと魔法は使えん。今から詳しく説明するからしっかり聞けよ?」
俺はわかったと相槌を打つ。すると何かを思い出す様にゆっくり親父が話しだした。
「魔素ってのは、空気みたいなもんでどこにでもあるもんだ。異国だろうと、辺境の地でもな。だが魔力は違う、コイツは人によって全て違うんだ。個性と言い換えてもいい。魔素や魔力には属性があり、基本は全部で5つ。火、水、風、土、これらを基礎属性と呼び、これらの属性のみの魔法を基礎魔法と言う。」
基礎魔法が火、水、風、土…か。なるほど、どこの魔法にも出てくる基本的なものだな。そしてこれらの魔法が基礎魔法…と。ん?でも一つ属性が足りなくないか?
俺の顔を見ていた親父がニヤリと笑う。俺が説明の矛盾に気付いたことを表情で読んだらしい。俺の頭をゆっくりと頭を撫でながら再び話し出す。
「気付いたか、偉いぞ?そう、基礎属性は5つ、基礎魔法は4つ。ならば残り1つ属性が残っている、それが無だ。だが、無属性の基礎魔法はない。何故なら無属性は魔素の属性だからだ。魔法は無属性の魔素にその人が持っている魔力を混ぜたものが魔法になる。」
「ちょっとまってくれよ、じゃあ魔力って…」
「そう、人によって質が異なる。質が良ければ良い程、使える魔法の質や使える魔法も、より強い魔法が使える。逆に、保有魔力量が多くても質が悪ければ普通より多く魔力を喰うし、質も落ちるって事さ。だから自分と全く同じって奴は少ない。誰しもの個性が出るからな。故に魔法を使いたきゃ、まずは適正属性を検査せにゃならん。1回500シルブでできるから、今度検査に連れて行ってやるよ。」
理解できたか?と親父が聞いてくる。理解はできたが…これ適正無けりゃ詰むんじゃね?
いや、そんな事考えちゃ駄目だ。一瞬過ぎった悪い考えを即座に打ち消す。きっと使えるさ、多分ね。
使えなかったとしても、生活には困らないだろうし、うん。
「あ、それとシルブってお金の単位?」
「そうだ、1000シルブで1ゴルドだ。てかお前、武器屋の倅なんだから金の単位くらい…ってまだお前3歳だったか?…逆に3歳でここまで理解できる事を褒めればいいのか?うーん…」
親父が頭を抱え始めた、そこは褒めてもらいたい。
俺は前世でも理解することは得意だったんだ。得意と言うのもおかしな話だが…とにかく理解力はある方だと自負している。だから褒めてもらいたい。
決して…決して怒られたくないとか、髭面のおっさんに怒鳴られると怖そうだとか、そんな不純な動機では一切ない…いいね?
さて、整理だ。
魔素に魔力混ぜたら魔法、マル
…つまりカ○ピス理論?水が魔素で、カル○スが魔力。んで魔力が濃ければ濃いほど出来上がった魔法は強くなる、と。…何だ簡単じゃねぇか!コレなら俺でも使えるな!
使えるよね…?
「知らん、それはお前の才能次第だな…」
「心を読むなよ、親父」
「口に出ているぞ…ったく、そういう所はアイツの生き写しみたいだぜ」
頭をボリボリ掻きながら、俺を見つめる親父。だが、その目は俺を見ているようで俺ではない、何処か遠くの誰かを見つめる様に瞳を細めている。過去に回想するのは良いが、頭を撫でていることを忘れないで欲しい、指が目に入りそうだ。
…仕方がないので声をかけるとするか。
「親父、どうした?」
「…いや、なんでもない」
そういうこと言うやつは絶対なんでもあるんだよ、俺の人生経験上絶対なにかある。そして、その何かがとてつもなくややこしい話だったり、面倒くさい話なのはもはや確定事項だ。だから…俺は聞かないよ?
次回、彼の魔法とチキンが合わさります(最強になるとは言っていない)