駅のド真ん中で理不尽を叫ぶ。
この作品は初心者がちょっとした出来心で書いた二作目です。
「……おかしい」
最初に違和感を覚えたのが今朝の事だ。
普段、両親は共働きの社畜で早くから会社に行ってしまうのだが、今朝は何故か母親が家のソファーで寛いでいたのだ。
妙に思った俺が仕事はないのかと聞けば何のことだと怪訝な顔で言われた。
そして、そんなことより早くパンを焼けと引っぱたかれた。解せぬ。
「……おかしい」
次に違和感を覚えたのも今朝の事だ。
うちの妹には定評がある。
猪突猛進の活発的で騒がしい男勝りな空前絶後のヴァカであると。
そんな妹に普段、挨拶をすると
「よう、兄貴。いいオカズは見つかったか?」
などとニヤニヤしながら兄の性事情に平然と首を突っ込んでくるのが常である。
まったくお下品なこと。
だが、今朝は挨拶するとキラキラと輝くいかにも高貴なオーラを纏いながら液体窒素よりも冷たそうな視線でこちらを嘲るように見ながら
「あら、おはようございます兄様。今日も一段と冴えませんね」
などと言葉遣いは慎ましいが内容が辛辣という妙な挨拶をされた。
うちの妹には定評がある。
横行闊歩で自己中心的な超絶怒涛のヴァカであると。
妹の妙な言動はいつものことなのだ。俺は特に気にすることもなくスルーした。
が、スルーしようとした俺は早く紅茶を沸かせと引っぱたかれた。解せぬ。
「……おかしい」
次の次に違和感を覚えたのも今朝の事だ。
学校に行くとクラスの様子がなにやらおかしかった。
普段、孤高主義(大嘘)の俺はクラスで周囲に影響されないため(大嘘)自ら(大嘘)常に一人でいたのだ。そんな孤高主義者(大嘘)の俺でも感じるほどに強烈な違和感を覚えたのだ。普段、周りを見ていないから明確には分からなかったのだが、それについてたまたま、そう、たまたま近くにいた先生に聞けば何故か怪訝な顔をされた。
そして、そんなことよりをプリントを出せと引っぱたかれた。解せぬ。
「……おかしい」
そして俺が重大な事実に気づき、確信したのはつい先程トイレで用を足していた時のことだ。
授業中に便意を催しトイレに駆け込むも出るに出なかったので座りながらスマホでネット小説を読んでいたのだ。
そのネット小説のランキングに、
───────『男女比物語』
というタイトルの官能小s……げふんげふん、小説があったのだ。
なんでも、男女比が大幅に片寄った世界、男が非常に少なく女の子が溢れるほどいる世界に来てしまった主人公がたくさんのかわいいおにゃのことイチャイチャちゅっちゅするというなんとも羨まけしからん内容の小説だった。
俺と代われ、いや、ほんと代わってください。
閑話休題
俺がその『男女比物語』を読んで絶さn……じゃなくて暇つぶししていたのだがそこでふと、閃いたのだ。
もしかして今朝から感じていた違和感って……
気づいた俺は危うくスマホをトイレに落とすところだった。
昨晩からの違和感が解消されてスッキリしたが、ついでに出るに出なかったブツが出てスッキリした。
おお、ダブルでお得だな。
テンションはMAX!怖いものなんてないぞォ!
それに気づいたその時の俺はもう無敵だった。
───────何せここは男女比物の世界なのだからッ!
そう、男女比物の世界だ。
男が優遇される世界!片寄った男女比!
かわいい女の子がいっぱいいる、一夫多妻、ハーレム、酒池肉林、他にだってやりたいことは沢山ある。
男の夢だろ?
俺さおっぱいに溺れるのが夢だったんだ。
ふっ、それも今となればただの夢じゃあない。俺がおっぱいに溺れるのも時間の問題だなっ!
───────う〇こしてる場合じゃないッ!
おっぱいのことを考えるといても立ってもいられなくなった俺は尻を丁寧に拭いてから外に飛び出し、人気の多そうな場所、街の中央にある駅へと向かった。
鼻歌を歌いながらご機嫌で駅に向かった俺だが、またしても妙な違和感を覚えた。
が、俺は特に気にすることもなく駅へと走った。
今思えばそこでしっかり違和感について考えていれば未来は変わっただろう。現実は非情である。
そして違和感が確信にいろんな意味で変わり、俺が世界の中心で理不尽を嘆いたのが今の事だ。
駅までやってきた俺はどこかで聞いたような気がする三択問題の答えを思い出しながら呆然としていた。
右見ても男、左見ても男、前見ても男、後ろ見ても男、男、男、男男男男男男男男男男男男男……
圧倒的なまでの男ッ!野郎の海ッ!男がゲシュタルト崩壊しそうだ。
そんな野郎の海に揉まれる野郎は俺である。
あるぇ?おかしいな。なんで男がこんなに……?
目を擦ったり、頬を引っぱたいたが、なにも変わらない。
顔が痛いだけでした。
赤く腫れた頬を撫でながら、ちょっと冷静になってスマホで調べてみると
「……うそん」
───────世の中都合の良いことなんてないのさ。うまい話にも裏があるだろう?それと同じさ。ははっ。
友人が言っていたことを思い出した。
確かに男女比物だ。
この世界の男女比は9対1。
そこだけ見れば最高だろう。女の子が溢れるほどいそうだ。おっぱいに溺れるのも夢じゃないだろう。
ただし───────男が9で女が1の比率。
つまり、男が腐るほどいて女が極端に少ない世界だ。
年齢=彼女いない歴の新品未使用童貞健康優良児の俺でもきゃわいい彼女の一人や二人余裕でできると思っていました。
酒池肉林もたわわなおっぱいに溺れるのも夢じゃないと思ってました。
ところがどっこい現実はどうだ?
夢のまた夢なんてレベルじゃあない。
そもそも普通に考えればそんな都合の良い話があってたまるか。友人の言っていたことを忘れたのか。しかし、あの時の俺は大変興奮していていろいろと大切なことを忘れていたのだ。
なに?一夫多妻?ハーレム?おっぱい?
「のぉ……」
何それおいしいの?
「───────ッおっかしィだろォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?」
駅のド真ん中で頭を掻きむしりながら奇声を発した俺に周囲の男どもが怪訝な顔をしているが文句は言われまい。いや、言いたくても言わせんぞ。
さて、大事なことなので二度言う───────
───────現実は非情である。
さて、この作品は初心者がちょっとした出来心で書いた二作目なのですがいかがでしたか?
面白かったーと思っていただければ幸いです。