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タイトル未定

登場人物


・萩ノ多喜はぎのたき

高校二年生、男子

小学校の頃に書道教室に通っていた、神童と呼ばれていた。今は筆を持つことも、ペンで文字を書くことすらできない。

授業中にノートをとることができない。なのに成績が抜群にいいから、教師や周りの生徒たちから反感を買っている。

授業の内容を暗記することに必死で、頭を使いすぎて、常にイライラしている。


飛水京ひすいきょう

44歳男性、印刷会社の組版スタッフ

書道教室を開きながら書家として成功する夢を見ていた。知人の家の襖や表札に書を書いたりして謝礼を貰っていた。

教師には娘の飛水涼や萩ノが通っていた。いちばんのお気に入りが萩ノで、萩ノの書だけを額縁に入れて飾っていた。

路上で三十万も稼いだ萩ノの才能を間近に見て、筆も持つことを止めた。その際に、習字教室の壁に飾ってあった萩ノの書を燃やす。


飛水涼ひすいりょう

京の娘で、萩ノと同じ高校、同じクラス。女子

全国学校書初中央展で毎年賞をもらっている

文化祭やらイベントがあるたびに、垂幕にスローガンやらを書かされる

自分の技術が人から必要とされていることは嬉しく思っているが、萩ノに自分の書いたものを見られていると思うと胸の奥がズキリと痛む。

今は萩ノとの交流を絶っている。


あらすじ


飛水京は都心より少し離れた東京の下町に、書道教室を開いていた。妻の飛水雅火、娘の飛水涼とともに貧しくも幸せに暮らしていた。書道教室には涼の同級生の萩ノ多喜がいて、京は多喜の才能を買っていた。

ある日、飛水雅火が重い病気を患っていることが発覚した。京はたった数十万円の入院費用を払う余裕もなかった。雅火の実家にお金を出してもらい事なきを得たが、そのことをきっかけに京は書道教室を閉め知人の紹介で印刷会社に就職した。

萩ノは路上で自分の書いた書を売り、雅火の病状が再び悪化した時に備えようとした。たった一ヶ月で稼いだ金は三十万にものぼった。萩ノはその金を京に渡そうとするが、京はやんわりと受取を拒否した。それ以来、京は書を書くことをやめてしまった。

ある日、部屋に隠していた萩ノの三十万が親に見つかる。母親は萩ノに再び路上パフォーマンスすることを強要した。学校にも行かせてもらえずに萩ノは毎日路上で書を書いた。やがて父親も母親も仕事を辞めて、萩ノの稼ぎに頼るようになった。両親は荒れ果てた生活の末に離婚し、萩ノは父方の祖父母の養子になった。それ以来、萩ノは書くことをやめた。


飛水涼は高校二年生になった。同じクラスには萩ノもいる。京と萩ノが書をやめた後も、涼だけは続けていて賞をたくさんとっている。萩ノは書どころか字を書くことすらやめてしまい、周りから変な奴だと思われている。涼は昔抱いていた憧れの気持ちなど忘れてしまっている。雅火はすっかり健康体になっていて、京は会社勤めに励んでいる。


ある日の放課後、涼は萩ノにスコーンを渡す。雅火の頼みだから仕方ないという気持ちだった。萩ノは雅火の手作りスコーンを懐かしんで、嬉しそうに頬張った。

文化祭シーズンになり、涼はたくさんの仕事を任される。校門前に飾る看板や垂れ幕に大きな筆で文字を書かされたり、その他にも大量の仕事をふられた。涼はスコーンを口実にして萩ノに手伝ってもらおうとする。久々に筆を持った萩ノは一文字書いただけで貧血で倒れてしまう。通りがかった剣道部の男子が、萩ノをお姫様だっこして保健室まで運んでいく。付き添ってきた美術部の女子は、「ぐへへ」とよだれを垂らしていた。萩ノが目を覚ますと、剣道部と美術部は保健室を後にした。涼は萩ノの傍に腰掛けて謝罪した。萩ノの過去を知っていたくせに、軽い気持ちで筆を持たせた自分を恥じた。「去年も文化祭の時期に涼が大変そうにしてたのずっと見てたから、俺も手伝えればよかったんだけど……ちょっとキツいみたいだ。もう何年も昔のことなのに、いつまでも引きずって、ほんとバカみたいだよ」と萩ノは弱々しくつぶやく。涼はなんて返せばいいかわからずに「またお母さんのスコーン持ってくるね」とだけ言った。まだ作業は残っているからと、後ろ髪を引かれる思いで涼は保健室を後にする。入れ違いで生徒会長がやってきて心配そうに萩ノの髪をなで始めた。


涼は憮然とした気持ちで仕事をこなしていく。保健室での生徒会長と萩ノのやり取りが心に去来する。

萩ノが一文字だけ書いた『呪』の文字を見つめる。それはお化け屋敷で使う安物の提灯に書かれていた。

昔はあいつに憧れていたなあ、と思いを馳せため息をつく涼。しかし『呪』の文字を見てノスタルジックな気分に浸っている自分がなんだかバカらしくなってきてひとりで笑う。

「なに笑ってんだ?」と剣道部に声をかけられ、新しい依頼を受ける。「こないだは萩ノのこと運ぶの手伝ってやったんだから」と言いくるめられ涼は断れなかった。

垂の部分に名前を書いている途中、剣道部は「ずっとなんか口実がないかなって思ってたんだ。飛水に俺の名前書いてもらいたくてさ……」と頬を染める。そして文化祭が終わった後にデートに行かないかと誘われる。戸惑う涼に、返事は文化祭の最終日に教えてくれと言い残し剣道部は立ち去る。「なにその猶予期間、その日まで考え続けろってこと??」と頭を抱える涼。提灯に書かれた『呪』の文字を見て苦笑する。


つづく

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