全てを紡ぐ始まり
2027年9月24日、日本は今も変わらず存在している。
10年前は少子高齢化が騒がれていたが、今ではだいぶ持ち直し、人口も1億人まで戻ってきている。
科学技術はそれほど進展はなく、強いて言うなら、工場が完全機械制になったくらいだろうか?
そうした変わりのない日々を過ごしながら、秋山 暁人は今日、タイムマシンのコンクールに来ていた。
このコンクールでは、タイムマシンを研究する若者や、平行世界、いわゆるパラレルワールドの研究をしているものが、研究して来た論文を発表するというものだ。
暁人は20歳だが、初めて参加する。
ようやく、長年続けて来た研究が実り始めたのだ。
だから、台本を書き、少しでも改善されるのであれば、それを研究に役立て、さらに完成形へと進化させるという意気込みを込めて来ていた。
そのために何度も台本を読み直し、ここをどうやって説明しようかとか、ここの部分はこうやって説明した方がわかりやすいとかひたすらに考えてきていた。
そうして、朝早くに来て、待合室にも入る時間よりも早く来て、廊下をウロウロしながら、自らの論文を読み直していた。
これは、秋山 暁人の一世一代の勝負だ。
この結果次第で暁人の実現したい夢が実現できるかがかかっている。
というのは言い過ぎかもしれないが、それくらいの意気込みで来ていた。
廊下をウロウロしながら、さらに論文を読み込む。
そして、ちょうど廊下のまがり角に差しあたる所で人にぶつかってしまった。
その瞬間、
「きゃっ!」
という声と共に暁人の腹あたりが冷たくなった。
暁人は声がした方を向くと、赤みがかった茶髪のロングストレートの女性が絡んでいた。
「すまない。どこか怪我をしてないか?」
周りから変人扱いされる暁人ですら、女性にぶつかってしまったのには申し訳ないという気持ちで謝罪しながら、女性の方に手を差し出す。
「こちらこそすみません。」
女性はそう言って暁人の手を借り、立ち上がる。
女性の身長は暁人の頭一つ分低く、すらっとした脚の黒タイツが印象的な女性だった。
「すみません。コーヒーで服を汚してしまって。」
女性にそう言われて、暁人は自分の状況をそこで初めて認識した。
先程から冷たかった腹の方はコーヒーがかかっており、綺麗な物を厳選して選んで着てきた白衣には茶色の大きなシミができている。
さらには先程まで自分が手に持っていた論文は地面にバラけ、見事にコーヒー漬けが完成していた。
これは非常にまずいことになった。
論文の方はまだどうにかなる。
コピーもあるし、最悪なくても内容は全て頭に入っている。
しかし、白衣の方は問題だ。
白衣は貧乏な暁人には替えがない。
この茶色のシミの付いた白衣のままコンクールに出ることができない。
「あの……大丈夫ですか?」
どうやら顔に出ていたらしい。
女性が心配そうな顔をして聞いてくる。
彼女の心配そうな顔を見て、決心がついた。
今日はやめておこう。
「はい。大丈夫ですよ。」
苦手な愛想笑いをしたせいで、女性も少し変に思ったのか、訝しげな顔をしていたが、暁人がしゃがんで、論文を拾い始めると、女性も論文を拾うことを手伝ってくれた。
その時に目に入ったのだろう。
「これは……。タイムマシンですか?」
「……。さあ?」
いきなりのことだったので少し適当な答えになってしまった。
「さあ?って……。まあ、いいです。こういう論文を持っているってことはあなたも今日のコンクールに出るんですか?」
「いえ、今日は出ません。」
咄嗟のことで嘘をついた。
出る予定だったが、この汚れのせいで出れないと言えば、この女性に余計に絡まれてしまう。
帰ると決めたのだから、素早くここを立ち去りたいのだ。
手早く論文を集め、乱雑にまとめあげ、
「すみませんでした。」
そう言って、そそくさと立ち去る。
とりあえず、帰りにはいつものコインランドリーによって洗濯することにした。
この作品はかなり考え込む必要がありますので更新はかなり遅くなります。
あと書き方変えてみました。