結末
それから、私達はその場から脱出した。
人質になっていたらしい王子をとりあえず回収して、地上を目指す。
外に出ると夕暮れ時だった。
ただ今日の出来事は、私自身も都市で今日の件は連絡しないといけない。
明日私の別荘で事情説明も含めて話し合いをしましょう、そんな話になる。
一応は元婚約者なので、人質王子は私が回収した。
こうして別荘に戻ると別のもんだが発生していた。
メイドが何人もいなくなっている……“彼等”の仲間だったのだから仕方がないが。
けれどこれからは先ほどの魔法で調べられそうだ。
次はまともなメイドを雇おう、そう決めて私は都市の方と連絡を取る。
すべてを聞いた母は深くため息をついて、
「勝手に“冒険”に出ていた点に関しては、今は何も言いません」
「う……」
「結果として、まだ隠していた“彼等”に関することも知ったようですし、王子も回収できましたし。それでマリナ、婚約はもう一度結びますか? ミズハもいなくなりましたし」
「嫌です」
「……そう。とりあえずは、王子だけこちらで回収します。……魔道具を作るのが趣味だったりしてどうしようかと思っていましたが、役に立って、貴方が無事でよかったわ」
「……はい」
「でも油断はしないで。まだ潜んでいるかもしれない。そして、今回一緒に戦う事になった人達や、その人達の能力なども興味があるから、後ほど伝えてくれればうれしいわ」
「分かりました」
そう答えながら、私はそれはあの人達との話で決めようと思う。
私も隠していることがあるが、彼等にも隠しておいて欲しい事があるだろうから。
そう思いながら、ぐっすりと眠った次の日。
朝寝坊をしたリフェを起こして朝食をとる。
それから客人用のお菓子を用意するようお願いを私はして、何から話そうかと考える。
そうしているうちに皆が来た。
お茶とお菓子を用意しながら、ロランやクレナイが本国と連絡を取った旨や、私が連絡した話などをする。
そこでそれまで黙っていたエレンが、
「マリナは公爵令嬢だったのですね」
「う……内密に」
「冒険はほどほどにされた方がよろしいですわ」
くぎを刺されてしまった。
ここ一帯の貴族令嬢の言葉は丁寧だがきつい。
だから私は慌てて話を変えるように、
「そう言えばロランの剣ってどんな物? かなり高度な物のようだけれど」
「一部“聖女”の遺産を使っているが、それを使用して作った“存在の停止”させるものだ。非常に小さな空間の範囲内ではあるが、ああいった赤い空間も含めて、“彼等”の魔法を無効化する。それにより本来の攻撃が可能になる、そういった代物だ」
そう私に説明した。
でもまさか“聖女”の遺産が出てくるとは思わず、でもそうなってくるとあの攻撃は、
「ロラン自身の力って事になるわね。あの剣の力」
「そうなるな」
「増幅も含めて凄く強いんじゃ」
「そうだな。だからこの役目が回って来たな。シルバもそうだが」
どうやら力ある人間だったので、“彼等”との戦闘に駆り出されたらしい。
ただ今一私には分からない事があった。
「私は剣に、祝福のような呪いのような力を感じたのだけれど」
「それはどちらだろうな。能力と剣。この剣には確かに“存在の停止”の副作用が幾らかあるが」
「どんな?」
「背がそこまで伸びなかった」
「……私よりも背が高いし、十分じゃない?」
「それは……ま……うん」
ロランがそう答えると口ごもる。
何故か周りがにやにやしていたがそれは置いておくとして、
「そうなるとロランの能力の方かしら」
「そうかもしれない。存在の名前と、能力を瞬時に見抜く能力があるから。祝福であると同時に呪い。知りすぎる者と呼ばれている。もっともここまで分かるようになったのは最近だが」
「へ~、あれ、という事は私も見えていたの?」
「もちろん。ただ特殊な存在を示す部分は見えなかった。自分より魔力の強い者は見えないようだ。だが……あの時、“彼等”の上位種と戦った時、マリナ、お前は何をやった?」
その問いかけに私は、どう答えようかと思ってそれから、
「実は“聖女”だったからです、と言ったらどうでしょう」
「なるほど、“聖女”の能力か。確か世界の存在に介入できる、限定的ではあるがとか、因果の全てを異断ち切るとか言われていたな。例の件で“変質”していなくてよかった」
そこでクレナイがそんな事を言い出すが、なん話だと思っているとロランが、
「確か、異界に一度触れたとき異なる世界の情報に触れたとかなんとか。“おとめげーむ”だなんだと騒いでいたが、未来予知の一種ではとも言われていたな」
「え、えっと?」
「その辺りの記憶はあるのか?」
「あるけれど……でももうその筋書きから随分それてしまったわ」
「そうなのか? まあいい、結局“彼等”は倒せたからな。その寝取り女はいなくなったが……再度婚約するのか? あの人質だった人間と」
「え? 嫌」
ロランにそう聞かれて私は即座に答えると、ロランはどうしてか安堵しているようだった。
そこでエレンが、
「それで、“聖女”なのは内密にしておきますの? 確かあまり自由のない生活を送らさせられることになるといった話がありますが」
それに答えたのは、意外にもクレナイだった。
「国の中枢部に入り込み、そして、“彼等”の情報が途中で消されている件も含めて黙っていた方がいいのでは?」
「……そうだな。ここにいる全員の秘密にしておこう」
ロランの言葉に皆が頷く。
そして私はそれにより、
「これでまた冒険に行けるわ!」
「……まだまだ素人なんだから怪我をするから止めろ」
「でも私、戦闘したい! というか私、ロランと会った事があるの?」
「……」
黙ってしまったロランに私は更に問いかける。
「いい加減教えてくれてもいいじゃない。いつ私は出会ったの?」
「……昔男装をして家をマリナが飛び出した時にあった」
「……」
それを聞いた時私は思い出した。
どちらかというと気弱でこんな髪と目の色の可愛い少年と、出会って剣の練習をしていて、でもある時女だとばれて、丁度、強い魔物に襲われて初めての実践で、私は身動きをとれなくて、彼が倒したのだ。
ただその時得意げに私に何かを言って、それが私にはとても……ムカッとしたのを覚える。
私がそれまで守ってあげたりしたのに!
小さな蛇にも悲鳴を上げていたくせに!
といった記憶が思い出されたがやはり所々抜けている。とはいうものの、
「何だか頭に来ることを言われた気がするのよね」
「……マリナは相変わらず勝気だったから」
「……ふん。でもまあ、今回はその……私を守ろうとしてくれたのは嬉しかったわ。それだけはお礼を言っておく」
「こういう所は素直だな」
「悪い?」
「可愛いとは思う」
その時は私は何も言えなくなった。
何か言い返したかったが、言い返せない。
でもそれはそれで悔しくて、どうしようかと思っているとそこでエレンが、
「そう言えばお借りした杖はどうしましょうか?」
「また一緒に冒険をして欲しいから持っていて欲しいな」
「……お返しします」
「や~ん」
そこで私はエレンとリフェが必死になって杖を返してくるのを何とか止めて、またロランにはまだしばらくこの町に滞在するから、呼べばいつでも来ると言われる。
でも私はこっそりまた冒険に行こうかと考えて、とりあえずは頷いておくことにした。
それからお菓子を食べたりお茶を飲んだりしつつ、クレナイもまだしばらくこの町に滞在するといった話や、人質王子をどうするかといった話(これは迎えの人が来る予定だ。現在操られた反動で眠っていることが多い)をする。
と、そこでロランが、
「なんでそんなに冒険者になりたいんだ」
「楽しそうだし」
「王子様と婚約がまた復活するかもしれないぞ」
「アイツとは絶対に嫌。だから私は、冒険者になるの」
そう言い返すとロランは目を瞬かせてから、
「王子とよりは戻したくない」
「……そうなのか、なるほど」
それを聞いたロランがやけに嬉しそうで、シルバが良かったですねと言っていたがよく分からない。
それからまた私達は別れて、まだこの町のちょっとした冒険などもするようになる。
その時にまた、“彼等”との戦闘になるなどもあるが、どうにか勝利を繰り返し、戦闘にも慣れた私は冒険を始めることになる。
そんな私が強力な冒険者がいるとうわさになるのはまた別の話。
そして、新しくロランからの婚約話が私に来た話もまた別の話である。
ここまで読んで頂きありがとうございました。乙女ゲーム悪役令嬢婚約破棄で聖女バトル物という、色々混ざったお話になりましたがいかがでしたでしょうか? 楽しんで頂ければ幸いです。また何か更新、投稿をしましたらよろしくお願いいたします。




