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それに答えようと思う

 一歩前に出たミズハ。

 私の背筋にぞわりと怖気が走る。

 それはほとんど“勘”のようなものだ。


 水系の障壁。

 魔法が吸収されやすい性質を持つそれを作り出すと同時に、シルバも氷系統の魔法の障壁を作り上げた様だ。

 と、つんざくような音がして何かが防御の壁に当たった。


 それは魔法のようだった。

 氷系の魔法で、シルバの障壁を貫き、私の所にも迫っていたがぎりぎり止められたようだった。


「勘が鋭いわね。でもこの装置は良好だわ」


 ミズハの声がした。

 そして装置と聞いて、私は嫌な予感がした。


「まさか力を増幅させる効果があるなんて言わないでしょうね?」

「教えてあげないわ、と言いたいところだけれど……教えた方が貴方の“絶望”が深まるかしら? ええ、そのとおりよ。今のは簡単な魔法。“氷の矢”。それが今の威力……凄いでしょう?」


 楽しそうに笑っているのはまだ彼女が油断をしているからだ。

 だったら、先にあの装置の破壊に向かうだけ。

 即座に私は反応した。


「リフェ、エレン、一緒にこの前の行くわ。ロラン達はミズハを、クレナイにはあの王子様の回収お願い!」

「……妥当だな」


 ロランが頷いた。

 そしてクレナイも、


「……人質の王子様か、じゃあ、その辺りで恩を売っておいて交渉材料にするか」


 そう呟く。

 後は、以前と同じように攻撃するだけ。


「リフェ、エレン、重ねて!」

「分かりましたわ」

「はい!」


 慌てたようにリフェがやってきて唱え始める。

 やや私の言葉にずれてしまうのは、仕方がないだろう。

 ミズハは余裕の表情でこちらを見ている。


「『数多の光は、眠りを……』」


 この魔法が何なのか気づいていないのか?

 一度戦闘で使ったが、それをミズハは観測していないのか?

 あの程度では壊れない自信があるのか?


 それだ。

 だったらその油断を利用させてもらうのみ!

 この杖を作ったのは私。


 だから最大限増幅させてもらって、込める魔力も数十倍にする。

 天井が崩れそうだったら結界を使うからいいわ、まずは壊すことが先決!


「“祝福の白き光”」


 声が重なった。

 そして現れた攻撃は以前よりも苛烈で強い輝きを示す。

 ようやくミズハが驚愕の表情で何かをしようとしたが、ロランの相手で何もできない。


 クレナイはああの人形のようになった王子様を回収。

 もう何も問題はない!

 そんなわけで魔法を放つ。


 乾いた音を立てて石が粉々に砕け散る。

 一部魔力を吸収したようなそぶりがあったが、それも容量を超えていたらしく砕け散る。

 ミズハの余裕はこの効果だったのだろうかと私は思った。


 そこでエレンとリフェが膝をつく。


「い、今のはきつかったですわ」

「わ、私もですぅ」

「もしかして二人ともかなり魔力を注入した?」


 そう聞くと頷く。

 上手くいくかどうか分からないから強めにしたらしい。

 それであの装置は壊せたようだった。


 一部壁の方に飛んでいったが、ここは内部の防御も強固であるらしく特に変化はなかった。

 そこでロランが剣に力を込めて、シルバの魔法攻撃の助けを借りてミズハを脳天から真っ二つに切り裂く。

 ぎやぁあああ、そんな声が聞こえるものの、すぐにそれは笑い声になる。


「「やだわぁ、こんな“虫”共が私に手を上げるなんて。……身の程を知らないわ……私に逆らった事を後悔させてあげる」」


 二つに分かれたまま唇が動き、私達に告げる。

 ロラン達は何かを感じ取ったらしく、引く。

 そこで周囲が赤い色に染まる。


 どうやらミズハは“彼等”の中でもさらに上位の方の怪物であったようだ。

 これは普通の人間には荷が重すぎると、私は判断する。と、


「ふふ、マリナ。貴方にも“絶望”を教えてあげるわ。まさか貴方にこれほど力があるとは思わなかったわ。私のお遊びの人形も持って行ってしまったし……本当に邪魔な女ね。殺すわ」


 そう告げたその言葉を聞きながら、先ほどまでの余裕が実の所ないのだと私は気づく。

 でもこちらも余裕はなくて、私は……自分の望みと一緒に居る人たちの命は天秤にかけるまでもなく後者だと初めから決めている。

 ロランも今のままではまずいと思っているのだろう。


 険しい顔をしている。

 そこでロランが私を見た。


「……俺が時間を稼ぐからみんなで逃げろ」

「必要ないわ」

「マリナ! 幾らなんでも、まさかこの“限定結界”を使ってくるとはおまわなかった。そちらの二人も魔力切れ……この状況では、少しでも生き残るのを考えるなら……」


 焦るように私達を心配するようなロランの言葉を聞きながら、彼は、信頼に当たる人物だと私は思った。

 だから私も、それに答えようと思う。


「大丈夫。いいわ、ここからは“私”がやる!」


 そう、私はその時、“聖女”として“決意”したのだった。

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