前哨戦
家で働いていたメイドの皆さんが、変身した。
見知らう人間もいるが、“彼等”の仲間でもあったようだ……と言いたいところだが。
「“炎花の吹雪”」
小さな花びらのような炎が大量に目の前に現れる。
それに指示を出すと、一斉に敵に向かって飛んでいく。
目標はこちらに向かってきているうちの二体かつ、接近して敵を倒すロランとその援護のシルバと、クレナイの邪魔にならないような相手の牽制。
そして後のもう一匹は、練習も兼ねてエレンとリフェにお任せすることに。
私のはなった炎が敵に体を包む。
呻くような声が聞こえるがこれだけでは致命傷にならなかったようだ。
すぐそばでは、ロランの切込身はなれると同時にシルバが魔法攻撃を加える。
それからロランが再び切り込みを入れる。と、
「シルバ、離れろ。氷の攻撃が来る、こいつは氷の攻撃が得意、あっちは炎だ」
「分かりました。ではその二つを相殺……するよりも、行動を弱めた方が良さそうですね」
そう言ってシルバが雷関係の魔法攻撃を仕掛ける。
けれど今の会話で、敵の能力を見分けていなかったか?
そう私は思っているとミズハが笑う。
「やはりロラン王子は面倒だわ。だって、みようと思えば“全部”見えてしまうのですものね。私達の正体や能力、全てが」
「それがどうした」
「相変わらず目障りね。私達は知られるのが好ましくないというのに」
「お前達を野放ししなくて済むような能力があるのは俺にとっては好都合だがな」
「見えすぎるのは“呪い”と同じ。私達が誘った時にこちら側に来ればよかったのに」
「お前達が人間である俺をまともな扱いをするとは思えないが」
そう答えるとミズハはおかしそうに笑う。
「当たり前じゃない。私達は“選ばれた”存在なのですもの。“この世界に!”」
「……俺達は認めない」
「下等な貴方達に認めてもらおうと思わないわ」
そう言ってミズハは、様子を静観することに決めたようだ。
余裕が気持ち悪いが、私としては別の事がとても気になった。
つまり、“聖女”であることがばれ……。
でもこの感じだと気づかれていないような気がする。
後でこっそりそれとなく聞いてみよう、そう私は決めた。
それからクレナイが一人で戦っているのが大変そうだったのでお手伝いの魔法攻撃をしつつそこで、私はロラン達とこちら側を隔てる簡単な結界を張った。
大きな爆音とともに敵の一匹が爆散する。
普通なら一撃で倒せる相手ではないが、怖がったリフェと、隠しているが脅威に感じていたエレンが、通常よりも火力を上げた魔法を放ったらしい。
ただその被害がロラン達に向かわないように、壁を一時的にはる。
戦闘に集中できるようにだ。
そしてさらに私は魔法攻撃を繰り返す。
それによって次々と雑魚……といっても“彼等”に類するものを倒していく私達。
倒した時に、黒い霧となって消えていくのを見てリフェが悲鳴をあげている。
確かに初めてには刺激が強いだろうが、これから慣れて行ってもらわないと困る。
これから“彼等”とも接触が増えるだろうし……これだけの力もあるのだから。
そう思いながらさらに私も魔法攻撃を加える。
ロラン達も丁度一体倒したようだが、出来る限り魔力を温存して効率的に戦う戦法であるらしい。
でなければあの程度の敵一体にここまで時間がかからない。
ただ今攻撃してきた相手は、敵というには弱めであった気がするが。
そうしているうちに全員それらを倒すと、後にはミズハとそして大きな石のようなものが残る。
と、ミズハが手を叩き、嗤う。
「なかなか面白い余興だわ。これなら天井を壊した程度で戦力を減らせないわね。……少しだけ遊んであげるわ。マリナもね」
そう言ってミズハが一歩前に出たのだった。
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