親切すぎるわ
どうやらロランの目的が、“彼等”の集まっている場所であるらしい。
あそこにあった灰色の何かの構造物が目的であるのかもしれない。
とはいえ、推測していても仕方がないので、
「ロラン達の目的って、何?」
「……お前には関係ない。さっさと帰れ」
「私達にも“因子”があるからこんなに強いかもしれないんでしょう? “彼等”と戦うために」
「……だがお前は戦闘慣れしていない、足手まといだ」
「地図作りもできるし、さっきだって“彼等”の魔物を倒すのに一役かったでしょう?」
「素人が調子に乗るな。それに言ったはずだ。今回は“姫”として連れてきてやると」
そう怒ったようにロランが言う。
だがこの執拗に危険から遠ざけようとする感じが、
「本来“彼等”と戦うのであれば戦力はいくらあっても足りないわ。なのにどうして私を遠ざけようとするの?」
「……素人には荷が重いからだ」
「でも、私の実力は見せたわ。火力だって結構あるもの」
「……その油断が命とりなんだ」
「……見ず知らずの他人なのに、随分と親切よね。親切すぎるわ」
「……」
ロランは黙ってそっぽを向く。
それに私は更に、
「ロラン、昔私貴方と何処かで会った事がある?」
「……」
ロランは沈黙した。
その沈黙が答え、つまり私は以前にロランにあっている。
では聞きだしてやろう、そう私が思っているとシルバが、
「では、今回だけはマリナ嬢に手伝ってもらいましょう」
「! シルバ」
「もともと僕達だけでは、手に余るかもしれない事案です。それにここに何人も、この表示が正しければ“彼等”があそこに何人もいるのでしょう?」
「だが人間相手だ」
「人の形をした何かです。倒せば黒い霧になる。“彼等”を知っているマリナ嬢がそれを知らないはずないでしょう?」
シルバにそう返されてロランが悔しそうに黙る。
それにシルバは安堵したように息を吐き、
「ご協力ありがとうございます、マリナ嬢。他の方々はどうしますか?」
「俺はもちろんついていく。“彼等”は野放ししておくと碌なことがない」
そう言い切ったクレナイ。
そして、
「ではこの町の貴族たる私も行くべきですね。このような魔道具をお借りしていますし」
「エ、エレンちゃんも……うう、このまま一人で帰るのは怖いです……ついていきます。その方がまだ安全そうですし」
リフェが観念したようだった。
こうして目的の場所に向かっていき、まずは門番らしき怪物、羽の生えた大きな怪鳥のような魔物を、真っ先に私は魔法を使って倒す。
するとロランに、
「マリナ、魔力は温存しろ!」
「大丈夫! それにその剣はどうなのよロランは」
「極端に効率性を上げているからそこまで魔力は必要ない!」
「でも近くまで切り込むんだから、ロランの方こそ魔力を温存しておいた方がいいわよね~」
そう言い返すとロランが呻く。
それにシルバは楽しそうに笑っていて、クレナイは私の方を見て行動的だなと呆れているようだった。
エレンは不安がっているリフェのサポートをし続けるらしい。
こうして入り口のような場所から新しい場所に突入するが、そこは崩れかかった住居のようなものが連なっている。
迷路のようだと私が感じたのは、単にきれいに整理された区画の壁が年月を経て崩れ落ちて複雑な道になっているからのようだった。
ただ所々にある生活に必要な物の類は、今の物とは違いもっと単調な形をしているように見える。
それでも所々に個性を出そうとしたのか、模様の入ったカップのようなものが転がったりしている。
「ここは一体なんだろう」
「……古い魔法文明の都市の一角であるらしい。でも定められた入り口でないとここへは入れなかったから、“彼等”に出遅れたとはいえ見つけられてよかった」
私の呟きにロランはそう答えたのだった。
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